ある晴れた日に
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312部分:その日からその八
その日からその八
「未春来たんだって」
「おっ、遂にかよ」
「待たせてもらったぜ、全く」
「そうよね。ほら、あれよ」
茜はここで窓の方を指差した。見ればそのフレアースカートの未晴が見えていた。彼女は一人で微笑みながら正道が今いる噴水のところに向かっていた。
「何かもう音橋の居場所わかってるのか?」
「それっぽいわね」
「みたいだな」
皆その彼女の動きを見て言う。
「まああのギターケースがあるからなあ」
「っていうかあれマジで暑いだろうにな」
「実際汗かいてるじゃねえかよ、あいつ」
見てみれば正道は右肩にケースを持っており左手に持っているタオルで時折顔や首を拭いていた。汗をかいているのは明らかである。
「それでまだ持つかよ」
「ギターは身体の一部だからかよ」
「探す場合には目立っていいけれどね」
明日夢はそれはいいとしたのだった。
「さて、まずは御対面となったわけだけれど」
「それで五人は?」
桐生は咲達について茜に尋ねてきた。
「今何処にいるのかな?」
「あれだろ」
坪本がうんざりとしたような顔でチキンナゲットをつまみながら窓の外、未晴のすぐ後ろの方を指差して言うのだった。見ればそこに確かに五人がいた。
「何ていうかな」
「だよな」
坂上と佐々がその五人を見て彼等もうんざりとした顔になった。
「あいつ等もすぐわかったな」
「っていうか相変わらずセンス悪いな、あいつ等」
「特に柳本。何だありゃ」
佐々は特に彼女を見て呆れていた。
「ピンクハウスのあのフリルやらバリバリはいいとしてもよ。帽子よ」
「南海ホークスだな、あれってな」
野本がその緑の帽子を見て言う。
「ピンクハウスに緑はねえだろ」
「だよなあ」
「やっぱりな」
かく言う野本は今日もまっ黄色である。他の面々も何処で売っているのかと言いたくなるような服である。やはりこのクラスの面々にファッションセンスは無縁の話であった。
「あいつも大概だよな」
「他の連中もな」
「だよな」
そして咲以外の面子もであった。やはりファッションセンスはかなり悪かった。
「あんな格好で尾行してたのかよ」
「何考えてんだ」
「っていうかあればれるだろ」
皆五人の服を見て口々に言う。
「あれだけ目立つ格好だったらな」
「奈々瀬も何あれ」
茜は彼女の服を見て顔を顰めさせていた。
「サングラスに黒いタンクトップに青の裂け目だらけのジーンズにブーツねえ」
「あいつあんなセンスしてたのかよ」
「っていうか似合ってねえな、思いきりな」
皆彼女のその格好を見て茜と同じ表情になっていた。
「伊藤も何だありゃ」
「あれドカタの人のズボンか?」
彼女はそんなぶかぶかのズボンなのだった。
「ああ、あれバギーよ」
恵美がここで皆にそのズボンを説明した。
「昔の不良の人がはいてたんだけれど」
「ボンタンじゃなくて?」
明日夢もボンタンのことは知っていた。これは今でもあるからだ。
「そんなのあったの」
「ドカンっていうのよ」
恵美はその服の仇名も話した。
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