恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第七十四話 于吉、裏で蠢くのことその二
「それでもいい?」
「あ、あの二人は止めておけよ」
「ただの見回りでは済まないけ」
彼等の名前を聞くとだった。アースクエイクも幻庵も慌てふためいてだ。
顔に汗をかきながらだ。こう言うのであった。
「ちょっと自分達の気に入らない奴見つけたらな」
「それだけで制裁の嵐だけ」
「騒動引き起こし続けるからな」
「絶対に駄目だけ」
「やっぱり駄目?」
賈駆も二人の話を聞いて言う。
「そうじゃないかって思ったけれど」
「そんなの考えればわかるだろうがよ」
「まだチャンやチョイの方がずっとましだけ」
「わかったわ。じゃああの二人には言わないから」
それはしないというのだ。
「あんた達御願いね」
「ああ、わかったぜ」
「それならけ」
こうしてだ。二人は町を巡回するのだった。そうしてだ。
町の不穏な噂を打ち消すのだった。これでまずはよしだった。
しかしだ。賈駆はだ。
浮かない顔のままだった。その顔でだ。宮廷の奥深くに入ってだ。そこでだった。
一人の宦官と会っていた。彼はというとだ。
張譲だった。死んだ筈の彼がだ。悠然と笑ってこう言うのであった。
「何かあったのかい?」
「何もないわよ」
きっとした顔でだ。賈駆は張譲に言い返した。
「別に何もね」
「そうなんだ。ないんだ」
「ないわよ。それでよ」
「それで?」
「今日は何の用なのよ」
不機嫌そのものの顔でだ。張譲に言い返すのだった。
「一体」
「また頼みたいことがあるんだ」
「また!?」
「そう。どうも袁紹と曹操は動かないみたいだね」
張譲は賈駆とは違ってだった。悠然とした笑みでだ。こう言うのだった。
「そうみたいだね」
「貢物は出してきたわ」
それはだと。賈駆は話すのだった。
「ただ。宮殿建築の費用とかはね」
「出して来ないんだ」
「向こうも向こうでお金が必要なのよ」
賈駆はその目をきっとさせてこのことを話す。
「政に軍によ」
「そんなことにお金を使うんだ」
「じゃあ何に使うのよ」
「決まってるじゃないか。贅沢にだよ」
それが宦官の金の使い方だった。特に張譲はそうである。
「己の贅沢に使わないでどうするんだよ」
「じゃあその為に民が苦しんでもいいっていうの!?」
「何か不都合があるのかい?」
平然と返す張譲だった。
「それで」
「あんたのそういうところはね」
「好きになれないのかな」
「大嫌いよ」
全否定だった。それを露わにさせての言葉だった。
「月だってそう言うわよ」
「董卓ね。相国の」
「月は大丈夫なんでしょうね」
「安心したらいいよ。ちゃんと食べ物は食べさせているしね」
「若し月に何かあったら」
まさにだ。子猫を護る母猫の顔での言葉だった。
「その時は絶対に許さないからね」
「おや、そんなことを言っていいのかな」
ここでも悠然と返す張譲だった。
「若しそんなことを言えば董卓がね」
「だからよ。あんたにはね」
どうしてもだ。逆らえないというのだ。
賈駆は怒りに満ちた顔だった。しかしだ。
身体を震わせながらも何もできなかった。それが今の彼女だった。
そしてだ。こう言うしかなかった。
「言うことを聞くわよ。ただし月にはよ」
「安心していいよ。指一本触れないよ」
「絶対によ」
「君達が大人しく従ってくれればね」
こう告げるのだった。そしてだ。
その話が終わってからだ。またであった。賈駆にこう告げた。
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