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ある晴れた日に

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369部分:天使の様なその十四


天使の様なその十四

「だから。たまにはこんなこともあっていいさ」
「そうなの」
「そうさ。じゃあな」
「ええ」
「行くか」
 正道はまた未晴を誘った。今は彼から誘ってきていた。
「あのホテルにな」
「ええ。ホテルスカイチャベス」
 派手な如何にもという看板が見える。外観は西洋の城を模していてそれが本来のビルと微妙に合っていた。少なくともそれは独自の雰囲気になっていた。
「ここね」
「中はどんな感じになってるんだろうな」
「さあ」
 未晴はそれを尋ねられても首を傾げるだけだった。
「どうなってるのかしら。本当に」
「おたくも知らないのか」
「音橋君も」
 ここで顔を見合わせるのだった。
「知らないんだな。それは」
「お互いに」
「だからな。あれなんだよ」
 正道は一旦未晴から顔を離してそのうえで話した。
「俺はこういった場所に来たのははじめてだからな」
「皆ここまでの経験ないから」
 二人はそれぞれ知らなかった理由を話していく。それは少しばかり言い訳になっていた。しかしそれでも言わないではいられなかったのだ。二人共。
「皆は」
「あの能天気な連中もか」
「口では色々言うけれど皆奥手なのよ」
 つまりいつも一緒にいるその面子のことである。
「キスも。まだだし」
「あいつ等、あれだけ威勢のいいこと言っていてか」
 正道も五人のことを思い浮かべた。やはり思い浮かべるその姿は極めて能天気なものだった。こん印象はどうしても拭えなかった。今もだ。
「そうだったのか」
「そうなのよ。やっぱり意外?」
「まあな」
 小さくこくりと頷いて答えた。
「それはな。どうしてもな」
「それでも。実はそうだから」
 しかし未晴はそれを事実と言う。正道は未晴が嘘をつくような人間ではないのをよく知っている。だからそれを信じるのだった。
「皆ね。少年達もそうよ」
「あいつ等もか」
「そうよ。皆もよ」
 明日夢達もだというのだ。
「やっぱり。そういったことの経験はないから」
「北乃はわかるな」
 ここで正道が真っ先に名前をあげたのは彼女だった。
「あいつはそれよりも家の商売の方に熱心だからな」
「凛とかなり仲がいいし。最近」
「あれはレズじゃないんだな」
 正道も少しばかりこのことを疑ってはいたのだ。二人の関係は彼も多少怪しく思っていたのである。だから今それを未晴に尋ねたのである。
「あの二人は」
「違うわよ。ただ仲がいいだけよ」
 未晴の話ではそうである。
「それだけだから」
「そうか。そういう関係じゃないんだな」
「やっぱり怪しく見えるのね」
「ここに二人でいてもおかしくない位にな」
 そこまで怪しいということだった。あの二人は。
「いつもいちゃいちゃしているからな」
「私達だってそうだけれど」
 凛との長い付き合いからの言葉だった。
「それとは違うの」
「かなり違うけれどな。それでも何もないのか」
「凛ノーマルだから」
 凛について言う言葉はかなり真面目なものだった。
「これは保障するわ」
「そうか。本当に何もないのか」
「ないわよ。それじゃあね」
「ああ。入るか」
「こんな場所でずっと立っているのも」
 また俯いて顔を真っ赤にさせてしまう未晴だった。
 
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