| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ある晴れた日に

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

307部分:その日からその三


その日からその三

「音楽馬鹿だし。何か気障ぶってるけれど抜けてるし」
「そういや結構抜けてるよな」
「だよな」
 皆奈々瀬の言葉に頷くのだった。
「あれでな。結構な」
「かなり抜けてるよな」
「そうよね」
「そんなのと未晴がね。意外よね」
 そしてまた皆で言うのだった。
「けれど未晴が幸せみたいだし」
「いいのかしら」
 咲はそれでも首を捻らずにはいられなかった。
「未晴がよかったら」
「そうじゃないの?二人の問題だし」
 恵美はそれでいいと思っているようである。
「そういえばその未晴だけれど」
「どうしたの?」
「今日の夕方に店に来たわよ」
 恵美の家の喫茶店であるブルーライオンである。その店に来たというのだ。
「それでチケット忘れかけてたわね」
「チケット!?」
 皆それを聞いてすぐに眉を顰めさせた。
「チケットって何?」
「何のチケット?」
「遊園地だったわね」
 恵美はまた言った。
「明日の。確かテーマパーク八条の」
「デートだぜ、それ」
 春華はここまで聞いてすぐに見抜いたのだった。
「間違いねえ、明日あの二人デートだよ」
「って何でそこまでわかるの?」
「わかるよ。だから未晴と音無の奴付き合ってるだろ?」
 明日夢の問いに対して答える。正道を仇名で呼ぶのも忘れてはいない。
「だったらそれだよ。間違いねえよ」
「テーマパークでデートね」
「これ定番じゃねえかよ」
 そしてまた言う春華だった。
「確実にデートだよ、あの二人」
「これは見過ごせないわね」
 静華の言葉は本気で殺気がこもっていた。少しばかりであるが。
「未晴に何かあったら」
「じゃあどうするんだよ」
「決まってるじゃない。監視に行くわ」
 静華が皆に返した返答はこれであった。
「音橋のね。何かあったら飛び出て正拳よ」
 言いながら右手を軽く前に出してみせる。
「それどころじゃない場合にはね」
「その場合は?」
「恐怖の急所攻撃よ」
 空手で最も恐れられている攻撃である。
「それ、お見舞いしてやるから」
「本気なんだな」
「勿論」
 不敵に笑ってさえいる。
「その場合にはね」
「相変わらず怖いなこいつ」
「それだけはやばいだろ」
 男組は本能からそれを心から怯えて聞いていた。
「蹴られたらな。それこそ終わりだからな」
「ああ、蹴るだけじゃないから」
 しかも静華の技はそれだけではないのだった。
「握ってね」
「握るのかよ」
「それで捻って握り潰すのよ」
 実際にその右手で握って捻りながら握り潰す動作をしてみせる。少し笑いながら。
「こういう感じで」
「うわあ・・・・・・」
「そりゃねえだろ」
 皆話を聞いて顔を真っ青にしていた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧