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レーヴァティン

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第九十九話 要塞攻略その十

 ローマ軍は勝った、久志はその勝利の後で夕食を摂りつつ双方の被害状況を聞いて満足そうに言った。
「こっちは死傷者八百人でか」
「敵軍は二万です」
「それだけ失ってか」
「捕虜は一万です」
「それで残り一万がか」
「ヴェネツィアに向かって逃げました」
 そうなったというのだ。
「この戦いでは」
「そうか、敵の四分の三を倒したか」
「その形になります」
 報告をする士官は淡々と述べた。
「まさに大勝利ですね」
「そうだな、敵の数が少なかったしな」
「そのうえで、ですね」
「陣形や装備もこっちが上でな」
「寝返りもあっては」
「圧勝も当然だな」
「左様ですね」
「よかったぜ、じゃあ今日はここで飯食って野営してな」
 そしてとだ、久志は士官に述べた。
「明日はな」
「進軍ですね」
「ああ、ヴェネツィアに向けてな」
 敵の場所にというのだ。
「兵を向けてな」
「攻め落としますか」
「そうしていくな、まだ降らないならな」
 士官にこうも話した。
「それならな」
「わかりました」
「じゃあ全員飯をたらふく食ってな」
「英気を養えと」
「ああ、戦に勝ったらな」
「その時こそですね」
「英気を養わないとな」
 こう言ってだ、久志はよく焼かれた羊の肉を口にした。塩胡椒にソースも効いていて実に美味い。焼き具合もいい。
「駄目だからな」
「戦の前だけでなくですね」
「その後もな」
「敵がまた来るかもしれないからですか」
「残った一万がまた攻めてきかねないだろ」
「こちらに反転してきて」
「奇襲仕掛けたりな、だから今も警護は厳重にしているんだよ」
 陣のそれをというのだ。
「勝って兜の緒を締めろだよ」
「そういうことですね」
「ああ、じゃああんたもな」
「周りへの警戒を行いつつ」
「飯をしっかりと食えよ」
「それでは」
 士官は久志の言葉に敬礼で応えた、そしてだった。
 戦に勝ったローマ軍は陣の周りへの警戒を厳重にしつつそのうえで夕食を楽しんだ、久志は羊だけでなくだった。
 野菜やベーコンが多く入ったシチューやパンも楽しんだ、だが酒は飲まないので清音に尋ねられた。
「今夜は飲まないのね」
「ああ、まだな」
 こう清音に答えた。
「正式にな」
「ヴェネツィアやトリエステが降って」
「それからな」
「祝勝でっていうのね」
「飲むさ」
 その時にというのだ。
「北部を完全に手に入れた祝いとしてな」
「成程ね」
「それがあと少しになったからな」
 余計にというのだ。
「ここはな」
「我慢をして」
「そのうえでな」
「飲むのね」
「最高級のワインをな」
 まさにそれをというのだ。 
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