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ある晴れた日に

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264部分:その吹く風その二十一


その吹く風その二十一

「それからずっとだから」
「思い出の場所でもあるんだな」
「春華も菖蒲見て凄い凄いって」
「あいつらしいな」
 正道にも容易にその状況が思い浮かんだ。そのまま小さくなった春華が池の側ではしゃぐ姿をだ。すぐに思い浮かべたのだった。
「何かすぐに思い浮かぶな」
「そうでしょ。私も今でもはっきり覚えてるわ」
 目を細めさせていた。
「よくね」
「今と前とじゃ変わったのか?ここは」
「いいえ、同じよ」
「だろうな」
 未晴の今の言葉には納得した顔で頷いた。
「だからここがずっと好きなんだよな」
「ええ、大好き」
 その目をさらに細めさせていた。
「だから音橋君にも紹介したかったの。この公園のこと」
「一人で来てもいいとは思うな」
 正道はその池を見て話した。
「けれどな。二人だとな」
「どうかしたの?」
「余計にいいな」
 彼もまたその言葉を頬笑まさせていた。目元もそれに続いていく。
「何か。誰かと一緒に見るのがな」
「そうでしょ?だから私も」
 また過去と現在を同時に見る未晴だった。
「正道君と一緒に。咲達と同じみたいに」
「あの連中と一緒って?」
「咲達は凄く大事よ」
 それだけの深い絆があるのだった。幼稚園からの長い関係はそのまま絆になっている。未晴にとってそれはもう断ち切れないものだった。
「それで音橋君も」
「俺もか」
「こう言ったらあれかしら」
 今度の笑みは苦笑いが入った。
「何か。くさいかしら」
「くさくてもいいんじゃないのか」
 しかし正道はそれはいいと言うのだった。
「それはな」
「いいの」
「そんなのどうでもいいさ」
 そしてまた言った。
「問題はそれがいいかどうかなんだよ」
「そうなの」
「いいと思うぜ」
 正道の言葉はこれだった。
「それでな。いいと思うぜ」
「そうなの。いいの」
「ああ、俺を大事に思ってくれるんだな」
「そうよ。咲達とは比べられないけれど」
 それとこれとはまた別というのだ。友人としての絆ともう一つ別のものとの絆は。また別だというのである。これが未晴の今の言葉だった。
「そうなの」
「そうか。そうなんだな」
「私。ここの緑が好きよ」
 未晴は不意に話をこの公園のことに戻してきた。
「かけがえがない位。けれどね」
「青もか」
「ええ、それも」
 こう言うのだった。目の前に広がっているのは緑の草と木、青の花と池だった。その二つをそれぞれ同時に見ながらの言葉だった。
「どちらも」
「俺もだな」
 自分もだと言うのだった。
「今はな」
「音橋君もなの」
「見たらそうなった」
 今公園を見ても、という言葉だった。彼もまた公園を見続けていた。二人は正面を見ながらそのうえで話をしているのだった。それぞれ同じものを見ながら。
「ここに来てな」
「ここに来てなのね」
「俺には音楽があって」
「ええ」
「で、おたくがいる」
 未晴がいると言い切った。
 
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