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ある晴れた日に

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327部分:その日からその二十三


その日からその二十三

「何かどれが私達かわからなくなりそうね」
「そうだな」
 二人もそれを見て言うのだった。
「けれどここにいるのが間違いなく俺達で」
「そうなのよね。今ここにいるのがね」
 つまり我思うが故に我ありということだった。
「最初はお化け屋敷の方を先に行くつもりだった」
「お化け屋敷に?」
「あそこのお化け屋敷はかなり怖い」
 実際にこのテーマパークのお化け屋敷はかなり評判になっている。あまりにも怖くそれで大人気にもなっているのである。しかもかなり大きいのだ。
「そこに行こうと思ったんだけれどな」
「じゃあ後で行く?」
「そうだよな。後はジェットコースターにもな」
「ここのジェットコースターも凄いのよね」
 この遊園地はそれでも有名なのである。名物の多い遊園地だ。
「じゃあそこにも行ってね」
「そうだよな。とりあえずはこのミラーハウスな」
「あっ、見て」
 未晴は目の前の鏡の壁を指差した。
「私達が本当に何人も」
「参ったな。壁が何処かもわからなくなってきた」
 鏡に惑わされてだ。何処にあるのかさえも全くわからなくなっている。
「どうしたものかな」
「あっ、それならやり方があるわ」
 未晴は明るい顔で正道に言ってきた。
「まずはあまり急がないで」
「急がないか」
「そうよ。それで二人でしっかりと集まって」
 言いながら彼のその左手を自分の両手で抱き締めてきてそのうえで寄り添ってきた。それはまさに両想いのカップルのそれであった。
「それで壁に手を添えてね」
「こうやってか」
「そうよ」
 正道が右手でその壁になっている鏡に触れると未晴は微笑んで彼に応えてきた。
「そうやってね。少しずつ進んでいったらいいから」
「こうやって少しずつか」
「迷路ってこうやって進めばいいから」 
 また言う未晴だった。
「慎重にね」
「迷路自体もそうか」
「迷路はただ歩いたら駄目なのよ」
 未晴が今度言う言葉はこれだった。
「けれどこうやって少しずつ進んだらね」
「やがては外に出られるか」
「ええ。こうやって行きましょう」
 正道に寄り添いながら彼に話してきた。
「ゆっくりとね」
「何かそういうの聞いていたらな」
 正道は声を微笑ませてそのうえで未晴に告げてきた。彼女の言う通り右手を壁に添えさせたまま。そのうえで進みながらであった。
「おたくらしいな」
「私らしいの?」
「ああ、そうだ」
 こう未晴に告げるのだった。
「おたくらしいな。ゆっくりと、でも慎重にってな」
「そうかもね。言われてみたら」
 未晴も言われてみて実際にそのことを感じ取った。確かにゆっくりと、だが確実にというやり方は彼女の生き方や努力の仕方そのものであった。
「そうよね。私のやり方よね」
「こういう迷路を進むのには向いてるよな」
「実は迷路って歩くの好きなのよ」
 未晴は今度は自分の趣味についても話した。
「子供の頃からね」
「迷路好きなのか」
「あと迷路の本ってあるじゃない」
「ああ」
 そうした本は昔からある。よく子供の絵本にもなっている。クイズにしろクロスワードにしろそうした本は頭の体操に実にいいのである。
 
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