ある晴れた日に
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335部分:その日からその三十一
その日からその三十一
「それ頼まない?」
「ついでにお弁当も食べて」
「それでお弁当も食べるの」
凛刃二人の言葉に内心かなり引いていた。
「あの二つも食べてそれなの」
「っていつものことじゃない」
「ねえ」
しかし二人は凛を挟んで顔を見合わせてそのうえで頷き合って言うのだった。
「そんなの」
「学校でもお昼はそれだけ食べてるじゃない」
「そういえばそうね」
凛にしろ同じである。皆育ち盛りなのでかなり食べているのだ。これは女組だけでなく男組もだ。とにかく食べて食べて食べまくっているのである。
「じゃあ別にいいか」
「いいのいいの」
「気にしない気にしない」
二人は笑ってこう述べた。
「安心して食べればいいわよ」
「明るく食べてね」
「そうよね。じゃあ特別ラーメンとスペシャルバーガー」
凛も遂に乗ることにした。
「私も食べるわ」
「よし、じゃあこれで決まりね」
「三人でね」
こうして三人は早速そのラーメンとハンバーガーの注文に向かうのだった。見ればその店の屋台は先程のクレープ屋の屋台のすぐ近くにあった。
「特別ラーメン下さい」
「スペシャルバーガー下さい」
その隣同士になっている店に来て話す三人だった。注文はすぐに届きそれを受け取る。見ればラーメンの方は普通の丼の倍の大きさがある。そこにもやしやら葱やらがうず高く乗せられチャーシューが五枚に糊にゆで卵が一個入っている。スペシャルバーガーはハンバーガー二枚だけでなくチキンカツまで挟まれた三段重ねである。どちらも壮絶なまでのボリュームである。見ただけで満腹になりそうだ。
三人でテーブルに座りそのうえで食べはじめる。同時に弁当も出す。
「じゃあ食べましょう」
「ええ、それじゃあね」
「頂きます」
飲み物はジュースだった。それを食べながらまた話をする三人だった。
「それで連絡は?」
「あっ、茜から来たわ」
明日夢が自分の携帯を見ながら奈々瀬に話す。
「ええと、二人は今お化け屋敷に入って」
「ええ」
「それで?」
「皆もお昼食べてるんだって」
彼等も彼等で食べているのであった。
「お弁当にサンドイッチにそれにおうどんね」
「炭水化物多いわね」
凛はそれを聞いて首を少し傾げさせて述べた。
「何かそれって」
「ファイナルサンドに巨大きし麺らしいわ」
そうしたメニューもこの遊園地にはあるのだ。
「その二つを皆頼んだらしいわ」
「ああ、あの食パン六枚の中にカツやらレタスやらトマトやらソーセージやら何でも入れてるのね」
奈々瀬がそれを聞いて言った。
「あれも美味しいのよね」
「それにあの巨大きし麺もね」
凛はきし麺の話をした。
「二人分の麺に天麩羅が入っててね。いいわよね」
「向こうも向こうで美味しいの食べてるのね」
明日夢はメールを見ながらまた言った。
「私きし麺結構好きなのよね」
「ああ、そういえばスタープラチナでもメニューあるわよね」
「ええ、美味しいからね」
こう奈々瀬にも答える。答えながらラーメンを勢いよく啜る。スープは豚骨であり薬味に入れているゴマと紅生姜が実によく合っていた。
「だから入れてたのよ」
「入れたのはいいけれどよ」
「美味しいんだけれど」
しかしここで凛と奈々瀬が困った顔で明日夢に言ってきた。
「ウイスキーの時にそれ出すの止めてね」
「ベイスターズ負けてる時に」
「びっくりメニューでなのね」
「そうよ」
「その時よ」
二人はそのものズバリといった感じで顔を顰めさせて明日夢に告げた。
「あの組み合わせも全然合わないから」
「っていうか物凄い胸焼けしたんだけれど、後で」
「だからベイスターズの勝ち負けに関係ないから」
明日夢はこう反論する。一応はそういうことになっているのである。
「気のせいよ、合わないメニューが出るなんて」
「絶対気のせいじゃないわよね」
「ねえ」
今度は凛と奈々瀬が顔を見合わせて言い合うのだった。怪訝な顔でそれぞれハンバーガーとラーメンを貪りながら。
「絶対に横浜が負けてる時には物凄い組み合わせになるから」
「最悪はカレーに赤ワインだったけれど」
「あの組み合わせそんなに酷かったの」
「カレーにお酒は合わないわよ」
「ビールにパフェも最悪だったけれど」
どの組み合わせも皆にとってはまさに爆弾だったのである。
「とにかくどうなのよ、一体」
「ベイスターズの勝ち負けで組み合わせが変わるって」
「その割りに皆いつも頼むわよね」
そもそも皆頼むのである。これもかなり矛盾している。
「何でよ、それは」
「まあそれはね」
「やっぱりスリルがあるから」
彼女達も何だかんだで楽しんでいる。ついつい苦笑いと共に述べる。
「だからなんだけれど」
「それに個々だと美味しいし安いし」
「だったらいいじゃない」
半分居直る明日夢だった。
「それで」
「まあそうだけれどね」
「実際のところはね」
三人はそんな話をしながらどんどん食べていく。凄まじい勢いで弁当もラーメンもハンバーガーも消えていく。壮絶な食欲である。
そして瞬く間に食べ終わり。そのうえでまた言い合うのだった。
「で、後はよ」
「皆に合流は・・・・・・まだ嫌よ」
奈々瀬がここでまた泣きそうな顔を見せる。
「お化け屋敷の前は」
「わかってるわよ」
明日夢が微笑んで彼女に答える。
「それはね。わかってるから」
「悪いわね、本当に」
「だからそれはいいのよ」
話がここでまた戻っていた。
「それはね。じゃあこれ食べて暫く時間潰す?」
「そうよね。とりあえずラーメンとハンバーガーは食べたけれど」
凛も話に加わる。
「お弁当もあるしね」
「お弁当ね。これも全部食べてね」
「だったら結構いい時間になるわよ」
にこりと笑って二人に話すのだった。
「その間にね」
「そうね。これでお弁当も食べたらね」
「それで後は携帯で連絡して合流場所決めて」
明日夢と奈々瀬も彼女の言葉に頷く。
「後はこのままね」
「いけるわね」
「さて、それじゃあよ」
凛は二人の言葉を受けて微笑みながら述べてきた。
「このまま暫くはここでね」
「とりあえずお弁当も食べて」
「時間を過ごしましょう」
こうして三人は今は平和だった。この平和が永遠に続くと思っていた。そしてそれは確信だったが決してそうはならないことは知る由もなかった。
その日から 完
2009・5・28
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