提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・39
~川内:笹団子~
「さ~さ~の~葉~さ~らさらっ、と」
「さ~らさらっ……あれ?提督、この先の歌詞って何だっけ?」
「知るか」
今日は7月7日、七夕だ。川内が朝にチケットを持ってきて、『笹団子』をリクエストしに来たのだ。そして笑いながら、
『折角の七夕だし、笹団子食べながら星でも眺めようよ!』
と仕事終わりでのデートを申し込んできたのだ。川内もカッコカリとはいえ嫁の一人。デートする事に否は無い。
「それで珍しく浴衣なんて着てんのか」
「どう?似合うでしょ」
にししし、と悪戯っぽく笑う川内の浴衣は黒地に白い染め抜きで朝顔らしき花があしらわれている。
「あぁ、似合ってるぞ。お前も含めて川内型は3人共綺麗な黒髪で美人だからな。元々和服系が似合うんだよ」
「そ、そういう事さらっと言うよね。提督って……////」
珍しく褒めたせいか、川内は茹で蛸のように赤くなっている。
「……まぁ、お前の場合は『大人しくしてれば』って枕詞が付くけどな?」
「む~っ!一言余計なのも相変わらず過ぎ!」
今度はむくれて更に赤くなってやがる。からかい甲斐があるねぇ。
「それより、リクエストが笹団子とはな。もしかして七夕繋がりでか?」
「そうだよ。七夕位でしょ?笹の葉が使われるのって。……あ、美味し」
さっきまで不機嫌だった川内だが、笹団子を食べてその上美味しかったお陰で機嫌を直している。現金な奴め。笹団子ってのは、新潟の方の代表的な和菓子だ。アンコを包んだヨモギ団子を数枚の笹の葉で包み、スゲかい草を紐にして両端と中央を縛り、そのまま茹でるか蒸すかして作る。団子に笹の葉の香りが移って、中々美味い。
「でもさぁ、何でまた笹の葉に包んでから茹でたりするワケ?手間じゃん」
「笹の葉に殺菌効果があるから……とかなんとか」
「え、そこ曖昧なんだ」
「そりゃあな。俺だって知らない事位はある」
一応調べはしたけどな。元々笹団子ってのは戦国時代に携行食として生まれたとする説が有力で、団子にヨモギを混ぜるのも腐らせにくくする為の知恵だったらしい。一説にはかの越後の軍神・上杉謙信の家臣が考案した、なんて説もあるらしい。中身の具も昔はアンコではなく、きんぴらや梅干し、おかかといったおにぎりの具のような物が使われており、甘いアンコが使われるようになったのは砂糖が安定して手に入るようになった明治以後の事らしい。
「ふ~ん……じゃあ、元々はおにぎりの代わりだったんだ」
「恐らくはな。握り飯よりも餅の方が腹持ちがいいしな」
「成る程ねぇ……それはいいんだけどさ、この笹の葉にへばりついた餅はどうにかならないかな?勿体無いんだけど」
「そればっかりはどうしようもねぇな」
「そんな事より、七夕の短冊には何書いたんだ?やっぱり夜戦絡みか?」
「ちょっと、何で私=夜戦って決めつけるのさ!?」
「普段の行い以外の何物でもねぇだろ」
「うぐ、そこまで断言されると流石にキツい……」
「改二実装前ならそれかとも思ったが、かなり前に実装されてるしな。後は消去法的に……な」
「いやいや、私もそこまで夜戦ジャンキーじゃなくなったから」
「……昔は夜戦ジャンキーだったんかい」
「あはは。まぁ細かい事はいいでしょ?警備班の班長としてほぼ毎晩夜の見廻りしてれば、夜戦に行きたい気持ちも薄れるって」
それに関しては非常に助かっている。夜が騒がしくないお陰で、俺も悠々と店を開けていられるからな。
「夜戦絡みの事じゃねぇとすると……何て書いたんだ?あぁ、無理して教えてくれなくてもいいぞ?」
「ふっふっふ……私のお願いは、これだよっ!」
『目指せ!○ンジャスレイヤー』
「アイエエエエ!?ってバカか!」
「やー、流石提督。ノリが良いね」
「そうじゃねぇよ、何だそのアホ丸出しの願いは!?」
「アホ丸出し……って失礼な!あんな感じで動けたら、夜戦だけじゃなく昼の戦闘でも活躍出来そうじゃん!」
「そこで昼の戦闘よりも夜戦が先に出てくるのが問題なんだよこの夜戦バカ!」
「夜戦バカってゆーなー!」
『な~んてね。本物の短冊はもう、書いて笹の一番上に吊るしてあるんだよ?だって……』
川内はチラリと提督の顔を見て、うっすら顔を赤らめる。
『ず~っと一緒に居られますように、なんて……恥ずかしくて見せられないもん。ねぇ、私の彦星様?』
後書き
川内さんって夜戦バカじゃなくなったら超絶美少女だと思うんだ(名推理)
川内さんの浴衣姿は2017年の三越コラボの浴衣姿を参考にさせてもらいました。実装はよ。
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