ある晴れた日に
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279部分:空と海その十二
空と海その十二
「そんなんだからもてないんでしょ」
「顔も身体もそこそこいけてるのに」
女組も野本のそうしたところは認めるのだった。
「全く。そうしたところさえなかったらね」
「彼氏欲しいっていうよその学校のツレにも紹介してやれるのによ」
「そうそう」
「げっ、そうだったのかよ」
今の彼女達の話を聞いて愕然となる野本だった。
「そんな話があったのかよ」
「紹介して欲しかったら性格なおしたら?」
「そのいい加減な性格」
女組の視線はまさに氷であった。
「明るくて気さくなんだから」
「その最低な部分よ」
「俺は最低だったのかよ」
「うん」
「って御前が頷くんじゃねえよっ」
またしても従兄弟にへこまされるのだった。
「っていうか御前だって結構煩悩あるだろうがよ」
「皆そうじゃないの?今自分で言ったじゃない」
「それはそうだけれどよ」
こう言われては分の悪い野本であった。
「けれどよ。何かよ」
「心配しなくてもそのうちできるよ」
今度は従兄弟を慰めてきた竹山だった。それぞれ隣同士で向かい合いながら顔を見合わせたうえで話をしていた。
「そのうちにね」
「そのうちかよ」
「多分だけれどね」
「多分かよ」
従兄弟の言葉にまた不機嫌になる野本だった。
「何か俺ってよ、ずっと彼女いねえままなのかよ」
「だから性格なおしなさい」
「そうそう」
そうしてまた女組に突っ込まれる。
「そんないい加減でアホな性格だからよ」
「彼女いないのはね」
「己を変えろってことかよ」
「それでいいんじゃないの?」
加山がぽつりと彼に述べてきた。
「自分を帰るのも悪いことじゃないよ」
「そうなのかね、本当に」
加山の話を面白くなさそうな顔で聞きながらまたビールを飲む野本だった。
「まあ考えてみるか」
「考えてそれで動く」
加山はこうも言うのだった。
「そうやって人間って少しずつ変わっていくからね」
「そういえば俺も結構変わったか?」
野本はここでふと何かを思い出したようだった。
「何かよ」
「まあそうだよな」
「昔に比べたらな」
彼と中学からの付き合いである坪本と佐々が今の彼の言葉に応える。
「刺々しくなくなったからな」
「喧嘩もしなくなったしな」
「何だよ、あんた喧嘩とかもしてたのかよ」
春華はそれを聞いてすぐに野本に問うた。
「まあしそうな顔はしているけれどな」
「昔の話だよ」
答えが少し歯切れの悪いものになっていた。話しながら俯いてさえいる。
「それはよ」
「昔っていっても中坊の時だろ」
「ああ」
「そんなに昔のことじゃねえだろ」
「あの時結構やさぐれてたんだよ」
その時の話を俯きながらもはじめるのだった。
「もうよ。何もかもが嫌になっててよ」
「学校の勉強そんなにできなかったのね」
「ああ・・・・・・っておい」
今の静華の言葉には速攻で言い返すのだった。
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