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ある晴れた日に

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213部分:思いも寄らぬこの喜びその十三


思いも寄らぬこの喜びその十三

「ちゃんとね」
「そうか。だったらいいけれどな」
「その前にカレーは」
 未晴は今度はカレーについて言った。
「食べましょう、全部」
「食べるの!?」
「咲も今言ったけれど」
 うんざりしたような顔になった静華に対して言う。
「やっぱり。残したらよくないわ」
「それはね」
 静華もそれは同意だった。
「その通りだけれど」
「とりあえずワインは暫く止めるか」
 皆ワインは置いた。
「それで今はカレーに専念するか」
「そうね」
「そうしましょう」
 皆とにかくカレーは食べることにした。やはり食べ残してはよくないと思ったからだ。
 こうして何とかカレーを食べ終えた。皆かなり苦しそうな顔になっていた。
「やっぱりよお、ワインにカレーは」
「合わないわね」
「っていうか本当に犯罪レベル」
 食べ終えてからあらためて述べた。
「まずいとかそういうのじゃなくて」
「食い合わせが最悪」
 とにかくこれに尽きた。
「もう食えたもんじゃねえな」
「二度と御免だよ」
「吐きそう」
「けれど御前等またやるんだよな」
 正道も何とか食べ終えてから咲達に問うた。
「このびっくりメニュー。次にここに来た時も頼むんだな」
「そのつもりだけれど」
 咲は何の迷いもなく正道の言葉に答えた。
「それがどうかしたの?」
「どうかしたのじゃねえよ」
 正道はその咲の返答にただでさえ最悪の組み合わせに苦しいものになっているその顔を歪みをプラスさせて言い返したのだった。
「こんなの殆ど当たりねえじゃねえかよ」
「それははっきり言えるのね」
「ベイスターズがそう簡単に勝てるかよ」
 そのはっきり言える根拠だった。
「二年に一回はダントツの最下位でよ」
「その前は三年連続最下位だったわよね」
「権藤さん辞めてから何回最下位になったよ」
 正道はさらに言葉を続ける。指折りしてその最下位の数を数えながら。
「七年で五回最下位なってるぞ」
「本当に暗黒なんだね」
 桐生もこう言うしかなかった。
「七年で五回って。かつての阪神みたいだね」
「確か阪神が?」
 今度は阪神命の野本が数えだした。もっともこのクラスで阪神ファンは彼だけではないが。
「中村スカタンが最下位で途中辞任したのを含めて。ええとよ」
「七年で六回だな」
「阪神の方が凄いわね」
 茜はこれまた実に正直に言い切った。
「けれどその時って子供だったからね、私達」
「俺覚えてるぞ」
 野本はそうであった。
「テレビ観たらいつも負けてたんだよ。ボロクソによ」
「学校の勉強のことは覚えてねえでこういうことは覚えてるんだな」
「悪いかよ」
 カレーの残っている胸の悪さを感じながら佐々に返す。
「あんな嫌なことそうそう忘れられるかよ」
「そんなにむかついたんだな」
「いつもいつも巨人に負けやがってよ」
 これが一番頭にくるのが阪神ファンである。
「何であんなに負けたんだよ」
「ヤクルトに負けてもよかったんだな」
「そっちはまだいいんだよ」
 そのヤクルトファンの春華に返す。
 
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