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ある晴れた日に

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278部分:空と海その十一


空と海その十一

「それで。今は」
「何か残念だな」
「だよな」
 男組は今の彼女の言葉を聞いて言い合うのだった。
「折角な。海なのにな」
「だよなあ」
「一人だけ水着じゃないってな」
「何か人生に悔いが出るぜ」
「あんた達煩悩しかないの?」
 茜はそんなことを言い合う彼等を冷たい目で見つつ問うのだった。
「さっきから水着だの胸だのって」
「馬鹿言えよ、他にも言ってるだろ」
「なあ」
「じゃあ何よ」
 男組にさらに問う茜だった。
「他に何があるのよ」
「ビールによ、ビールによ、ビールによ」
「あと焼きそばにな」
「だよな。そんだけあるじゃねえかよ」
「一回お寺にでも入ったら?」
 茜は彼等の話を聞き終えてさらに呆れた顔で言い返した。
「全部煩悩ばかりじゃない。お坊さんに喝でも入れてもらいなさいよ」
「俺お寺嫌いなんだよ」
「俺も」
「俺もだ」
 しかし彼等は当然のように茜の今の言葉に反発するのだった。まるで駄々っ子である。
「そんなとこ行ったら酒飲めないしよ」
「女の子だって見れないしな」
「いや、尼さんよくね?」
「御前結構独特の趣味してるな」
「そうか?」
「こりゃ駄目ね」
 いい加減茜も匙を投げてしまった。
「救われないわ、この連中」
「また随分な言い草だな」
「何だよ、それ」
 呆れられたら呆れられたでそれで言い返す彼等だった。
「俺達みたいな健全な青少年捕まえてよ」
「喧嘩はしねえし授業にはちゃんと出るし煙草もシンナーもやらねえ」
「滅茶苦茶真面目だよな」
「なあ」
「お酒だけだからね」
「そうだよね」
 桐生と竹山もしっかりとそこにいた。当然ながら二人も飲んでいる。
「これ位はいいよね」
「女の子だってね」
「まあね。っていうかさっき出たことって全部常識じゃない」
 明日夢は茜に代わって言うが彼女も体育座りをしてビールをやっている。
「大体あんた達今だって私の胸とかちらちら見てるじゃない」
「気のせいだよ」
「そうそう、気のせい気のせい」
「なあ」
 これにはしらばっくれる一同だった。もっともしらばっくれるその間にも視線は女組をうろうろとしているのだから説得力は全くない。
「じゃあ私の胸どう思うの?」
「あまり大きくねえよな」
「けれど形はよかねえ?」
「なあ」
「ついでに脚いいしな」
 聞かれてもいないことまで勝手に言う始末であった。
「小柄だけれどやっぱりプロポーションいいよな」
「見事にな」
「やっぱり見てるんじゃない」
 ここで明日夢も呆れるのだった。
「全く。本当に煩悩ばかりね」
「男から煩悩取ったら何になるんだよ」
 野本はあぐらをかいてビールを堂々と飲みながら開き直ってきた。
「あれだぜ。男は煩悩で生きてるんだよ」
「最低」
「っていうか何、それ」
 今の彼の言葉には一斉に軽蔑を以って返す女組だった。
 
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