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ある晴れた日に

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299部分:空と海その三十二


空と海その三十二

「フルーツもいいものね」
「ああ」
「それでこれ食ったらどうする?」
「どうって?」
 皆今度は野本の言葉に顔を向けた。
「いやよ、グレープと西瓜食ってカクテル飲んだらもういい時間だろ」
「ああ、そうね」
「確かにな」
 皆ここで時間のことを思い出したのだった。今まで焼きそばを食べたりビーチバレーをしたり岩場まで行って戻ったりだったので結構時間が経っていた。
「じゃあこれ食べ終わったら終わり?」
「あとは帰るか」
「そうだよな」
 また皆で言い合うのだった。
「じゃあグレープと西瓜食べ終わったらそういうことで」
「帰ろうか」
「そうね」
 そして結論が出ようとしていた。
「結構色々やったしね」
「それで終わって後は帰るか」
「あとは自由時間」
「それでいっか。何か人もちょっとずつ減ってきてるな」
 野本はここで周りを見た。見ると確かに人が少しずつ帰りだしている。そんな時間だということだった。
「じゃあ俺達もそういうことでな」
「了解」
 こうして彼等はグレープフルーツや西瓜を食べ終えカクテルも全部飲むとそれで後片付けに入ってそのうえで帰った。正道は帰る時未晴と一緒だった。他の面々はもう皆何処かに行っていた。
「ばれちゃったわね」
 未晴の方から言ってきた。
「皆に」
「ああ」
 正道の彼女の言葉に静かに頷いた。帰り道でも当然のようにその背にギターを背負っている。これは海でも何処でも同じであった。彼の場合は。
「遂にな」
「困ってる?」
 未晴は正道の横顔を見ながら彼に問うた。
「やっぱり。皆にわかって」
「そっちはどうなんだ?」 
 正道は答えるより前に彼女に問い返した。正面を見ながら。二人の後ろには夕陽が彼等の前に長い影を作っていた。他ならぬ彼等の影をだ。
「そっちは。どうなんだ?」
「何時かはわかるものだって思っていたから」
 未晴はこう言うのだった。
「だから別に」
「気にしていないのか」
「特に隠すつもりもなかったしね」
 そしてこんなことも言う。
「だからわかっても。別に」
「俺もだ」 
 正道はここで答えた。
「俺も同じだ。別にな」
「わかってもいいのね」
「わかって困ることはしていない」
 彼にしてはやましいことはないのだった。
「別にな。だからいい」
「いいのね、私と同じで」
「いいさ。もっともあの五人の言葉はあれだったがな」
「それだけ私を心配してくれてるのよ」
 少しばかり苦笑いになっている言葉だった。
「皆ね」
「あの五人はどうなんだって思うがな」
 実際あの時は剣幕も感じたので彼は言った。
「おたくに関することなら何でも本気になるからな、本当にな」
「私だって同じよ」
 そして未晴は自分もだと述べた。
「私だって。いつも言ってるけれど」
「あの五人とは幼稚園の頃から一緒だったからなんだな」
「友達よ」
 やはりそれに尽きた。
 
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