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ある晴れた日に

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180部分:輝けダイアモンドその十四


輝けダイアモンドその十四

「それで」
「まあどんな話をしたのかはいいけれどな」
「ああ、それはちょっと」
「聞かねえよ」
 少し男気を見せた正道だった。
「その辺りはな。別にな」
「有り難う」
「礼なんていいさ。それにしてもあの時からかよ」
「そう。あの時からなの」
 また言う未晴だった。
「あの時からね」
「で、付き合いが深くなったのか」
「そういうこと。私も実は」 
 未晴の言葉が少し口ごもったものになった。
「三人とは微妙にね」
「微妙にかよ」
「それが顔を寄せ合って話してね」
「で、安橋ともか」
「少し見ただけじゃとっつきにくい感じあるわよね」
 その恵美についての話である。
「彼女って」
「親切で気が利くって感じには見えねえな」
 ここでも嘘をつかない正道だった。
「あれはな」
「また随分ストレートに言うわね」
 今の言葉には未晴もいささか引いていた。
「けれど違うっていうんだよな」
「付き合ってみないとわからないのよ」
「それはな」
「これはわかってくれるのね」
「ああ、まあな」
「わかってくれたのは」
 未晴の顔が少し晴れやかなものになっていた。
「やっぱりね」
「嬉しいんだよな」
「そうよ。とにかくね」
「東と西は仲良くなっていたってわけかよ」
「ブランデンブルグ門だったかしら」
 ベルリンの門である。ドイツの首都であるこの街の象徴でもある。
「あれってずっと閉じられてたのよ」
「歴史の授業か?」
 正道は歴史の授業という単語を自分で出してそのうえで顔を曇らせていた。
「それってよ」
「そうよ。歴史の授業は嫌い?」
「好きじゃないな」
 その証拠に声を憮然とさせている正道だった。
「社会系はちょっとな」
「そうだったの。好きじゃなかったの」
「ああ。けれどな」
 それでもというのだった。
「ブランデンブルグ門か」
「ええ」
 好きではなくとも話には乗る正道だった。この辺りは確かに律儀だ。
「その門は閉じられていたんだな」
「冷戦の間はね」
 もう歴史の話になっていることだった。かつては現在だったが今では過去になってしまっている。これが人の世であり歴史であるのだ。
「閉じられていたのよ」
「そうか」
「そうよ。けれどね」
 未晴は話を続ける。
「門は開かれたわ」
「何でだ?」
「冷戦が終わってドイツが一つになって」
 所謂冷戦の終結とドイツの統一である。冷戦の象徴であったこの東西ドイツの分裂の終焉こそが冷戦の終結でもあったのだ。やはり歴史の話である。
「それで門が開いたのよ」
「ベルリンの壁が崩れたあれか」
「そう、それよ」
 もっと象徴的な話はこれだった。
「それと同じでね」
「西と東も仲良くなったってわけか、うちの」
「わかってくれたかしら」
「まあな」
 未晴の言葉に対して静かに頷いてみせた。
 
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