ある晴れた日に
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350部分:白銀の月その十五
白銀の月その十五
「おい、着いたぜ」
「えっ、もう!?」
「早くない!?」
男組は飲み食いに励んでいて女組はプリクラを撮りまくっていた。丁度咲と明日夢が二人で撮っているところだった。二人共野球帽を忘れてはいない。
「今さっき撮りはじめたばかりなのに」
「急がないとまずい?」
「っていうか御前等何枚プリクラ撮ってんだよ」
「何十枚じゃねえのか?」
数は後者が正解だった。実は女組はそれぞれ何個もあるプリクラでそれぞれ何枚も何枚も撮っている。総数ではそこまで至ってしまっていた。
その撮ったプリクラをプリクラ帳に貼っている。その中で急に慌てだしたのだ。
「幾ら何でも早いわよ」
「もうだなんて」
「御前等の都合に合わせるわけないだろ?」
「ジェットコースターには時間があるんだからな」
こう話すのだった。
「っていうかどれだけプリクラ好きなんだよ」
「何十枚もよ」
「女の子はプリクラがないと生きていけないのよ」
「そうそう」
しかし女組も女組で言う。言いながら明日夢と咲がわざわざポーズまで撮ってプリクラを撮っていた。二人共身長が近いのでかなり近いように見える。
「はい、後は貼って」
「ってそんな暇ないみたいね」
「そんなの後にしろ、後に」
「何時でもできんだろうがよ」
既に彼等は食べるものを食べてなおしていた。食器片付けはセルフサービスだった。
「本当によ、何やってんだよ」
「そんなのスタープラチナで何時でも撮れるだろうがよ」
「わかってないわね、ここ限定なのよ」
「そうそう」
文句を垂れ続ける男組に対して奈々瀬と茜が言い返す。
「それでわざわざ撮ってるのよ」
「わかってないわね、男って」
「そんなのわかりたくねえしよ」
「ポーズまでちゃんとつけやがって」
見れば皆そうやって撮っている。しかもそれぞれプリクラ帳にはカラーサインペンで赤や青や黄色で色々と字まで書いているのだった。
「何でこんなにプリクラ好きなんだよ」
「顔触れは何か色々だけれどよ」
見れば組み合わせは千差万別であった。明日夢と咲だけでなく本当に誰もがそれぞれのクラスメイトと一緒に移っていた。五人や六人の場合もある。
「点差まで書いてるじゃねえかよ」
「ええと、ベイスターズが零点でホークスが七点?」
それぞれ青とオレンジで書かれていた。
「交流戦でかよ」
「ベイスターズが惨敗した時じゃねえか」
明日夢と咲の二人のプリクラだった。咲がにこにこと満面の笑顔でピースサインまでしているのに対して明日夢は寝起きのような顔をしていた。
「また随分派手にやられてるな」
「ベイスターズらしいけれどな」
「らしいは余計よ」
これについては抗議する明日夢だった。しかもそのプリクラは二人のそれぞれのプリクラ帳に貼られている。表情は全く同じである。
「らしいはね」
「そりゃ俺達だって使わないわけじゃねえけれどよ」
「使い過ぎだろ」
「なあ」
「使い過ぎでいいのよ」
しかし明日夢はそれはいいというのだ。
「スタープラチナの売り上げにはいいから」
「商売人だな、おい」
「だからいいのかよ」
「そういうことよ。おかげでお店も繁盛してるわ」
何処までも商売人の明日夢だった。
「クレープ屋も本気ではじめるつもりだしね」
「まあおめえの家が儲けるのはいいけれどよ」
「早い安い美味いは守ってくれよ」
男組の注文はそこだけだった。
「しっかりとな」
「あとカラオケの機種もこのまま充実させてくれよ」
「それは任せて。抜かりはないわ」
明日夢もそのことにはにこりと笑って返す。
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