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提督はBarにいる。

作者:ごません
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艦娘とスイーツと提督と・38

~龍驤:カステラ~ 

「なぁ提督、これはウチに対しての嫌味かなんかなん?」

 目の前には青筋をピクピクさせた龍驤がいる。

「いきなり何を言い出すんだお前は」

「ウチは確かに『カステラ』をリクエストしたで?そこまではエエわ」

 そう、今回のチケット当選者は龍驤。そしてリクエストは長崎名物ともなっているお菓子のカステラだった。

「あぁそうだ、お前はカステラをリクエストした。そして俺は確かにカステラを作った。そしてそれは目の前にある。何の問題もないだろう?」

「確かに。そこまでは間違っとらんわ。ただな……なんでわざわざ丸ごとデーンと出すんや!?」

「嫌味か!?ウチの独特なシルエットへの強烈なイジりか!?終いにゃ幾らウチでも泣くで!?」

 龍驤の言う通り、目の前には巨大な天板一杯の大きさのカステラが鎮座していた。

「すまん。そんなつもりは無かったんだが……何せお前も小柄とはいえ空母。見た目の割に結構食うからな、食べたいだけ目の前でカットして出してやろうと思ったんだ」

「あ、え、えぇっと……そんなつもりで言ったんちゃうで?ウチもちょっと言い過ぎたわ。ゴメン」

 俺が神妙な口調で語ると、途端に狼狽えだす龍驤。しかし俺は神妙な態度を崩さず、尚も続ける。

「別に構わんさ。……何が、とは言わんがお前の気に障ったのは事実だ。こっちこそ配慮が足りなかった」

 そう言って頭を下げる。土下座をした方が誠意が伝わるかも知れんが、それは逆に龍驤に気を遣わせ過ぎる。

「いや、ウチも過剰になりすぎてたわ……散々イジられて来たからなぁウチも。我ながら情けないわ」

 そう言ってシュンとする龍驤。これは……もらったか?後は『アレ』にさえ気付かれなければパーフェクトだ、ウォルター。

「よし、お互いに謝ったし気も済んだろ?じゃあいつまでもクヨクヨしてても仕方ねぇし、切り分けて食うとしようぜ?」

「せやな!……切り分けるのはウチがやるわ。下らん事でヤイヤイ言ったせめてもの償いや」

 不味い。龍驤がこれ以上カステラに接近したら『アレ』がバレる。そうしたらここまでの努力が水泡に帰す。何とか阻止せねば……

「い、いや。切り分けるのは俺がやろう。龍驤は茶を淹れて来てくれ」

「気にせんといてぇな!それに切ってからでも茶は淹れられるやろ?……お、隅っこに焼き印が押してあるやんかぁ。提督も案外こういう所に拘んねんなぁ。えぇと、何々……」

「あっ……\(^o^)/オワタ」

 そこには、妖精さんに特注した『 龍 驤 (仮) 』の焼き印がしっかりと焼き付いていた。瞬間、鬼の形相で睨み付けて来る龍驤と、咄嗟に顔を逸らす俺。俺は小刻みに震えている……恐怖からではなく、笑いを堪える為に。

「………………」ゴゴゴゴゴゴ

 無言で艦載機の発艦準備を始める龍驤。その迫力は嘗ての一航戦を担った艦娘に相応しい威圧を兼ね備えていた。

「待て待て龍驤、一旦落ち着こう。なっ?」

「え~と、それはアレだ、ホラ!ちょっとしたジョークというか……お前も付き合い長いから、解るだろ?なっ?」

「ほーん?……で、言い残す事はそれだけか?」

「いや、だから軽い悪ふざけというかその」

「問答無用じゃボケエエエェェェェェェ!」

 龍驤の巻物から艦戦が、艦爆が、艦攻が次々と飛び出して来る。その発艦スピードは正に、ベテランの為せる技、という感じで素晴らしい物だった。……まぁ、それが狙っているのは俺な訳だが。


「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!」

 この後30分間滅茶苦茶逃げ回った。





「全く、悪戯好きもエエ加減にせぇよ?」

 たっぷりと追いかけっこ(?)を楽しんだ後、執務室に戻ってきた龍驤は、ぷんすこ怒りながらも緑茶を啜りながらカステラをバクバク食べている。

「結局文句言いながらも食うのかよ……」

「当たり前やろ?このカステラに罪はないわ。作った奴が問題なだけで、味は最高やし」

「だろぉ?(ドヤァ」

「どや顔やめ~や!反省しぃ」

「だが断る(キリッ」

「なんでやねん!」

 ベシッ、と突っ込みが入る。とはいえ本気で叩いている訳ではなく、漫才のツッコミのように音とアクションが大きいだけの物だが。

「お前みたいに表面上は取り繕ってても、中々素直にストレスを吐き出せない奴も居るからな。そういう奴はこうやってからかったりして、ガス抜きしてやらねぇと潰れちまうだろうが」

 その為なら道化だろうが悪役だろうが、なるのは吝かでは無い。

「はぁ……気ぃ回しすぎやろ、それは。でも……おおきに」

「お?なんだ、照れ臭いのか」

 赤くしながら小声で感謝の言葉を述べるとか、イジれってフリだろ?どう考えても。思わずニヤニヤしちまうぜ。

「うっさいわボケぇ!カステラおかわりっ!」

「まぁ、からかうのが面白いからやってるだけなんだが」

「結局それが本音かい!最悪やなこのドS提督!」

 ドSは誉め言葉です(キリッ

 
 

 
後書き
おかしい……いい話で終わらせるつもりがギャグオチになっている……!?まさかこれはスタンド攻撃かッ!?


(ヾノ・∀・`)ナイナイ 
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