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ある晴れた日に

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214部分:思いも寄らぬこの喜びその十四


思いも寄らぬこの喜びその十四

「まだな」
「まあうち等ヤクルトファンも巨人に負けたらむかつくけれどな」
 これは彼女達も同じだった。
「しかし。七年で六回かよ」
「横浜より凄かったのかよ」
 野本も他の虎キチの面々もこのことにあらためて愕然とする。
「ちっ、北乃のこと言えねえぜ」
「それでも今年のベイスターズ酷過ぎるだろ」
 正道は今度は携帯でその横浜の本日における惨敗を見ていた。
「広島球場凄いことになってるだろうな。しかも三タテだぜ」
「そりゃ怒るな」
 坪本も実によくわかったようだった。
「で、このカレーかよ」
「ベイスターズ本当に勝たねえな」
 正道はまだ携帯の試合結果を見ていた。
「今月一勝だからな」
「このままいったら本当に百敗か?」
 野茂はこの予想を考えだしていた。
「それ超えるんじゃねえのか?」
「百十敗とかかよ」
 やはり阪神ファンの坂上にとっても未知の領域である。
「横浜。最凶だな」
「強くはないのね」
「逆さまに言ったらそうなるけれどな」 
 千佳にあえてジョークを交えて返す。
「けれどある意味凄いぜ」
「で、君達はそれでもびっくりメニューを注文するの」
 今度は加山が咲達に問う。
「下手したら二割五分ないかもなのに」
「だから頼むわよ」
「ねえ」
「それはね」
 彼女達の考えはテコでも動かなかった。
「だってそれも楽しみなんだし」
「だから」
「何度も言うがほぼ確実に外れるぞ」
 正道はまた彼女達に言う。
「今のベイスターズはよ」
「だから当たった時の感動があるのよ」
 奈々瀬は既にそこに別のものを見ていた。
「もう当たった時はね。味はいいだけにね」
「何度も言うが滅多にねえぞ」
 正道はあくまでこう言う。
「今回のカレーみたいなことばかりだけれどそれでもかよ」
「何だかんだでこういうのも楽しんでるのよ」
 そしてまた未晴が彼女達をフォローするのだった。
「だからなのよ」
「マゾそのものじゃないのかよ」
 正道にはこうとしか思えなかった。
「それじゃあよ」
「わかってないわよ、スリルよ」
 凛はそのマゾという言葉に反論する。
「ロシアンルーレットよ。ハイリスクハイリターンね」
「ハイリスクローリターンだろ?」
 可能性はゼロではないからローリターンではないのだった。
「それは」
「まあそうかも知れないけれど」
 凛もそれは否定出来なかった。
「けれどまあ。当たったら凄く気持ちいいから」
「阪神ファンでベイスターズの勝利喜ぶんだな」
「巨人じゃないからいいの」
 まさに阪神ファンの鑑と言うべき言葉だった。
「もっとも阪神に勝ったら嫌だけれどね」
「そういや阪神結構変な時に横浜に負けるよな」
「ええ」
 阪神は決して常勝のチームではない。伝統的に。
「それが後々響いてな」
「それは確かにそうだけれど」
 阪神はやはり阪神でありどうしてもこうしたことは付き纏う。
「けれど。やっぱり勝った時、当たった時が最高だから」
「ギャンブルみたいなものか」
「そうかもね」
 言われてみればそうであった。
 
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