ある晴れた日に
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271部分:空と海その四
空と海その四
「御前期末のテストどうだったんだよ」
「俺が追試受けたことはないぞ」
「畜生、俺なんかいつもだよ」
野本は正道の言葉を聞いて忌々しげに呟いた。
「今回もよ。幾つあったんだよ」
「っていうか自分ですぐに答えられない位多いのかよ」
「御前進級できるのか?」
「やばいって言われてるよ」
また忌々しげに皆に返すのだった。
「実際によ。この夏も補習ばっかでよ」
「っていうか補習なんてあったのか?」
「うちの学校」
「あるよ」
野本は口を完全に苦いものにさせていた。
「実際によ。俺はその中でもビップ待遇だよ」
「ひょっとしてうちのクラスで追試御前だけか?」
「俺等全然ないよな」
「なあ」
「そういや女子でもいねえか」
皆このことにも気付くのだった。
「北乃もそこまで成績悪くないんだろ?」
「一応追試ギリギリらしいけれどな」
明日夢も成績はあまりよくないようである。
「あいつは店の仕事手伝ってる方が多いからな」
「だよな」
彼女にはそうした事情があるのだった。学業よりも家の仕事なのである。
「けれど御前はもう完全に遊んでるからな」
「そこが全然違うよな」
「いいんだよ、勉強なんてよ」
挙句にはこんなことを言い出す始末であった。
「やらなくても生きていけるんだからな」
「けれど留年はまずいだろ」
「なあ」
やはり周りの方が一枚上手であった。
「それは流石に恥ずかしいぞ」
「そう思うだろ、御前も」
「まあそれはな」
流石に彼も恥は知っていた。
「そうさ。だから追試だって受けてるさ」
「それだったらとりあえず留年は免れそうだな」
「出席日数はいけてるしな」
「学校の授業は絶対にさぼったりしねえよ」
密かに己のポリシーも見せるのだった。
「そういうのは嫌いだからな」
「意外としっかりしてるんだな」
「っていうかよ。一応学生だからな、俺も」
また正道の突っ込みに対して言葉を返していた。
「学生はせめて授業に出ないとな。昼から遊んでいたらお天道さんに申し訳ねえぜ」
「いい心掛けだな。人間としてとりあえず最低じゃないんだな」
「とりあえずは余計だよ」
正道の今の言葉にはまたクレームを入れはした。
「けれどな。まあ人間だったら最低限のことはしねえとな」
「けれど世の中あれなのよね」
明日夢がぼやくように言ってきた。
「それができてないのも結構いるのよね」
「そうそう、中にはどんな悪いことしても嘘ついても平気な人っているわよね」
茜も言う。
「世の中って」
「どれだけ悪事働いても平気な奴か」
野本もそれを聞いて顔を顰めさせた。
「マジでそんなのいるのかよ」
「私も実際に会ったことはないけれどね」
明日夢がまた言う。
「けれどね。いるみたいよ」
「そんな奴が側にいたらマジでむかつくな」
野本はかなり真剣に言葉を出す。
「もうよ、ぶん殴るどころじゃ済まねえよな」
「とりあえず人間ここまで卑劣になれるかってね」
明日夢の言葉は続く。
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