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ある晴れた日に

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301部分:空と海その三十四


空と海その三十四

「少年だって茜ちゃんだって」
「あいつ等もか」
「メグちゃんもね。勿論春華も」
「何か俺は連中の一面しか見てないのか?」
「悪いけれどそうだと思うわ」
 そしてこうも告げるのだった。
「女の子達って言ったら性別差別になるかもだけれど」
 そうは言ってもだった。
「それでも。皆あれで繊細なのよ」
「そんなこと言ったら男もそうなるな」
 正道は今度は男連中に関して話をやるのだった。
「男もな。あの連中も」
「きっとそうだと思うわ」
 そして未晴は彼等についても話した。
「皆ね。いい加減でガサツなように見えて」
「繊細なのか」
「野本君や竹山君がそうじゃない」
「あいつ等か」
 正道は今度は男連中の顔を思い浮かべた。やはり適当な顔で能天気な笑みを浮かべている。この辺り女組に対する印象と変わりはしない。
「あの連中もか」
「誰だって同じなのよ」
 未晴はまた話すのだった。
「それはね。同じよ」
「男も女もか」
「音橋君だってそうじゃない」
 そして正道自身に対してもそうだというのだった。
「実はね」
「俺が繊細か」
 未晴の言葉を聞いてもあまりにこりとはしていなかった。
「そう見えるか」
「すぐにはそうは見えないけれどね」
 すぐには、と言うのだった。
「けれど実はってころがあるから。人って」
「俺は少なくとも繊細とかナイーブって言われたことはないけれどな」
 彼の一生においてそれはないことであった。これは音楽を作るようになってからも同じでよくそれで音楽を作れるものだとさえ言われたことがある。それ程そうは思われていないのだ。
「それも全然な」
「けれど。あの中学校の時のことだけれど」
「ああ、その時か」
「そうよ。あの時のこと私に話してくれたじゃない」
 あの時のことを話すのだった。
「私にね」
「誰にだってあることじゃないのか?」
 ここでは心の動きを隠して話した。
「あんなことはな」
「あっても。それでも傷ついたってことは繊細だからよ」
「だからだっていうのか」
「そうよ。音橋君は繊細な人よ」
 未晴はまた彼に話すのだった。
「とてもね」
「そんなものかな」
「そうよ。繊細よ」
 彼はまた話した。
「音橋君もね。繊細よ」
「まあ言われて悪い気はしないな」
 ここでは照れ隠しに言葉を出した。
「そう言われるとな」
「そうなの」
「ああ。実際あの時のことは忘れたことはないさ」
 このことも隠さず話すのだった。
「ずっとな。覚えてる。それで苦しんできた」
「辛かったのね」
「誰にもわからないって思ってたさ。本当にな」
 苦い言葉だったがそれでも出さずにはいられなかった。
「あの時はな」
「じゃあ今は?」
「違うな」
 少し上を見ての言葉だった。
「やっぱりな」
「違うのね」
「おたくがわかってくれるよな」
「ええ」
 そして未晴が頷いてくれた。
 
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