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ある晴れた日に

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268部分:空と海その一


空と海その一

                     空と海
 夏休みに入った。クラスの面々は早速遊びに出ていた。
「夏っていったらな」
「やっぱりここだろ、ここ」
 海であった。皆で海に来ていたのだった。当然水着やビールも持ってである。
 彼等は神戸にいるので海は近い。従って今日は朝から日帰りで来ているのだ。こうした時に海の側にいるというのは非常に便利なことである。
 海岸に着いて。まず恵美が言った。
「久し振りの海ね」
「久し振りなの」
「今年はじめてだから」
 こう静華に対して答えた。
「去年は最初に一回行っただけだったから」
「そうそう、受験でね」
「あの時夏の間ずっと勉強してたから」
 明日夢と茜も言う。同じ中学校の三人がである。
「それでね。海なんてねえ」
「カラオケも殆どだったし」
「そうか?」
 春華は今の三人の問いには目をしばたかせた。
「あんた等スタープラチナで結構見たぞ」
「少年はわかるけれどね」
 奈々瀬は明日夢を見て言う。彼女の家の店だからこれは当然である。
「けれどあんた達も確かにいたじゃない」
「まさか同じ高校同じクラスになるなんて思わなかったけれどね」
「ねえ」
 凛と静華も言う。彼女達も三人を去年スタープラチナでよく見たのだ。
「それでカラオケ行ってないって言われてもね」
「信憑性ないわよ」
「十日に一回にしてたのよ」
「それまでは五日に一回だったけれど」
 そういう意味で減らしていたのである。一応二倍ではある。
「そうだったの」
「十日に一回にしていたの」
「そういうことよ」
 茜が彼女達に対して答える。
「まあ頑張ったおかげでこの高校にも入れたし。よかったわよ」
「一緒のクラスにもなれたしね」
 明日夢はにこにこと笑って茜に話した。三人で仲良く話している。
「おかげで」
「そうよね」
「それで海も」
 恵美はまた海に話を戻してきた。
「今年は一回だけで済ませたくはないわね」
「まあそうだよな」
 野本が恵美の今の言葉に頷いた。
「今年はな。楽しくやるか」
「で、あんた海に来て何するんだ?」
 春華がその野本に問うてきた。
「泳ぐよな。やっぱ」
「泳ぐこともいいけれどあれだよ」 
 ここで言う野本だった。
「このかんかん照りの中でな。踊るんだよ」
「ここでも踊るのかよ」
「太陽の日差しの中で泳ぐのが最高なんだよ」
 踊る前からもうそのつもりの野本だった。
「だからよ。俺だってな」
「僕は静かに木陰で本読んでおくよ」
 太陽が如何にも好きで仕方ない彼とは正反対に竹山はもう最初からこんな調子だった。
「静かにね」
「御前ちょっとは日に当たれよ」
 野本はその消極的な従兄弟に対して言った。
「そんなのだからデブオタとか言われるんだよ」
「それ気にしていないし。それに」
「それに?」
「僕日の光に当たると弱くなるんだ」
「御前本当に人間か?」
 今の竹山の言葉を聞いた坂上が思わず突っ込みを入れた。
 
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