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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第七十四話 于吉、裏で蠢くのことその一

                          第七十四話  于吉、裏で蠢くのこと
 洛陽においてだ。不穏な噂が流れていた。それは何かというと。
「わし等を皆死なせるつもりだというのか?」
「それが董卓様の御考えだというのか?」
「まさか」
 市井でだ。やつれた民達が囁き合っていた。
「だからか。今こうして」
「わし等から税を搾り取り」
「宮殿やそうしたものを建てて」
「そこにも駆り立てる」
「そうしているのか」
「何という話だ」
 その噂にだ。彼等はさらに不安を感じていた。
 その不安な空気は洛陽に忽ちのうちに満ちていた。それを聞いてだ。
 幻庵がだ。アースクエイクに話した。
「これはまずいけ」
「だよな。董卓ちゃんにとってな」
「こうした不穏な空気自体は嫌いじゃないけ」
 この辺りは魔族である幻庵らしかった。
「わしは不安や不穏の空気が心地よいけ。けれど」
「それは董卓ちゃん達にとってな」
「まずいことになるけ。だからそうした意味ではよくないけ」
 彼の人間としての血がそう考えさせていた。
「困ったものだけ」
「ああ。しかし何なんだよ?」
 アースクエイクはその刺青を入れた顔を傾げさせて言った。
「こんな噂。幾ら何でもな」
「おかしいけ。幾ら民を苦しめてもね」
「皆殺しとかないよな」
「絶対にないけ」
 有り得ない、二人にとってはそう思えるものだった。
 しかし洛陽の民達は今憔悴しきっている。その彼等にとってはだ。
 そうした有り得ない噂も信じられるものだった。それで噂が広まっていた。
 それを見てだ。幻庵とアースクエイクはだ。こう話すのだった。
「ここはけ」
「ああ、賈駆ちゃんに話しておくか」
「それがいいけ」
 こうしてだ。彼女にこのことを話すのだった。するとだ。
 賈駆はだ。眼鏡の奥の顔を顰めさせてだ。こう言うのであった。
「まずいわね」
「だろ?それでな」
「わし等も報告したけ」
 そうだとだ。二人は話すのだった。
「少し考えたら有り得ない話だけれどな」
「今この町の連中には信じられる話だけ」
「それだけ今皆疲れてるんだよ」
「だからけ」
「そうね。けれど今は」
 賈駆は暗い顔でだ。話すのだった。
「どうしてもね」
「どうしても?」
「どうしたけ?」
「いえ、何もないわ」
 己の言葉を止めてだ。こう言うのであった。
「何もね」
「?本当か?」
「そうは思えないけ」
 二人は怪訝な顔で賈駆に返す。
「何かあるんじゃないのか?」
「隠していないけ?」
「べ、別にそんなのないわよ」
 狼狽した顔でだ。取り繕う賈駆だった。
 それでだ。また取り繕ってだ。彼女は話した。
「あんた達はまあ町を見回って」
「巡回か?」
「それをするけ?」
「見回っているだけでいいから」
 それだけでいいというのである。
「そうしたらそれだけで噂をする声が消えるから」
「俺達が見回るだけでかよ」
「たったそれだけでいいけ」
「ええ。あんた達の外見だとね」 
 人間離れしただ。その外見ならというのだ。
「通り掛かっただけで怖いから。そうして」
「何か褒められてないよな」
「違うような気がするけ」
 こう言ってだ。二人はであった。
 釈然としない顔でだ。また賈駆に話した。
「しかしそれが役に立つってのか」
「それは喜んでいいけ?」
「じゃあキムとジョンに頼むけれど」
 代わりに出した名前はこの二人だった。
 
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