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ある晴れた日に

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296部分:空と海その二十九


空と海その二十九

「そんなの背負ってるとやっぱり」
「暑いのはその通りさ」
 自分でもそれは認めるのだった。
「けれどな。ギターに何かあったらそれこそ洒落にならないからな」
「だからなんだ」
「ああ、だからだ」
 やはりここでもそれが理由であった。
「俺の手足だしな」
「身体の一部ね」
「だから何があっても手放さない」
 これは絶対というのはここでも同じだった。
「絶対にな」
「それはいいけれど」
 千佳は気遣うように眉を顰めさせてそのうえで正道に言ってきた。
「汗がケースから中に滲みない」
「ああ、それな」
「それもあるよな」
 皆千佳の言葉でそのことに気付いたのだった。砂浜を歩きながらそのうえで話をしている。皆もう汗がまだ強い日差しを反射させて身体が銀色に輝いている。
「汗って結構滲みるからな」
「それにケースに汗が付いて大変じゃないのか?」
「それは大丈夫だ」
 しかし正道はこう皆に答えるのだった。
「それはな」
「大丈夫なのかよ」
「滲みないのかよ」
「ちゃんとスプレーをやっている」
 ケースにやっているというのだ。
「だから付くことも滲みることもない」
「本当に徹底してるね」
 恵美は彼の今の言葉を聞いて感心したような声を出した。
「そういうところまで考えてるなんて」
「だから身体の一部だ」
 ここでもこう話すのだった。
「だからな。気を使うさ」
「っていうか自分の身体以上に気を使ってない?」
 明日夢は正道の横でそのギターケースを見ながら言う。
「あんた。ギターには」
「そうかもな」
 そして彼もそれを否定しなかった。
「命だからな。本当にな」
「いいことだけれどね。ものを大事にするのは」
 明日夢はまた言った。
「何でもね」
「それと砂にも気をつけている」
 それもだというのだ。
「ギターに入るといけないからな」
「じゃあ砂浜に持って来なかったらいいんじゃねえのか?」
「なあ」
 五人は今の正道の言葉を聞いてひそひそと話したりもする。
「海には砂がつきものだからね」
「ねえ」
「じゃあ持って来なかったらよかったのか?」
 彼は今の五人の言葉に逆に聞き返してきた。
「それで。納得したか?」
「何言ってるのよ、海にはギターよ」
「チューブでもそうじゃない」
 しかしそれはそれで文句を言う五人だった。
「おめえの存在意義はそれだろ?それでよ」
「ギター持って来なくてどうするのよ」
「だからだよ」
 五人の言葉を受けてまた話すのだった。
「持って来たんだよ。最初から持って来るつもりだったしな」
「そうよね。感心感心」
「音橋はそうじゃないとね」
 五人はそれを聞いて納得したように頷いてみせてきた。
 
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