ある晴れた日に
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284部分:空と海その十七
空と海その十七
「あれっ、何かよ」
「ああ、気付いた?」
「だよな、やっぱり」
「そうよね」
そして口々に言葉を出してそのうえで確認し合うのだった。
「このムードはやっぱり」
「だよな。もう」
「完全にね」
「それしかないわよね」
二人をちらちらと見ながら言い合いその目を笑わせるのだった。その笑みは確信の笑みであった。
「そうか、この二人かよ」
「意外っていえば意外だけれど」
「よかね?結構」
「そうよね。いい感じよ」
「いい感じっておい」
正道は彼等のその視線に気付いて言うのだった。
「皆して何が言いたいんだよ」
「だからわかったから」
「そうそう。おめでとう」
「未晴よかったじゃない」
五人が未晴に対して告げてきた。
「彼氏できて」
「応援してるぜ、うち等もな」
「ちょっと相手があれな気もするけれどね」
「あれって何なんだよ」
また抗議めいた言葉を出す正道だった。
「俺じゃ駄目なのか?」
「駄目じゃないわ」
「一応はね」
五人はとりあえず認めるような言葉を出しはした。
「けれどよ」
「わかってる?」
ここで言葉をすごまさせて正道をジロリと見るのだった。
「あんた、未晴を泣かせたりしたら」
「承知しないわよ」
「そこんとこ覚悟しろよな」
「覚悟って何なんだよ」
その五人の剣幕に内心引きながらも表情には何とか出さず言うのだった。
「俺は竹林を悲しませたりはよ」
「だから。そういうことをしたらよ」
「許さないっていうのよ」
「わかる?そこんとこ」
「未晴だけはね」
「幸せになって欲しいからな」
五人それぞれでさらにすごんできたのであった。正道はそんな彼等に対してまた言う。
「俺だってそんなことはしないからよ」
「何があってもなのね」
「未晴に悲しい思いさせないのね」
「ああ、絶対にだ」
流れは売り言葉に買い言葉だったがそれでも本心の言葉だった。
「それはしない。何があってもな」
「その言葉、忘れないでね」
「絶対にだぞ、おい」
「忘れない、今それをはっきり言ってやるさ」
正道の言葉は啖呵になっていた。
「皆聞いたな」
「ああ、確かにな」
「今ね」
周りの面々も正道の今の言葉に頷く。彼等にしても真面目な顔になっていた。
「ちゃんと聞いたからな」
「覚えたわよ」
「よしっ」
正道は彼等の言葉を受けてまた頷いた。
「そういうことでな。いいな」
「了解。それじゃあな」
「未晴を幸せにしてね」
「何があってもそうしてやる」
正道もさらに言うのだった。
「今それを誓ってやるさ」
「誓うってそんな」
話に一人取り残されていた本人が恥ずかしそうにここでやっと口を開いた。
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