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ある晴れた日に

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336部分:白銀の月その一


白銀の月その一

                    白銀の月
 正道と未晴は真っ暗に限りなく近いその道を進んでいた。そこはコンクリートの廊下でありその脇には背のないソファーが見え壁には扉も見える。
 二人は横に並んでその中を進んでいる。未晴がここで言うのだった。
「ねえ」
「何だ?」
「ここも絶対に出て来るわよね」
 こう正道に言うのである。
「やっぱり」
「そうだろうな」
 そして正道も彼女のその言葉に頷く。目は周囲を見て警戒するものになっている。
「扉とかからな」
「今までがそうだったしね」
 未晴はここまで進んだその道のことを思い出していた。
「問題が何処から何が出て来るかだけれど」
「またゾンビじゃないのか?」
 正道は言った。
「扉が開いて急に出て来るあれな」
「またそれかしら」
「それか板に打ちつけられた死体か」
 そういうものも出て来るのである。この病院は。
「何が出て来るかな」
「どれもかなり怖いしね」
「その怖さがここの売りだしな」
「それはそうだけれどね」
 未晴はまた話した。
「それにしてもメイクが凄いわね」
「さっき出て来た人覚えてるよな」
「ええ」
 そのことを思い出して青い顔になる未晴だった。
「正直驚いたわよ」
「おたく声あげたよな」
「音橋君だって引いてたじゃない」
 未晴は彼もそうだと言い返した。
「もうぎょっとした顔になって」
「あれはなるぞ、やっぱりな」
 しかし彼はそのことを否定するどころか言い訳をするのだった。つまりそのことを認めているのである。認めているからこそ言い訳をするのだから。
「誰でもな」
「それはその通りね」
 そして未晴もそれは否定できなかった。
「右目が出ていて脳味噌まで出ていて」
「よくあんなメイクができるものだ」
「一瞬本物かと思ったわよ」
 そこまでよく出来ていたのである。このお化け屋敷のメイクは徹底している。
「内臓だって。お腹のところから」
「ゴボリだったな」
「産婦人科のところだって」
 そこのところにも話が及んだ。
「お腹から悪魔みたいな赤ちゃんが出てきて」
「悪趣味とかそういうレベルじゃなかったな、あれは」
「全くね。あれで動いたらもっと怖かったわ」
 未晴はこうも思うのだった。
「それもかなりね」
「流石にそれは難しかったみたいだな」
「けれどメス持って口が裂けた看護士さんとか」
 そういうものも出て来たのである。
「あの人美人だったから余計に迫力があったわね」
「あれも凄かったな」
 その口が裂けた看護士は正道も見たのである。
「こっちに襲い掛かってきたしな」
「子供が見れば逃げる」
 断言であった。
「絶対にな」
「だからここって子供入ったらいけないのね」
 それにはそれだけの理由があるということであった。勿論何の理由もなくて禁止事項を決めたりする輩も世の中にはいたりするのであるが。
 
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