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ある晴れた日に

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261部分:その吹く風その十八


その吹く風その十八

「あの子達が変なことしないかって」
「連日二日酔いってことは充分考えられるわね」
 というよりかはそれしか考えられないのだった。そうした意味では先生達から信用されていると言ってもいいクラスの面々である。
「まあ生活指導の藤村先生に言われないうちに」
「はい、その前にですね」
「大事には至らないようにしましょう」
 こう言うのだった。
「それはね。ちゃんとしておきましょう」
「わかりました。じゃあ家庭訪問は」
「私もね」
 江夏先生もやるというのだった。
「やらせてもらうわ」
「先輩もですか?」
「何言ってるのよ、同じクラスの担任じゃない」
 にこりと笑って田淵先生に答える。
「だったらするに決まってるじゃない。いいわね」
「有り難うございます」
「じゃあ手分けしてね」
「男の子と女の子に分けます?」
「そうね。それがいいわね」
 江夏先生は腕を組んだまま頷いた。
「じゃあ貴女はね」
「はい」
「女の子でね。私が男の子に行くわ」
「わかりました。それじゃあそれで」
「ええ。お互い何かあったらね」
「連絡し合ってですね」
「それで行きましょう。話はこれでいいわね」
「はい。じゃあこれで」
 二人で言い合うのだった。
「行きましょう」
「うちのクラスって男子でも女子でも手間は一緒だしね」
「ですよね。どの娘も皆凄く個性的で」
 これは担任の先生達が一番よくわかっていることだった。
「ですからそれだけ」
「一番手間がかかるのは誰かっていうと」
「皆ですよね」
 そうなのだった。
「もう皆」
「普通一番の問題児っていうのはいるけれど」
「皆っていうのは」
「ないわ」
 だから余計に個性的なのだった。
「学園ドラマの問題児クラスでもそんなことはね」
「ないですよね。じゃあ個別に家庭訪問して」
「やっていきましょう。夏休みもそういうことでね」
「頑張りましょう。さし当たって今日は」
「事前の打ち合わせに」
 田淵先生も江夏先生もその顔を綻ばせていく。
「白鯨に行きましょう」
「そうですね。あそこ今お酒飲み放題ですし」
「ビールが美味しい季節だし有り難いわ」
「枝豆でやりましょう」
 話はもうそこに行っていた。お酒の話になると目の色が全く違っていた。この辺り自分達が担任をしているクラスの面々と同じである。
「夏らしくさっぱりとね」
「冷奴とか」
「いいわね、余計に」
 先生達は生徒のことと酒のことを考えていた。そんな夏休み前に。正道と未晴はまた二人で道を歩いていた。普段通り二人並んでである。
「それでな」
「何?」
「この前言ってたことだけれどな」
「ああ、公園行くって話ね」
「それで今日行くのか?」
「そうね」
 未晴は正道の今の言葉に目線を少し上にやってから元に戻したうえで答えた。
 
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