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提督はBarにいる。

作者:ごません
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艦娘とスイーツと提督と・EX4

~明石:あずきばっと~

「いや~、すいませんねぇ提督。本部に提出するレポートの校閲お願いした上に、夜食まで……」

「いや、別に構わねぇよ。元はと言えばウチの工廠は稼働し過ぎなんだよ」

 通常の工廠での勤務は勿論、深海棲艦の艤装を材料にした深海鋼の生産及びそれを使った武器弾薬の開発。その上個人的な趣味のトンデモ兵器開発までやってるんだから、ブラック企業も裸足で逃げ出す労働環境だ。だが、本人曰くやりたくてやっている事だから疲れなんてへっちゃらですよ!なんて言っていたが、それで倒れられたら工廠の稼働率はがた落ちするから困る。

「しかし……すごいメニューですねコレ。『あずきばっと』っていうんでしたっけ?」 

「あぁ、ウチの地元の郷土料理だ」

 あずきばっとってのは岩手県全域と青森の南部地方……今の八戸市周辺で食べられている麺料理……料理ってのも変か。甘い物だしなぁ。短い平打ちのうどん『はっとう』を、甘い小豆の汁……まぁ簡単に言えばアンコだな、それの中で煮込んだ物だ。お汁粉の餅の代わりにうどん(というかきしめん)が入っているって言えばイメージが湧くだろうか?元々は結婚式だとか家の建前の時なんかのめでたい席で食べる物だったらしいが、最近はスーパーとかで手軽にうどんとかパックのこしあんとか買えるからな。手軽に作れる。

「甘くて美味しいし、うどんだから腹持ちもいいし、言うこと無しですね~」

「明石はすんなり受け入れるんだな。食べた事無い人からすると、甘いうどんとか論外だってよく言われるんだが」

「あ~……元々私がアンコ好きってのもありますけど、うどんが白玉みたいな物だと思えばそこまで変な物でも無いですよ?」

 白玉は米を挽いた上新粉、うどんは小麦粉だけどな。




「……うっし、中身は問題ない。すまんな、俺が上から押し付けられた案件だったんだが」

「いえいえ。提督も元々はそっち畑の人ですけど、所詮は工業高校レベル+αの知識ですから。専門知識のある私が書くのが一番ですよ」

「はっきり言うなぁ」

「下手に誤魔化されるよりは良いでしょう?」

「そりゃそうだが」

 そう言って明石の持ち込んだレポートに視線を落とす。レポートの題名は《妖精について》。鎮守府の運営や艦娘の運用には欠かせない妖精さんについてのレポートだ。

「しっかし、何で今更こんなレポートを上は欲しがるかねぇ?」

「最近、妖精さんの減少してる鎮守府が多いみたいですよ?」

「そりゃお前、妖精さんの特徴を掴みきれてないから……」

「だから、そういう質の悪い提督が多いって事じゃないですか?」

「はぁ……嘆かわしいねぇ全く」

 そうぼやきながら、明石の書いたレポートを捲る。1ページ目の内容は《妖精という存在とその発生に関する考察》となっている。

    《妖精という存在とその発生に関する考察》

 妖精、という存在は艦娘がこの世界に誕生したと同時にこの世に発生、又は顕現した存在だと認識されている。それまでにも伝承や童話の中の存在としては認知されていたが、それはあくまでも想像上の存在であり、現実には存在しない物とされていた。しかし、世界初の艦娘がこの世に誕生してから24時間も経過しない内にこの小さな協力者はその『発生』を確認された。そう、『誕生』でも『創造』でもない『発生』である。当時の資料を見るに、本当に唐突に何もない空間から現れた為に発生と書き表したと推察するが、当時の艦娘研究者達の狼狽ぶりが窺える。

 その資料等から見て、妖精というのは恐らくではあるが艦娘の艤装に憑いた付喪神(つくもがみ)のような存在であると考察されている。その原型となったのはかの大戦を戦った英霊達の御霊であるとされ、事実、艦載機妖精の中には当時のエースパイロットの名を受け継ぐ者が多数確認されている。

 彼らの望みは何か?と言えば、『艦娘をサポートする事』……この一言に尽きるだろう。艤装の稼働補助、艦娘の建造、装備の開発、果ては艦娘の日常のお世話に至るまで……彼らは甲斐甲斐しく艦娘を支えようとする。ただしそれは、整った環境下での話だが。

 当然ながら、妖精個人にも人格が存在しており、趣味嗜好がある。見た目は小さく、喋る言葉は幼子の様であるが、その奇想天外な化学力から産み出される物は人間の想像を超える物である。基本的には『楽しい事』に敏感で、艦娘達へのサポートもその『楽しい事』の1つに含まれている。なので、艦娘を粗略に扱っている鎮守府からは自然と妖精の数が減り、まともな鎮守府の運営は叶わなくなる。その為、艦娘の過ごしやすい環境作りは円滑な鎮守府の運営にも直結していると言える。また、妖精達は甘味を好む傾向が強く、これは大戦中の物資不足から甘味=貴重な嗜好品であったからこそ、その傾向が強い物と推察されている。その為、定期的に甘味の提供をするなどして妖精との関係を良くしておく事も推奨される。



 ……とまぁ、こんな内容がレポート用紙で10枚分程、ズラズラと書かれている。提出期限2~3日って言ってあったのに、よくぞここまで書いたモンだと思う。

「小難しく書いてますけど要するに、妖精さん達と仲良くしとくのが一番って事ですよ。ねぇ?」

「われわれもかんむすさんたちとなかよくするのはほんもうですゆえ」

「それにてーとくさんのあまいごほうびはさいこーです?」

「たのしいこともあまいごほうびもやまほどです」

「このよのらくえんじゃ~」

 明石と一緒に妖精さん達があずきばっと食ってるのを見る限り、ウチじゃあ妖精不足なんて心配は無さそうだが。





「……ていうか提督、なんでいきなりこんなレポートの提出を上から押し付けられたんです?」

「さてなぁ。おれは健全な鎮守府の運営を心がけているんだが?」

「冗談は顔だけにしてくださいよ」

「んだとコラ」

「絶対『アレ』の意趣返しでしょ?上に相談もなくやっちゃったんですから」

 明石に核心を突かれ、思わず目を逸らす。実は数ヵ月前、ちょっとしたトラブルに巻き込まれてな。その解決の為に独断で色々と工作して、後から報告したら大本営の方からギャンギャンと抗議の電話が掛かってきた。五月蝿いからと無視したが、そのせいでこんな嫌がらせをされていると言われたらぐうの音も出ない。

「だってよぉ、相談したとして許可が降りるとは思えねぇだろ?」

「そりゃそうですよ。何せ相手は同盟国なんですから」

「やっぱダメだったか?アメリカ脅迫するの」

「そりゃダメでしょ、迷惑掛けられた落とし前つけるためとはいえ」

 あ~ぁ、これから面倒な仕事が増えんのかねぇ……ヤダヤダ。 
 

 
後書き
とんでもねぇ爆弾発言が飛び出してますが、このネタは外伝の方でしっかりと消化する予定ですwww 
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