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ある晴れた日に

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281部分:空と海その十四


空と海その十四

「けれどな。親戚の人達が何度も間に入って話してくれてな」
「それで何とか元に戻ったんだな」
「それでか」
「時間はかかったさ」
 野本の顔は相変わらず俯いたままであった。
「それでも。何とかなったさ」
「時間はかかったんだな」
「ああ」 
 また正道の言葉に頷く野本だった。
「それでも。何とかなったさ」
「で、今はどうなんだ?」
「落ち着いてるさ」
 野本の言葉は静かなままだった。
「そんなことがあったのが嘘みたいにな。仲良くなったさ」
「よかったじゃないか。話が無事に終わってな」
「よかったよ。俺も落ち着いた」
 ここでやっとビールを一杯やるのだった。
「何とかな。だから今は穏やかでいられるってわけさ」
「別に穏やかじゃないけれど」
「それは少し違うと思うわ」 
 桐生と千佳はそれは否定した。
「まあそれでもやさぐれがなおってよかったね」
「少なくとも喧嘩するより今の野本君の方がいいわ」
「じゃあ俺と付き合うか?」
「それは遠慮するわ」
 穏やかな顔をしているが千佳もきついことを平気で言う。
「私今はフリーでいたいから」
「そうかよ」
 さりげなくふられた野本もこう言われては返す言葉もなかった。
「じゃあそれでいいけれどな」
「まあ、明るくやろうぜ」
 春華が焼きそばをすすったうえで話の転換にかかってきた。
「折角明るい場所に皆でいるんだからよ」
「そうだよな。折角海に来たんだしな」
「明るくいきましょう」
 皆その言葉に頷く。そうしてさらに飲み食いにかかるのだった。
 食べているうちに焼きそばが減っていく。しかし未晴がすぐに鉄板に麺を入れてそのうえで焼いていく。箸を使って見事にだ。
「ああ、そんなのしなくていいわよ」
「そうだよ。ワンピースにソース付いたら面倒だろ」
 明日夢と佐々がその未晴を止めてきた。
「私達がやるから」
「竹林は見てろって」
「けれどそれは」
「いいの、料理は私達が担当だから」
「仕事取ってくれるなら」
 明るい顔で述べながら早速未晴の横に来て述べる二人だった。それぞれ彼女の左右を固めるような形になっている。
「だから休んでいてよ」
「俺達別に汚れても構わない格好だしな」
「エプロンしないのね」
 咲が今のビキニのままの明日夢を見てぽつりと尋ねてきた。
「あのいつもの十八番の」
「三浦さんのエプロンよね」
「あれ、二十二だったんじゃねえのか?少年のって」
「十六だったような」
「何枚か持ってるのよ」
 春華と茜の言葉に笑みで返す明日夢だった。
「エプロンもね。一日着けたら洗濯してるのよ」
「成程、清潔にってわけね」
「そういうこと」
 凛の言葉には特に笑顔になる明日夢だった。
「食べ物扱うからね。カラオケも」
「それはいいけれど番号はね」
「何かあるの?」
「一と八十九は駄目よ」
 咲は少し真面目な顔になって明日夢に対して釘を刺すのだった。
「その二つは取らないでね」
「あれ?秋山さんと王さん?」
「特に王さんよ」
 咲の言葉はさらに真剣なものになる。
 
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