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ある晴れた日に

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351部分:白銀の月その十六


白銀の月その十六

「とにかく。プリクラだけれど」
「写真さっさとバッグに入れてくれよ」
「マジでお客さん達降りてきたぞ」
 見ればもうだった。彼等が話をしているうちにもう降りてきていた。彼等はすぐに隠れなくてはいけない状況になっていたのである。
「早く隠れろ、早く」
「急げ急げ」
「やばい、間に合わないかも」
 凛の顔が青くなってきた。
「もう二人見えたけれど」
「だから言わんこっちゃねえ」
「プリクラ撮ってるからだよ」 
 その凛に突っ込む野茂と佐々もかなり焦ってきていた。
「とにかくよ。もう間に合わねえぞ」
「どうするんだよ」
「こうなったら奥の手よ」
 しかしここで千佳が言った。
「奥の手出すしかないわ」
「奥の手って?」
「変装よ」
 彼女は加山に答えた。
「変装しましょう、すぐに」
「おい、それでばれないか?」
「わからないのかよ、それで」
 坂上と坪本もまた慌てながら彼女に問う。
「確かにもう隠れることなんてできねえけれどよ」
「わからないか?それで」
「もうこうなったら仕方ないわ」
 とりあえず尾行がばれているかどうかは今は考えてはいなかった。
「こうなったらね」
「仕方ないのかよ」
「もうよ」
「そうよ。ほら、これで」
 ここで彼女は鞄から何かを取り出したのだった。
「これ付けてね」
 それはサングラスだった。しかもあのマッカーサーが付けていたレイバンである。そのサングラスを取り出してきたのである。
「ほら、これで終わりよ」
「変装ってそれかよ」
「グラサンかけてかよ」
「そうよ。これでいいわ」
 かなり強引にそういうことにするのだった。
「もうばれないわよ」
「ばれるんじゃねえのか?やっぱりよ」
「ねえ」
 しかし皆いぶかしむ顔で言うのだった。
「っていうか千佳ぽんよ」
 春華が彼女の仇名と共に思いきり怪しいものを見る目で彼女に言ってきた。
「おめえレイバンのグラサンは似合ってねえぞ」
「そんなに?」
「ああ、全然な」 
 それを彼女に言うのだった。
「っていうか何か間違いみてえなんだけれどよ」
「そんなに似合ってないかな」
「似合ってないよな」
「なあ」
 これに関しては男組も同じ意見だった。
「ここまで似合ってないのねえよな」
「悪いこと言わないのはレイバンは止めておけよ」
「絶対にな」
「そう。だったら」
「ああ、今じゃなくていいからよ」
 春華はすぐにそれは止めた。
「今じゃなくてもよ」
「いいの?だったら」
「今更変えても間に合わないしな」
 だからだというのである。
「まあうちのはこれだけれどよ」
「おい、そのグラサンも何なんだよ」
「有り得ないだろうがよ」
 男組は春華のサングラスにもクレームをつけた。見ればそのサングラスは真っ赤である。しかもやたらと鋭角でとんがったデザインである。
「悪趣味にも程があるだろ?」
「殆ど仮想だぞ、それってよ」
「うっせえな、何処が悪いんだよ」
「全部がだよ」
「いいとこなんて一つもねえ」
 男組はここでもきつかった。
 
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