ある晴れた日に
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306部分:その日からその二
その日からその二
「俺で大体三リットルだけれどな」
「四リットルか?」
「そんなところよね」
皆少し考えてから答えた。
「まあそんなところで」
「一回飲みだしたら」
「止まらないからなあ」
「そうそう」
「まあ俺もそうだしな」
そして佐々自身もそうなのだった。
「ビールってな。どんどん飲めるからな」
「そうそう」
「じゃあ今もどんどんやるか」
「ビール祭りね」
「とりあえず飲み放題だからな」
佐々はこれを言い加えることも忘れなかった。
「好きなだけやってくれよ。遠慮せずにな」
「前から思ってたけれどスタープラチナも猛虎堂も飲み放題だよね」
ここでふと加山が言った。彼もいるのだ。
「こっちとしては有り難いけれどそれで採算取れてるの?」
「ええ、充分にね」
「取れてるぜ」
しかし二人はすぐにこう答えるのだった。
「詳しいことは企業秘密だけれどお酒を安く仕入れるルート持ってるから」
「それでやっていけてるんだよ」
「ああ、そうなんだ」
加山はそれを聞いてまずは納得した。
「だからそれでいけるんだ。両方共」
「そうよ。お酒はもう幾らでも手に入るから」
「この黒ビールだってそのルートで手に入れたんだよ」
皆は二人の言葉を聞いたうえで言う。
「まあどういったからくりかはわからないけれどな」
「安く飲めるのなら有り難い」
「そうそう」
皆にしてみればそうであった。彼等にとってみると酒が好きなだけ飲めることは非常に有り難いことである。飲む人間にとっては天国である。
「全くよ。未晴も来ればよかったのによ」
「音橋もな」
ここで春華と坪本が言った。
「ったくあいつ等付き合うのはいいけれどよ」
「こういうのに来なくてどうするんだよ」
「そうよね」
静華も難しい顔になっていた。
「実際のところね。折角皆で楽しくやってるんだし」
「デートでもしてんのか?」
野茂はこう予想を立てた。
「ひょっとして今頃な。明るくな」
「夜のデートかよ」
坂上はここでちらりと店の壁にかけてあった時計を見た。見ればその時計は六時半だ。実はこの宴会は夕食も兼ねているのである。
「何かどんどんムードがよくなってきやがって」
「妬ける?ひょっとして」
凛はそんな坂上に対して問うた。
「私は結構妬けてるけれど」
「妬けてるの」
「ちょっとね」
千佳に問われて少し苦笑いになった。
「あんなにお熱いとね。ちょっとね」
「けれど意外よね」
奈々瀬は意外という言葉を出した。
「音橋と未晴のカップルってね。意外な組み合わせよね」
「そうなのよね。私も最初聞いてびっくりしたわよ」
茜は仲のいい奈々瀬に続いていた。
「未晴がねえ。あんなのと一緒なんて」
「あいつはあんなのかよ」
「あんなのじゃない」
野本にもこう返す奈々瀬だった。
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