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レーヴァティン

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第九十八話 五都市連合その十二

「これがね」
「水でないか?」
「出るけれどあまり量が多くなくて」
 剛は久志に困った顔になって述べた。
「そして塩辛いよ」
「それも岩山だからか」
「この辺りはね」
「じゃあこの辺りは住みにくいな」
「実際に周りに街や村はないしね」
 剛は久志に応えて述べた。
「やっぱりね」
「住みにくい場所か」
「木が少なくて水がよくないから」
「だからだな、ああそれならな」
 ここで久志ははっとなった、それで言うのだった。
「あの要塞もか」
「木が少なくてだね」
「ああ、水も悪いな」
「暗しにくいね」
「士気は高くなさそうだし燃料になる木もすぐになくなる」
 要塞の中のそれがというのだ。
「大変だな」
「守りは堅固でもね」
「籠城はしにくいか」
「してもね」
 例えそうしてもというのだ。
「すぐにだよ」
「木がなくなるか」
「それがあの要塞のネックだろうね」
「そうか、じゃあな」
「何か閃いた?」
「ああ」
 久志は淳二に微笑んで答えた。
「木が少ないならな」
「それならだよね」
「ああ、すぐに要塞から出ざるを得ないな」
「それじゃあね」
「仕掛けるか、ただな」
「長くは待てないね」
「ああ、本当にな」
 実際にとだ、久志は述べた。
「だから長くなりそうならな」
「それならだね」
「また考えるか、今日か明日様子を見て」
 そしてとだ、久志は要塞を観ながら述べた。
「また別の方法をな」
「してみるね」
「いざとなれば力攻めか何かもするさ」
「犠牲覚悟でだね」
「時間はかけていられないからな」
「すぐにトリノを攻め落とさないといけないからね」
 ジェノヴァのこともある、そしてヴェネツィアやトリエステといった都市の動きもある。今のローマは止まってはいられないのだ。
 それでだ、久志も言うのだ。
「だからな」
「精々二日だね」
「今日か明日待ってな」
「木を採りに出ないなら」
「その時はだよ」
 まさにとだ、こう言ってだった。
 久志は今は要塞を見上げていた、時間はあまりなくとも今は要塞の出方を観て仕掛けるしかなかった。


第九十八話   完


                2019・1・16 
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