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提督はBarにいる。

作者:ごません
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磯風に教える、提督流オトコ飯・2

 
前書き
ホワイトデー企画も終わったので、通常の更新再開です! 

 
「さてと、まずはめんつゆとその他材料3つで美味しく出来る、簡単な丼を教えよう」

「そ、そんな料理があるのか!?早く教えてくれ!」

「まぁ落ち着け。その料理とは……」

「そ、その料理とは?」

「『提督流コロッケ丼』だ」

《適当でも美味い!コロッケ丼》※分量:1人前

・コロッケ:1個

・長ねぎ:好きなだけ

・玉子:1個

・めんつゆ:適量

・ご飯:食べたいだけ



「提督。コロッケというのは……アレか?ジャガイモを潰して、衣を付けて揚げたーー」

「おう、そのコロッケだぞ」

 他にどんなコロッケがあるってんだよ。まぁ最近は耐熱皿なんかに入れてオーブンで焼く、『揚げないコロッケ』なんてのもあるが、あんなのはイレギュラーだ。

「コロッケはアレで完成した料理だろう?それを何でわざわざ別の料理にするんだ?」

「なら、カツ丼だってダメじゃねぇか」

 豚カツは豚カツで完成された料理だろうが。

「まぁとにかく、これは余ったおかずやなんかを飽きないようにリメイクしたレシピなんだよ。手間もかからず、手早くできて、何より美味い」

「……本当か?」

 あ、その目は疑ってやがるな磯風。いいだろう、まずはこれで度肝を抜いてやる。

「まぁ、百聞は一見に如かずって奴さ。まずはめんつゆを丼用に薄める」

「どのくらいに薄めればいいんだ?」

「めんつゆのボトルに書いてあるだろ?濃縮タイプは用途に応じて何倍に薄めるか、大体の場合書いてあるからな」

「う~ん……あ、あった。めんつゆ1に対して水を7倍、か。計量カップを使えばいいんだな?」

「おう、使い方は解るか?」

「馬鹿にするな。このくらいの手伝いはやらせて貰えるようになったんだぞ!」

 いや、それくらいしかやらせて貰えてないの間違いだと思うが。その前はどんだけ関わらせて貰えなかったんだ?謎だ。しかし、磯風の言う通り計量カップを使ってしっかりと計量出来ている。なんだ……やれば出来るじゃねぇか。

「出来たぞ!」

「よし、次はコロッケを潰す。形があまり残らない位にな」

「つ、潰すのか!?」

 そこがこのコロッケ丼のミソだ。程好く潰れたコロッケは、めんつゆの中で軽く煮てやると、中から飛び出した芋がつゆを含んでいく。フライの衣が和風出汁に合うのはカツ丼の例でも明らかだ。つゆを含んだ芋の舌触りの良さは、食べてみないと解らないが、美味いのは保証するぜ?

「コロッケはどんなコロッケでもいいのか?」

「あぁ、ジャガイモを使ったコロッケなら大概イケる」

 定番の挽き肉と玉ねぎの入ったコロッケに、コーンの入ったコロッケ。ミックスベジタブルを練り込んだ野菜コロッケ。カレー粉を入れたカレーコロッケに、甘辛く味付けされた肉じゃがコロッケ。どれも美味いが、肉じゃがコロッケだけはあんまりオススメ出来ねぇな。元々肉じゃがっぽい味付けがされてるから、つゆに入れてもしょっぱくなるだけだ。

「今日は定番の挽き肉と玉ねぎの入ったコロッケだがな」

 後は長ねぎを斜め切りにして、玉子を溶いておけば具材の準備は完了。

「さてと、こっからは早いぞ。親子鍋にめんつゆを入れて火にかける。沸いてきたら、長ねぎと潰したコロッケを入れて煮る」

「どのくらい煮るんだ?」

「ん~……まぁ、好みだな。ネギがくたくたな方がいいならじっくり煮るし、あんまり濃い味が好みじゃないなら軽くでいい」

 仕上げに溶き卵を回しかけて蓋をして、卵とじにする。こいつを丼に盛ったご飯の上にかければ完成だ。

「ほれ、食ってみな」

 今日は俺の好みで、コロッケの中身がしっかりと色付く位まで煮てある。

「これは……芋がつゆを吸っていて、しっとりとしているがそれがまた噛めば噛むほど味が出る。そこにネギの歯応えと玉子のふわふわ食感が合わさって、箸が止まらんぞ!」

 なんて、お前はどこのグルメリポーターだよとツッコミを入れたくなるようなコメントを残しながら磯風ががっついている。見た目は決していいとは言いにくいが、その悪いことをしてます感がまたいい。




「ふぅ……美味かった。さて司令、次は何を作るんだ?」

「次か?次は『オムライス』だ」

 それを聞いた途端、磯風の顔が歪む。

「む、無理だ!オムライスはとても難しいんだぞ!チキンライスも、それを包む卵も!」

 確かに、洋食屋の定番メニューに名を連ねる位だし、専門店も存在するんだ。普通に作ればオムライスというのは中々難しい料理だろう。だがそれは『普通の』オムライスの話。

「安心しろ。お前にそんな難しい作業は求めねぇよ」

「ほ、本当か?しかし……」

「何せ、作るのはオムライスはオムライスでも、『ライスオムレツ』だからな」



《混ぜて焼くだけ!簡単オム(レツ)ライス》※分量:1人前

・玉子:2個

・冷やご飯:1合分

・ツナ缶(もしくはサラダチキン):1缶

・ミックスベジタブル:適量

・塩、コショウ:少々

・オリーブオイル:大さじ1くらい

・ケチャップ:好きなだけ

※その他、お好みでチーズや他の具材を加えても美味しいぞ!



「で?司令。オムライスではなくライスオムレツとはなんなのだ?」

「何って、オムライスの起源だよ」

 オムライスの元祖を名乗る店は数有るが、今の所最有力とされているのは大阪・心斎橋にある洋食屋『北極星』か東京・銀座の『煉瓦亭』の2トップだろう。『北極星』のオムライスは生まれた当時からケチャップライスを薄焼き卵で包んだ今のオムライスに近い物だったらしいが、『煉瓦亭』のオムライスはちと違う。

 『煉瓦亭』で生まれたオムライスは当初、『ライスオムレツ』という名前で、卵とご飯、それに細かく刻んだ具材を入れて混ぜ合わせ、それを焼いてオムレツ型に整えた料理だった。当時は狭い調理場で食べる為の賄い料理だったらしいが、客の要望で店に正式なメニューとして出すようになったらしい。ちなみにだが、『煉瓦亭』では『元祖オムライス』という名前で今も当時のメニューが食べられる……らしい。俺は行った事ねぇから知らん。

「でもって、今回教えるのはオムライス……というよりさっきの話の中に出てきた『ライスオムレツ』ってワケよ」

「成る程……それでライスオムレツというのはオムライスよりも簡単なのか?」

「簡単だぞ。混ぜて焼くだけだ」

 まずはボウルに卵を割り入れて溶く。そこに冷やご飯とミックスベジタブル、油を切ったツナ缶を入れて良く混ぜる。ご飯の塊が無くなる位まで混ぜられればOKだ。

「ツナ缶じゃなくてサラダチキンを使う場合はどうするんだ?」

「サラダチキンの場合は手で細かく裂いて解して、ツナ缶と同じように卵やご飯と混ぜ合わせてやればいい」

 良く混ざったら塩、コショウで軽く味付け。仕上げにケチャップかけるからな。軽くでいい。

「後はフライパンに油を引いて熱し、生地を流し込んで焼くだけだ。ほれ」

「わ、私が焼くのか!?」

「お前の料理の練習だろうに。いいからやれ」

「わ、わかった……」

 俺からフライ返しとボウルを受け取った磯風は、フライパンにドボドボと油を入れていく。

「あぁ、入れ過ぎだっての。揚げ物やるんじゃねぇんだぞ」

「し、仕方無いだろう!?やった事がないから適量がわからんのだ!」

「逆ギレすんなっての。……ほれ、こんなもんでいい」

 余分な油は取り分けておく。

「よし、行くぞ……」

 磯風は慎重に、フライパンに生地を流し込んでいく。

「全部入ったら、フライ返しで形を丸く整えて……おぉ、中々上手いじゃねぇか」

 後はホットケーキの要領で、両面を焼き上げるだけだ。

「……まだか?司令」

「まだだ」

 磯風の奴はさっきからソワソワしていて、今か今かと待ち構えている。

「何をそんなに緊張してんだ?お前」

「前から一度やってみたかったんだ、あのホットケーキを返す奴を。だが、浦風達にはやらせてもらえなくて……」

「あ~……」

 何となく浦風達の気持ちは解る。五月雨のドジ程ではないが、飯マズって連中は大概、そういうテクニックを要求される場面だと悉く何かをやらかす確率が高い。そのせいで飯が台無しになるのを回避したかったんだろう。

「まぁ、今回は失敗しても気にすんな。練習だからな、練習」

「う、うむ……」

 磯風の奴、余計に緊張してきやがったぞ。果たして、上手くいくのかねぇ? 
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