ある晴れた日に
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286部分:空と海その十九
空と海その十九
「急所を潰すってよ」
「下手したら死ぬぞ、それ」
「潰し方もわかってるから」
静華の言葉はさらに続く。
「あれって結構簡単なのよね」
「簡単なのかよ」
「もうね。パチンって」
効果音まで言う始末だった。
「簡単に割れるから。本当に」
「って静華実際に割ったことあるの?」
問う凛の顔もかなり引いていた。
「まさかって思うけれど」
「流石に実際はないわよ」
静華もそれは笑って否定する。
「けれどね。そういうのは練習でちょっと模型でやってみてよ」
「それでなの」
「蹴ったり掴んで捻ったり」
「捻るのもありかよ」
「冗談じゃねえぞ」
男組はその話を聞いてその顔をさらに青くさせる。話を聞くだけで酔いが醒めてきていた。
「蹴るのとどっちが痛い?」
「さてな」
「どっちにも死ぬだろ、潰されたら」
「ああ、死なないから」
静華は死ぬというのは否定した。
「潰されてもね。痛みでショック死することはあっても」
「だからそれが嫌なんだよ」
「やっぱり死ぬんじゃねえかよ」
「けれどそれだけじゃ死なないわよ」
自分は持っていないものだから実に気楽な言葉であった。
「だから安心してよ」
「こいつとは絶対に喧嘩できないよな」
「ああ」
顔をさらに青くさせて言い合う男組だった。
「そんな危険な技持ってるなんてな」
「何でやばい女なんだ、こいつ」
「安心しなさい、普段は絶対に使わないから」
このことはにこりと笑って話してきた。
「この技、禁じ手だから」
「当たり前だ、そんなの使うんじゃねえぞ」
「怖くて仕方ないだろうがよ」
「あくまであれよ」
今度は真面目な顔になる静華だった。
「未晴を泣かした奴だけよ」
「そいつは玉潰しかよ」
「もう子供できないわよ」
それがなくなればそうなるのは当然だった。
「それは覚悟しなさい」
「それはいいが何で俺の方を見て言うんだ?」
正道は静華の視線を感じながら言うのだった。
「俺を。何でだ?」
「別に」
この問いには笑うだけであえて答えようとはしない。
「まあ気にしないで」
「今の話を聞いて気にしないなんて言えると思うか?」
「あくまで未晴を泣かした時限定よ」
こう限定はする。
「わかったわね。私だってこの技はその時だけだって決めてるから」
「っていうかそんな技使うなよ」
「洒落になってねえぞ」
また男組が言う。皆かなり必死な顔であるのはやはり怖いからであろう。
「そんな技使われたらよ」
「痛いだけじゃなくて結婚できなくなるだろうがよ」
「だから何度も言うけれど未晴に何かしなかったら大丈夫よ」
静華はこのことは強調するのだった。
「それ限定だからね」
「まあこのクラスで竹林にそんなことする奴いねえけれどな」
「男も女もな」
この辺りは未晴の人徳であった。
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