| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ある晴れた日に

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

266部分:その吹く風その二十三


その吹く風その二十三

「ちゃんとね」
「また見たいな」
 そして正道はまたこのことを言った。
「またな。二人でな」
「ずっとよね」
 そして未晴も言ってきた。
「ずっと二人で」
「ああ。明日また来ような」
 早速であった。
「またな」
「そうね。ところで今日はどうするの?」
 未晴はここで今日のことも尋ねてきた。
「これから。どうするの?」
「今日は時間あるからな」
 正道はまずは自分のことを述べた。
「俺はな」
「そうなの」
「それでおたくは?」
 続いて未晴のことを尋ねてきた。
「おたくはどうなんだよ。時間ちゃんとあるのか?」
「ええ、一応は」
 未晴は静かに正道の今の問いに答えた。
「これからフリーだけれど」
「そうか。時間あるのか」
「これから好きなことできるけれどね」
「好きなことか」
「そうだけれど。本当にどうしようかしら」
「だったらな」
 正道は少し考える顔になってからそのうえでまた未晴に述べてきた。
「今から」
「今から?」
「まだ暫くここにいないか?」
 未晴に顔を向けてこう提案してきたのだった。
「それでまだこの風景見ていてな」
「お花と草をなのね」
「あと池もな」
 それも忘れてはいなかった。
「木を見るのもいいしな。何でもあるからいいよな」
「そうね。じゃあもう暫くここにいてね」
「そうするか。後は」
「後は?」
「ちょっと御免な」
 こう言うとさっと自分の口を未晴の左の頬に近付けた。彼女から見て正道は左手にいるから自然とそうなったのだ。そしてその左の頬にしたのだった。
「えっ・・・・・・」
「まだだったよな」
 してから照れ臭そうに言うのだった。
「俺達。まだ」
「えっ、ええ」
 未晴は戸惑いを見せながら正道に答える。顔を赤らめさせつつ。
「そうよ。まだだったわ」
「俺、はじめてだったんだけれどな」
「私もよ」
 二人はそれぞれ今まで誰にも言わなかったことも告白した。この時二人共その顔は真っ赤になっていた。
「今のが。本当に」
「最初はな、そのつもりはなかったんだよ」
 正道は今更のように言い訳めいたことを口にしてきた。
「それでもな。何かここにいたらな」
「キス。したくなったの?」
「おかしいか」
「ええ」
 くすりと笑って彼に答えた。
「だって。話が通らないじゃない」
「まあそれもそうだな」
「何よ、それって感じよ」
 また言う未晴だった。
「本当にね」
「悪いな」
「けれど。いいわ」
 しかし未晴はこうも言うのだった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧