ある晴れた日に
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297部分:空と海その三十
空と海その三十
「ギター馬鹿一代だからね」
「そうじゃねえとな」
「駄目だからね」
「それで砂はどうしてるんだよ」
佐々はそのことを彼に尋ねた。
「やっぱりあれか?すぐに払ったり乾いたタオルで拭いて」
「中もちゃんとチェックしてな」
それも忘れていないのだった。
「ケースの中にも入らないようにしてな。少しでも見つけたら取ってな」
「本当に徹底してるな」
坪本もまた話を聞いて感心したように頷くのだった。
「そこまでやるのか」
「そこまでしないと駄目なんだよ」
こう来た。
「ギターはな」
「持って回る為にはかよ」
「はっきり言えば置いておいたら楽さ」
正道もこれはよくわかっていた。
「けれどな。何度も言うけれどギターはな」
「身体の一部なのね」
「ああ」
未晴の言葉に頷いてみせる。
「何度も言うさ。身体の一部だからな」
「だから持って歩いているのね」
「いつも」
「そういうことだ。だから手入れやガードも怠らないんだよ」
それを徹底させていた。
「絶対にな」
「何か金田正一さんみたいな話だな」
「だよな」
ここで男組はふと彼の話を出した。あの四百勝を達成した不滅の大投手である。彼は己の身体、とりわけ左腕の健康管理を徹底させていたことで有名である。
「それってな」
「だよな」
「あそこまでしないとな」
そして正道もこの話を知っていた。
「駄目だろうな」
「そういうものかね」
「やっぱり」
「それで戻ったらだけれどな」
正道からその話をしてきた。
「どうするんだ?また飲み食いか?」
「汗かいたからね」
「やっぱりそれでしょ」
ビーチバレーと砂場の行き来で汗をかなりかきそれで酒が抜けてしまっていた。
「飲みなおしにね」
「それと健康の為にフルーツよフルーツ」
「果物だね」
桐生がそれを聞いてぽつりと言った。
「やっぱりそれも持って来たんだ」
「よく冷えたグレープフルーツがあるわよ」
「あと西瓜な」
また明日夢と佐々が言う。
「どちらもあるから」
「あと缶のカクテルもな」
「いいね、それって」
加山がフルーツとカクテルの組み合わせを聞いて目を細めさせていた。
「焼きそばとビールもいいけれどそれもいいね」
「そうね、夏だし」
千佳も同意であった。
「いいと思うわ。とてもね」
「そうでしょ?そう思ってこれも持って来たのよ」
「まあ持って来るのが結構大変だったけれどな」
明日夢と佐々は千佳の笑顔の言葉に応えてまた言ってきた。
「砂浜で明るくっていったら」
「これもだからな」
「やっぱり少年わかってるじゃない」
凛はその明日夢のよこでにこにことしながら飴をしゃぶっていた。
「よかったらどう?飴」
「溶けてない?」
「結構ね」
ここでは苦笑いになってしまう凛だった。実際のところこの暑さのせいで飴は溶けてしまっている。しかし凛はそれでも舐めているのだった。
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