ある晴れた日に
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270部分:空と海その三
空と海その三
「ったくよお、昔からどいつもこいつも鶏って言いやがるんだよな」
「ああ、そういえば」
「似てる?」
明日夢と茜も今の言葉を聞いてはたと気付いたのだった。
「顔がさ。何か」
「春華ってお口尖ってるしね」
「口だって昔からなんだよ」
このことも自分から言う春華だった。やはり自覚しているようである。
「何かよ、尖っててよ」
「目はインコっぽいし」
「完全に鳥よね」
「そうそう」
また二人で言い合う。とにかく春華は鳥に似ているということでは話が一致していた。気付けばそれが確信になるのにそれ程時間はかからなかった。
そうした話をしながら砂浜に出る。当然皆水着である。
「あれ、桐生御前」
「案外身体つきいいな」
男組は桐生の身体を見て言うのだった。見てみれば意外と以上に筋肉質でありしかもすらりとしている。顔は眼鏡をしていて物静かなものなのでそれが余計に目立つのだった。
「っていうか何かマッチョだしな」
「何やったらそんなのになるんだ?」
「何やったらって言われても」
皆に言われて困った顔になる桐生だった。なお水着はごく普通のトランクスタイプのものだ。これは皆そうであり男組は特におかしなところはなかった。
「まあ。部活やってるだけだけれどね」
「そういえば御前バスケ部だったな」
「ああ、そうだったな」
皆彼の言葉からそのことを思い出したのだった。
「そういや御前バスケ部だったんだ」
「そうそう、何かイメージじゃねえけれどな」
「それでだと思うけれど」
また言う桐生だった。
「身体がこうなのは」
「っていうかこれだとあれじゃないのか?ボディービルとか出れねえか?」
「それはちょっと言い過ぎだろ」
「こいつのはそんな筋肉じゃねえぞ」
坂上と佐々が野本の言葉を否定する。
「やっぱりスポーツの筋肉だろ、これ」
「だよな」
「大体よ。御前にしろだよ」
野茂は野本に対して言うのだった。
「結構身体つきしっかりしてるじゃねえか」
「自慢の種だぜ」
言われて誇らしげな顔になる野本だった。
「何せいつもダンスで鍛えてるからな」
「ダンスには余計な筋肉は駄目ってか」
「そうさ」
今度は不敵な笑みになって皆に言うのだった。
「まあ特に食事制限とかはしてねえけれどな。いつも鍛えてるぜ」
「御前も結構努力家だったんだな」
坪本はそんな彼を見て感心するような顔になっていた。
「いい加減なように見えてな」
「ダンスは俺の生きがいだぜ、生きがい」
また言う野本だった。
「だからだよ。頑張ってるんだよ」
「そうだよ。いつも興味のあることは頑張るから、彼」
また竹山は自分の従兄弟に対してフォローめいて言うのだった。
「それはね。だからね」
「抜かりはないってことかよ」
「学校の勉強とは違って」
「そういうこと」
野本に代わって答える竹山だった。
「まあ流石に今ここで踊るとは思わないけれど」
「もう飲んじまったしな」
見れば早速ビールの缶を空けている。それは皆同じだった。
「これでブレイクダンスなんてやったらやばいしな」
「頭打って余計に馬鹿になるからか」
「御前に言われたかねえっ」
正道に言われると速攻でムキになって言い返す野本だった。パラソルの下でビールの匂いがする息を撒き散らしながらの言葉だ。
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