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ある晴れた日に

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262部分:その吹く風その十九


その吹く風その十九

「今日時間あるし」
「行くか?」
「正道君はいいの?」
「よくないと聞かないだろ」
 答える声が少しだけ笑っていた。
「こんなことは」
「そうね。確かにね」
 未晴もそれはわかっていた。しかしあえて一応聞いたのである。
「それはね」
「それでこっちだよな」
「ええ、こっちよ」
 丁度やって来た分かれ道の左の方を指差す未晴だった。
「こっちにあるの」
「こっちの方か」
「行ったこと。あるかしら」
 そしてまた彼に問うてきた。
「こっちの方には」
「いや」
 しかし今の正道の返答は切れのいいものではなかった。
「そういえばなかったな」
「そうなの」
「通学路じゃないしな」
 だからだというのである。実際通学路になければいい店でもあまり通らなくなってしまう。学生とはそういうものである。行き帰りにあるからいいのである。
「だからな。ちょっとな」
「私はそうでなくても寄ってたけれど」
「そうだったのかよ」
「見つけたのは。確か」
 過去の記憶を思い出しながらの言葉だった。
「小学生の時だったかしら」
「結構以上に昔だな」
「夏休みに六人でこの辺り自転車で通ってて」
 またその六人であった。
「その時に見つけたの。いい公園ねって」
「それでだったのかよ」
「それから時々遊びに行ったの」
 このことも正道に話す。
「思い出したようにね」
「あの連中とか?」
「最初に見つけたの静華だったかしら」
 微笑んでその時のことも思い出すのだった。
「確か」
「あいつがかよ」
「凛だったかしら。その辺りははっきり憶えてないけれど」
「どっちにしろあの連中なんだな」
 正道にとってはこの一言で済むことだった。彼の頭の中では静華も凛も能天気で適当な人間でしかない。どちらかというとそれは静華の方が強いが。
「それで六人で時間があればかよ」
「そうなの。一人でも来たりするけれど」
「そんなにいい場所なのかよ」
「落ち着くの」
 こう答えるのだった。
「奇麗な緑でね。見ているだけでね」
「そうなのか」
「そうよ。だから今日音橋君にもね」
「悪いな」
 正道はその公園に向かう道の中で未晴に礼を述べた。
「そんな場所を紹介してもらってな」
「御礼は別に」
「御礼ってのは感謝したら言うものなんだよ」
 彼はここではこう言うのだった。
「だから。いいだろ?」
「感謝したらなのね」
「やっぱり俺に見せてくれるんだよな」
「ええ」
 今の問いにははっきりと頷いたのだった。
「そうよ。だから」
「だったら御礼言っていいさ」
 彼はまた言ったのだった。
「俺にしてくれたんだからな」
「だから御礼なの」
「受け取っても減るものじゃないだろ。だから受け取ってくれよ」
「ええ。だったら」
 ここでやっとこくりと小さく頷く未晴だった。
「それだったら」
「それでその公園な」
 道の左右には家が続いている。完全な住宅街でお母さんが子供達を連れていたりお年寄りが歩いているのとも擦れ違う。家々は一つずつ形が違う。正道はそうした家々も見ていたが今はそれについては何も言わず特に思うこともなかったのだった。まずは公園だった。
 
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