NARUTO日向ネジ短篇
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【ヒマワリとの休日】
前書き
個人的にナルト新伝や新伝アニメの内容は苦手です。孤児のナルトが戦争孤児の多いはずの里で親子の日を容認するのは違う気がするので。普通に久し振りの休日に、ヒマワリとナルトが出掛けてネジの墓参りをする話です。
ヒマワリは父親のナルトと共に、いとこ伯父の日向ネジの墓参りに来ていた。
……ナルトは久し振りの休日で午前中はほぼ家で寝ていたが、午後には起き出して息子ボルトの修業の相手になり、その次は娘ヒマワリの要望を聞いて、お父ちゃんとお出かけしたいと言うので二人で色んな店を巡る事にした。
普段なかなか父娘だけにはなれないので、ヒナタとボルトはナルトとヒマワリに気を使って家から見送った。
── 一通り店を巡り、最後にいのの花屋に寄って向日葵を三本購入し、ヒマワリのもう一つの要望であるネジおじさんの墓参りに向かう。
「……よう、ネジ。最近来れなくてすまねぇな」
日向ネジ、と刻まれた墓石に静かに語り掛け、身を屈めて向日葵をそっと供えるナルト。
「ヒマはねぇ、しょっちゅう来てるよ。何だかここに来ると、落ち着くの」
「そうか……」
「ネジおじさんに、色んなお話するんだよ。返事はないけど、聞いてくれてる気がするの。お兄ちゃんが任務からちゃんと帰って来たよーとか、お母ちゃんと一緒においしいお菓子作ったから持って来たよーとか、またお父ちゃん帰って来れなかったよーとか……」
「はは……そっか」
ネジが生きていたら、父親の自分よりヒマワリはきっとネジに懐いただろうなとナルトは思う。
「ヒマワリ、一時的に白眼になった事あったろ? あの強烈な柔拳はネジ譲りだと思うんだよなぁ。ヒマワリにその気があれば、ネジみたいに強くなれるぞきっと」
「えへへ、そうかなぁ……! 前にハナビお姉ちゃんとお兄ちゃんが手合わせしてるの見て、ハナビお姉ちゃんの柔拳かっこいいなぁって思ってたんだ。ネジおじさんもきっとすごくかっこよかったんだろうなぁ……、今度ハナビお姉ちゃんからちゃんと教わってみようかな!」
「あぁ、そうしてみるといいってばよ。ハナビの回天見た時は、ネジの回天思い出したなぁ……。ヒマワリの言う通り、ネジの柔拳はすごくカッコいいんだぞ!」
誇らしげに言うナルトに、ヒマワリはにっこりした。
「……そういえば、かいてんって目は回らないのかなぁ」
「うーん、目が回らないから回れるんじゃないか?」
「ん~っ、かいてん!!」
「え、おい、ヒマワリ……!?」
ネジの墓とナルトの見ている前で、ヒマワリは急にその場でグルグルと回り出す。
「う~?? 目が回るよぉ……っ」
「いきなりやろうとして出来もんじゃないってばよ……、あの時怒ったヒマワリが白眼になって俺に柔拳食らわせた時は、無意識のうちにやってのけちまってたけどな……」
ふらつくヒマワリの両肩に手を置き、支えてやるナルト。
「そっかぁ、やっぱりちゃんと教わらなきゃだめだね……」
「そうだぞ、いくら才能があってもちゃんと努力しないと身に付かないからな。日向の天才のネジだって、すっごく修業して強くなったんだからな。ネジみたいに強くなれとまでは言わないけど、自分の身は自分で守れるくらいにはならないとな」
ナルトはヒマワリに目線を合わせ、優しく言った。
「うん……! あ、そうだ。あのね、何日か前にね、ネジおじさんの夢を見たんだよ!」
「おぉ、そうなのか! どんな感じだったか、覚えてるか?」
「んっとね、白い服着てて、とてもやさしくて、ヒマの頭なでてくれたの! あとね、おじさんの長い髪さわらせてもらったんだけど、すっごくさらさらしてた!」
ヒマワリは嬉しそうに頬を染めた。
「そうか……良かったなぁ。俺の夢にも出て来ねぇかなぁ、それとも出て来てくれてるけど目が覚めたら忘れちまってるのかな……」
実の所ナルトは、時折大戦時のネジの死を夢に見ては飛び起きるなどして胸を締め付けられる思いをしていたが、ヒマワリにはそれは言えなかった。──あの時の夢ではなく、ただ普通に会いに来てくれる夢を見たいと思うのは、勝手な願いなのだろうかとも感じる。
「ヒマがもっと小さい時はね、夢じゃなくて、ネジおじさんいつも近くにいてくれたんだよ。ミナトおじいちゃんも、クシナおばあちゃんも、お父ちゃんの師匠の人も」
「そういやまだ小さい頃、そんな感じしてたっけなぁ……ボルトも」
幼児期に息子のボルトも、誰も居ないはずの方向を向いて一人キャッキャしている事がよくあって、今思えばあれは自分の師匠や父と母、義兄のネジが、そっとボルトやヒマワリの相手をしてくれていたんだと思うとナルトは胸が熱くなる。
「……でも、だんだん見えなくなっちゃったの。今は、時々夢に出てきてくれるんだけどね」
少し寂しげにヒマワリがそう言うという事は、ボルトも口には出さないだけで夢ではまた会えているんだろうなと察せられる。
「──なぁネジ、俺は……火影としてちゃんとやれてっかな。里の皆は俺の家族で、里には孤児も多くて……、俺は日々激務に追われてるけど、里の家族皆の為なら苦にならないんだってばよ。それで働き過ぎだってよく言われて、
こうしてまともに休み貰わないと休む気にならねぇんだけどな。何かいくら里の為に働いても足らねぇ気がして……俺、本当に火影として上手くやれてるのかなっていつも自問自答してるんだ。師匠や父ちゃんに母ちゃん、お前に……ネジに恥じないように出来てっかな」
墓を前に、ぽつりぽつりと呟くように話すナルトだが、応えは返って来ない。
……だが代わりに、ふわりと優しい風がナルトの顔を、そっと撫ぜるように吹いた気がした。
《終》
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