ある晴れた日に
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283部分:空と海その十六
空と海その十六
「おっ、この曲」
「マジでよくない?」
「ああ、いいよこの曲」
皆顔をあげて口々に言いだした。
「音橋の曲の中でもピカイチじゃね?」
「だよな。明るいし詞もいいし」
「よくできてるじゃねえか」
「まあ今は静かにしましょう」
未晴が明るさを取り戻して騒がしくなりだした皆に対して告げた。
「折角音橋君が歌ってくれてるんだし」
「おっと、そうだな」
「そうね」
皆この言葉でふとその口を止めるのだった。
「音楽の間は静かに」
「だよな、やっぱり」
皆これで納得してそのうえで静かになった。そうしてそのうえで静かに聴く。歌を聴き終わるとそのうえで皆で言うのだった。
「いいじゃねえかよ」
「御前の歌で一番いいじゃねえか」
「そうか。気に入ってもらえたんだな」
正道も彼の言葉を聞いて静かに笑った。
「俺のこの曲な」
「っていうか御前こんな曲もいけたんだな」
「ロックやバラードだけじゃなかったのね」
「それ前にも言ったぞ」
正道は今の皆の言葉に対して今度はむっとした顔になった。
「音楽なら何でもってな」
「今のポップスだけじゃないの」
咲は今の言葉を聞いて少し意外といった顔になった。彼の今の曲はポップスだったのだ。
「他にもあったの」
「ジャズだってゴスペルだってやるしな」
「黒人の音楽もなのね」
「アメリカの曲はいいものだぜ」
そしてこういういうふうにも述べた。
「だからそっちもやるんだよ」
「そうだったの」
「って本当に前に言ったぞ」
「ああ、悪い悪い」
春華はビール片手に笑顔で話をはじめた。
「覚えてなかったよ、悪いな」
「何でこんなこと覚えてないんだよ」
「人間誰だって間違いはあるわよ」
「だよなあ」
「ねえ」
明日夢に野茂、それに茜が彼女に続く。
「まあこれで覚えたから安心してね」
「多分な」
「だから気にしない気にしない」
「ちっ、何ていい加減な奴等なんだよ」
「御前にも言う資格はねえぞ、今の言葉だ」
坪本は今の正道の言葉に速攻で突っ込みを入れた。
「そもそも御前最近あれじゃねえかよ。曲ロックかバラードばっかりだっただろ」
「そういえばそうか」
言われて本人もやっと気付く程だった。
「そうだったな。本当にな」
「だからだよ。ここで他の曲も作ってたら皆覚えてたぞ」
「だよな。最近こいつこればっかだったからな」
坂上も言うのだった。
「やっぱり忘れるよな。聴いてないとな」
「じゃあ今度ジャズで作ってみるか」
正道はギターを持ったまま考える顔になって述べた。
「一曲な」
「楽しみにしてるわ」
未晴が彼の今の言葉を聞いて目を微笑まさせた。
「音橋君のジャズね」
「ああ、楽しみにしておいてくれな」
そして正道自身も目を笑わせて彼女の言葉に応えるのだった。
「絶対にな」
「ええ。期待してるわ」
こう言葉を交えさせる。皆それを見てふと気付いたのだった。
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