NARUTO日向ネジ短篇
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【その傍らに】
前書き
大戦中に穢土転生のヒザシと、ネジとヒナタが対峙したら、という話。色々矛盾していると思いますが、ご了承下さい。
「父上……あなたも、穢土転生を──」
大戦の乱戦の最中ネジとヒナタは、かつて自らの意思で日向一族の宗家分家に関係なく家族として守る為に死を選んだ日向ヒザシと対峙していた。
『本当に久しいな、ネジ……。立派になったものだ。そして──ヒナタ様も』
「ヒザシ様……、私に敬称など必要ありません……。私のせいで、あなたは……!」
『未だにご自分を責めておられるのか……。貴女は、お優しい方だ』
「優しくなんて、ありません……! 私は、私は…っ」
ヒナタは俯き、眼をぎゅっと瞑る。
「ヒナタ……、言葉を交わすだけ無駄だ。こいつは……敵でしかない」
ネジは穢土転生のヒザシを白眼で睨み据える。
「そんな、ネジ兄さん……。魂自体は、ヒザシ様そのもので……!」
『息子の言う通りです、ヒナタ様。──今の私は、自らの意識は持っていても操り人形でしかない。そう、このように』
容赦なくヒナタへ向け瞬時に八卦空掌が放たれるが、ネジがヒナタを身体ごと庇うように共に避ける。
「その甘さが命取りになると……何度も言わせないでくれ、ヒナタ」
「ネジ兄さん……」
『宗家と分家の隔たりは、解消されているのか?』
ヒナタに敬称を使わないネジに、ヒザシはそう問い掛ける。
「大戦中は、忍び連合の仲間として闘っている」
『そうか……、根本的にはやはりまだ解消されていないか……』
「そう遠くないうちに、日向はきっと変わる。変えてくれると……約束してくれた仲間が居るから」
微かに笑みを見せる息子に、ヒザシは久方振りに胸の内が暖かくなるような感覚を覚える。
『それは頼もしいものだ。……いい仲間を持ったな、ネジ』
「あぁ……だからこそこの大戦は、仲間を守る為の闘い。──決して負けるわけにはいかないんだ」
父ヒザシを前に、柔拳の構えをとるネジ。
『フフ……よく言った。流石は私の息子だ。お前ならきっと、私を再び浄土へと還してくれるだろう』
「ヒナタ、下がっていろ。父上は……いや、この敵は俺が──」
『……私を操る者は、優先してヒナタ様を殺しに掛かるだろう』
「ならば、死守するまで」
(違う……、それじゃ駄目……)
ヒナタは守られてばかりいる自分が悔しくて堪らず、このままではいけないと強く思う。
『守りきれるのか、お前に』
「守ってみせるさ、それが俺の──」
ヒナタはつと、ネジの前に出る。
「今目の前に居るのは……あくまで敵と認識し、ネジ兄さんは私が死守します」
(……ヒナタ)
『フ……それで良いのだ。さぁ、お前達の──宗家と分家を超えた仲間としての絆を、私に見せてくれ!』
言いながら素早く間合いを詰め、範囲の大きい回天を繰り出すヒザシにネジとヒナタは間一髪で躱す。
(ヒザシ様も、ネジ兄さんと同じく回天を使えたんだ……!)
ヒナタは内心驚いたが、ネジはその事を父が生存していた時に既に知っていた。
生前のヒザシは息子のネジにたった一度だけ回天を見せた事がある。──その回天は、実は次期当主と定められ回天の修業をしていた宗家のヒアシが、分家とはいえ双子の弟のヒザシに密かに教えていたのだった。
まだ幼い息子に一度だけしか見せられなかったのは、既に兄の代わりとなって死ぬと自ら決めていたからで、そのすぐ後にヒザシは亡くなり遺体は雲隠れに送られ戻って来る事はなかった。
ネジはその後、たった一度だけ父が見せてくれた回天を元に血の滲む修業の末、会得に至ったのだ。
──目にも止まらぬ動きで互いに繰り出す柔拳をいなしつつ、まだ息子が幼い頃はこれほど素早い手合わせは出来なかったが思わぬ穢土転生によって、成長した息子と敵対という形でもこうして相手が出来る事にヒザシは、操られていながらも喜びを感じずにはいられない。
「八卦掌──回天!」
ネジはヒザシに向け回天を繰り出し、穢土転生で操られているとはいえヒザシはネジに応えるように再び回天を繰り出して地上の二つの蒼く美しい半円形のチャクラ放出が激しくぶつかり合う。
……敵同士として相見えてしまったといえど父と闘える事に確かな喜びを感じ、これまでの父との空白の時を埋めんとするかのように回天同士ぶつかり合うネジだが、穢土転生で力の増しているヒザシに及ばず耐えかねて弾き飛ばされる。
回天を止めたヒザシに向かってすかさずヒナタが柔歩双獅拳を叩き込もうとするが軽く躱され、逆にヒザシから柔拳を食らいそうになるもネジがそこへ八卦空掌を放ちヒナタからヒザシを離す。
ネジの元にヒナタはすぐに移動し、二人は片手を隣り合わせ、修業を重ねて共に放てるようになった術を渾身で放つ。
「「──八卦空壁掌!!」」
……この時のヒザシは本当は躱せたのかもしれない。だが、穢土転生の術者に僅かながら逆らい、敢えてネジとヒナタからの術を身に受ける事を選び、後方へ吹き飛んで仰向けに倒れ込む。
「父上!」
ネジは思わず呼び掛けてヒザシに駆け寄り、ヒナタもそれに続いた。
『お前達のその絆……しかと、見届けた……。これで、思い残す事はない……』
「父上……?」
『私の魂は満たされた……。これにより敵の術は解けるだろう』
ヒザシの原型が、ゆっくりと崩れてゆく。
『ヒナタ様……いや、我が姪のヒナタよ。息子と共にこの大戦をどうか生き抜いてほしい』
「はい……!」
涙堪え応じるヒナタ。
『そしてネジ……、まだまだこちら側へ来る事は許さんからな……』
「そんな事……判っているよ、父様。俺は、そう簡単には死ねないから」
苦しげな笑みを見せる息子に、かつての優しい微笑みを向けるヒザシ。
『私はいつだって、お前を見守っているよ。今までも……そして、これからも。どうかお前達の……日向一族の未来が、明るいものであるように───』
《終》
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