ある晴れた日に
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280部分:空と海その十三
空と海その十三
「何でそうなるんだよ」
「あれ?違うの」
「学校の成績なんてどうでもいいんだよ」
こう言う辺りが野本であった。
「そんなのはよ」
「いいの?」
「こいつ限定でしょ」
顔を見合わせて言い合う静華と凛だった。
「とりあえず馬鹿なのははっきりとしてるし」
「そうよね、やっぱり」
「馬鹿なのはいいんだよ」
左手を少し広げて横に振って言う野本だった。
「そんなのはよ」
「それが一番問題よね」
「ねえ」
今度は奈々瀬と咲が顔を見合わせていた。
「馬鹿ってなおらないからね」
「どんなお薬でもね」
「だからそういうのじゃないって言ってんだろうが」
「そうそう、ここなんだよ」
「ここな」
今の少し怒って言い返す野本を見てここぞとばかりに言う坪本と佐々であった。
「もうな。中学の時のこいつだったらな」
「今ので確実に暴れてたんだよ」
「そうだったね。あの時はね」
そして従兄弟の竹山も言うのだった。
「何かあったらすぐに切れて大変だったから」
「そうなんだよ。もうな」
「何かっていうとよ。切れてよ」
それぞれビールを飲みつつ話を続けていく。
「大変だったんだよ」
「その度に大喧嘩でな」
「あの時俺の家ぐちゃぐちゃだったんだよ」
野本はまた俯きだして言ってきた。ビールは手に持ったままで動いてはいなかった。
「親父とお袋が喧嘩ばかりしててよ」
「お父さんが浮気したとか?」
「わかるのかよ」
明日夢の今の言葉に思わず顔をあげた。
「それ。わかるのかよ」
「まあ。そういう夫婦喧嘩のお決まりのパターンだから」
明日夢はその目を丸くさせたうえで述べた。
「やっぱりそうだったの」
「親父がキャバレーに入れ込んでよ」
その時の話を語りはじめたのだった。
「それでよ。もうよ」
「家の中でいつも叔父さんと叔母さんが喧嘩していて」
竹山も野本の話を助けてきた。
「それでね。家の中が滅茶苦茶で」
「それでやさぐれてたんだよ」
野本の顔は俯いたままだった。
「あの時はよ」
「家庭が原因だったのね」
恵は最後まで聞いたうえで言ったのだった。
「それでだったの」
「ああ、そうなんだよ」
また答える野本だった。やはりビールは進んでいない。
「あの時はな」
「で、何で落ち着いたんだ?」
坂上が野本に問うてきた。彼も今はビールを進めてはいなかった。
「それでよ」
「親父とお袋仲直りしたんだよ」
このことも話してきた。
「何とかな」
「そうか、よかったな」
「だよな」
坂上だけでなく野茂もそのことは素直によしとした。
「けれど何で仲直りできたんだ?」
「多分だろうけれど離婚寸前だったんだろ?」
「ああ、何時そうなってもおかしくなかった」
やはりそうなのだった。離婚寸前までいっていたのだ。
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