恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第七十三話 張遼、董卓を探すのことその八
「そんなの。鉄だと」
「そや。無茶にも程があるで」
張遼も唖然となっている。そしてだ。
こうだ。賈駆に対して言うのだった。
「これ絶対月ちゃんの考えやないやろ」
「間違ってもそうじゃないわ」
董白も確信して言う。
「姉様がこんなことしないわよ」
「詠、あんたでもないで」
張遼はその賈駆を指差して指摘する。
「あんたもわかってる筈や。こんなアホなことしたらどえらいことになるってな」
「うっ、けれど」
「けれど?」
呂布がここでようやく動いた。そうしてだ。
無表情のままでだ。賈駆に問うのだった。
「詠、今けれどと言った」
「それがどうかしたの?」
「何か事情がある」
こう指摘するのだった。
「そう、今の状況に」
「一体何が言いたいのよ」
「今のお金の話、いえ都に来てからのこと全部」
その全てがだというのだ。
「月の考えじゃない。勿論詠の考えでもない」
「月の名前になってるでしょ」
「名前になってても言っている人間がそうだとは限らない」
呂布はそこも指摘した。
「そう、月は絶対に利用されている」
「そうだな。若しそうでないというのならだ」
華雄もここで指摘した。
「月様は何処だ」
「何処だって!?」
「そうだ、今何処におられる」
「宮中にいるわよ」
「おらんかったで」
張遼がそのことを言った。
「うちと陽ちゃんで探したけど何処にもおらんかったで」
「そうよ。本当に何処にいるのよ」
董白も張れ遼に続く。
「いるって聞いても何処にもいないじゃない」
「だからそれは」
「言えないっていうの!?」
董白はその紫の目を鋭くさせて賈駆に言い返した。
「どういった事情でなのよ」
「もう一つわかることは」
呂布は全員に言われて困っているその賈駆について述べた。
「詠は今守ってる」
「姉様をなのね」
「そう、どういう事情かわからないけれど守ってる」
そうだというのである。
「少なくとも悪いことは考えてない」
「そやな。詠はそんな奴ちゃう」
張遼もいう。彼女がそうした人間でないことはもう自明の理であった。
「月ちゃんの為なら身を挺してもやからな」
「では何があったのです」
「よからぬことではないのか」
陳宮も華雄もいぶかしんで話す。
「おかしなことなのです」
「これは一体」
「今それを言っても仕方ない」
呂布はぽつりと言った。
「多分。どうしようもないから」
「それは」
「詠、それでその別邸だけれど」
「もう決まったのよ」
「建築の順番を決めればいい」
呂布はさりげなく智恵を授けた。
「そう、最初の別邸はまだ造ってるから」
「それがどうしたのよ」
「それを築いてから二番目になって」
「そこから最後だっていうのね」
「そうすればいい」
こう言うのである。
「あと宮殿と陵墓もまずは宮殿を優先させる」
「じゃあその分の人夫や予算はどうなるのよ」
「後に回せばいい。今は」
こんな話をしてだった。建築に対する民の負担はだ。最小限に抑えるというのだ。呂布はこの案を出して民の苦しみを抑えたのである。
「それでどう」
「そうね。じゃあそれでいきましょう」
呂布のその案に頷く賈駆だった。
ページ上へ戻る