『魔術? そんなことより筋肉だ!』
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SS22 ギルガメッシュとの戦い(?)
前書き
シリアスから一転……、思いっきりギャグです。
裸注意。
ギルガメッシュのキャラ、大崩壊注意。
その後、アーチャーは、霊体化して治療する前に、綺礼達の目的を聞いたことを話した。
簡単に言えば、選別と、そして、10年前に起こったあの災厄の再現だった。
選別は、ギルガメッシュにとって支配するに値する人間だけを選び、それ以外を滅ぼすこと。
災厄の再現は、綺礼の目的だった。
彼は、価値観が完全に破綻しており、人の不幸をこの上ない幸福としているのだと。
「っというか、それを私達に伝えさせるために生かされたんじゃないの?」
「違うな。奴ら、俺が死んだと思って去って行ったのだ。」
「よく生きてましたね。」
「死ぬつもりだったが…、ここにいる筋肉バカのたわけの魔力によって、余計なほど耐久力が強化されていて、奴のエヌマ・エリシュでも、完全には消滅せんかったのだ。」
「あんな物を喰らってよくぞ…。」
「エヌマ・エリシュってどんな攻撃なんだ?」
「強いて言うならば、乖離剣エアによって、空間ごと敵を切り裂き消滅させる対界宝具だ。あまりの威力に、抑止の力が働くほどの代物だ。」
「空間ごと切り裂く…。」
「おい…。まさかその身で受けようなどと考えるな…。」
「何も言ってないだろ?」
「お前の考えそうなことだ。」
「あんたの規格外な筋肉でも、さすがにそんなものを喰らったら死ぬわよ?」
「シロウ。お願いですから、やめてくださいね。」
「先輩…。」
「あー、分かったよ。絶対に喰らったりしないから安心しろって。」
全員に心配され士郎は、参った降参だと手を上げた。
全員が安堵のため息を吐くと、アーチャーが、しかし…っと言った。
「どうやら、奴らは、私とライダーを同時に殺すことで、聖杯を降臨させる予定だったようだ。おそらく、予定を変更し、こちらに攻め入ってくる可能性もある。」
「私か、アーチャーを殺せば、それで聖杯は降臨するからですね。」
「そうなのか?」
「ええ。聖杯は、6つの英霊の魂を捧げることで降臨するの。生き残った7人目のマスターとサーヴァントがその聖杯を手に入れて、願いを叶えるのよ。」
「……なあ、遠坂。」
「なに?」
「それだけの残酷な儀式をやって、本当にちゃんと願いが叶うのか?」
「それは…、でも聖杯戦争は、数百年の歴史があるのよ?」
「俺と同じ立場の人達を、あんな場所で、あんな状態にしていた奴らが監督なんだぞ? ……俺、ユーリ兄ちゃんに会いたいからって、全然気にしてなかった。こんなことまでやって、慎二やイリヤ達も死んで、そこまでしてやって願いを叶えたって……。」
「先輩…。」
「シロウ。私は…、過去の聖杯戦争で、聖杯を破壊しました。」
「えっ?」
「その後のことは分かりません。しかし、もしかしたら冬木の大災害は…、そのせいで…。」
「セイバー…。」
俯き、ギュッとスカートを握りしめるセイバー。
「過去のことを悔いても戻らない。今は、今のことを考えようぜ。な?」
「シロウ…。」
「今のまま、アイツらを放置してたら、ユーリ兄ちゃんに顔向けできない。だから、俺は戦うよ。そのために…力を貸してくれないか?」
「…はい!」
「ちょっと、私のことも忘れないで。」
「遠坂。いいのか?」
「遠坂の悲願はあるけど、それが昔に起こったあの惨劇と引き換えだというなら話は別。」
「…ふっ…。よくぞ言ったな。」
「アーチャー、いいか?」
「もちろんだ。」
「先輩…、私…。」
「桜。俺達は、必ず勝つ。勝って、桜のところに必ず帰ってくるからな。」
「私…、先輩の力になりたかったな…。」
「もう十分だ。桜は頑張ったよ。」
士郎はそう言って微笑み、桜の頭を撫でた。
***
決戦前に、腹ごしらえをした。
アーチャーは霊体化して、急ピッチで治療に専念。
「おー…、吸われてる感じがあるな。」
居間で座布団の上に座っている士郎が、宙を見上げてそう呟いた。
「なんだかんだで、アーチャーも先輩のこと嫌いじゃないんですね。」
隣に座る桜がそう言った。
「そうかな?」
「じゃないと、自分から足止めして先輩を助けたりしませんよ。」
「そうなのかなぁ?」
「ねえ、先輩…。もし……、この聖杯戦争が終わったら……。」
「桜。その先は、帰ってからだ。」
「先輩…。」
「分かってる。桜。」
士郎が桜の肩を抱き寄せた。
「……先輩。必ず、帰ってきてください。美味しいご飯用意して待ってますから。」
「ああ。楽しみだ。」
「……いつものように邪魔をしないのですか?」
「今くらいいいわよ。こんな時ぐらい、邪魔するような人でなしじゃないし。」
廊下から見ていたセイバーが、隣にいる凛に聞くと、凛はそう答えた。
「ふふ…。」
「なに笑ってるのよ?」
「いえ、やはり、お二人の幸せを願っているのですね?」
「……本当はね…。内緒よ。」
凛は、プイッとソッぷを向いてそう言った。
その時、セイバーが笑みを消し、ハッと空を見上げた。
「リン!」
「うあ!」
セイバーが凛を庇い、廊下を転がった。
直後、外に面した廊下に、無数の武器が着弾した。
「久しいな、セイバー。」
「ギルガメッシュ!」
ギルガメッシュは、空飛ぶ黄金とエメラルドの舟に乗ってやってきた。
「あの贋作者はどこだ?」
「狙いはアーチャーですか?」
「もとより貴様だけは残す予定だったのだ。我と共に、ひとときの生を享受しようではないか、我が花嫁よ。」
「誰が!」
「遠坂!」
士郎が駆けつけた。
「来たか、雑種。そういえば、お前の名を聞いていなかったな。名を名乗ることを許可する。我に名を聞かせよ。」
「…士郎。衛宮士郎だ!」
「お前の肉体は、実によく出来ているな。美しくすらある。」
「うぇ…、あんた、変な趣味してるわね。」
凛が心底嫌そうに言うと、ギルガメッシュは、フンッと腰に手を当てて、鼻で笑った。
「肉体の美とは、すなわち人たる生命が持ちうる美しさにして力よ。だが…、我が肉体の美と力には敵うまい!」
「なに!?」
次の瞬間、金ぴか鎧を消し、生まれた姿となった…まあようするに全裸になったギルガメッシュがまるで美術彫刻のようなポージングを取った。
士郎のリミッター解除をして筋肉とは違う、細いようで無駄のない美しい筋肉が、黄金に輝いているように見えた(おそらく背景にしている太陽のせい)。
「ふははははは! 我が肉に酔いしれるがいいわ!」
「うわぁ…、最悪…変な意味で士郎と似通った趣味持ってる奴だったなんて…。…士郎?」
「うっ! なんという美しさだ! さすが、人類最古の王! モノ(筋肉)が違う!」
「しろーーーーーーーう!!」
「ハーハハハハ! もっと言うがいい!」
「だが、隙だからけだぞ。ピストル拳!」
「はっ? うおっ!! 貴様!!」
ヴィマーナをピストル拳によって打ち砕かれ、ギルガメッシュが庭に頭から落ちた。
すぐにボコッと頭を出したギルガメッシュが、怒りに顔を歪める。
「士郎! 貴様! 我がせっかく貴様の土台で戦ってやろうというのに、それを無下にするとは…。」
「えっ!? そうだったのか!? それは悪かった! 心の底から謝る!」
「ふっ、分かれば良いのだ。」
「許しちゃった!?」
「なにがしたいのです!? 英雄王!」
思わずツッコむ凛とセイバーだった。
「見て分からんか、セイバー?」
「分かりません! 裸でなにを!?」
「この生命の美にして、力たる肉が分からんとは、お前もまだまだよのぉ、セイバー!」
「なに!?」
「セイバー! 真剣に問答しちゃダメ!」
「よっしゃぁ。じゃあ勝負だ、ギルガメッシュ!!」
「むっ、来るか!」
『体は筋肉でできている
血潮はタンパク質 心は不屈
幾たびの苦痛を超え強化
ただの一度の満足もなく
ただの一度の慢心もなし
担い手はここに1人極限の地へと至らんとする
ならば、我が生涯に一片の悔いは残さず
この体は無限の筋肉でできていた!
「アンリミテッド=ハードワークス(無限の筋トレ)」』
すべての詠唱が終わった瞬間、あの…世界が広がった。
「いやあああああ! またこの固有結界!」
「シロウ! この固有結界の効果はまだ…!」
「じゃあ、勝負だ!」
「来るがよい!」
その後始まるのは、士郎とギルガメッシュによる、ポージング合戦。
「……ちょっとぉ、二人とも~。」
「全然聞いてませんね。」
凛とセイバーがあきれ返ってしまった。
しかし二人は気づいていなかった。
空に、幻のように存在する筋肉神のような存在が、ゴゴゴゴッ…とゆっくりと動き出していることに。
「衛宮士郎の寄る辺として判定します…。」
「桜ぁ!?」
そこへ部屋の奥に避難していた桜が、あの花嫁衣装で出てきた。
そして、スッと片手をあげる。
「勝者…。士郎。」
まるで何か見えない力に操られているように、単調な口調で勝者の名を言った。
「ぬっ!? 我が負けただと!」
「これより、敗者に、鉄槌を。」
「なっ!?」
「我らが神の鉄槌は下る。」
桜が上げた手を、ギルガメッシュに向けた。
その瞬間、空に存在する幻であるはずの筋肉神のような存在の手のひとつが実体を持ち、巨大な拳となってギルガメッシュに振り下ろされた。
「馬鹿なアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ギルガメッシュは、筋肉神のような存在の拳によって潰された。
そして、世界が元に戻る。そして桜も元に戻り、力尽きたようにペタンッと座り込んだ。
「? 私…。何を?」
「桜! よかった! 元に戻ったのね!」
「えっ? ね、姉さん、痛い…。」
凛が泣きながら桜を抱きしめた。
ギルガメッシュは、地面にうつ伏せで倒れ、深くめり込んでいた。
あまりのことに、セイバーは、絶句していた。
固有結界:『アンリミテッド・ハードワークス(無限の筋トレ)』
効果:発動者、または相手の筋肉の鍛え方の成果によって、勝負に負けた相手が受ける筋肉神のような存在からの鉄槌の威力が変化する。
補足:発動者、または相手が勝負を捨てた場合、有無を言わさず勝負を捨てた側に鉄槌が下る。
勝負の内容は、発動者が決める。
普通に戦うも良し。
鉄槌が下った後、反動により固有結界そのものが解除される。
発動者である士郎の消耗が激しいため連続は使えない。
士郎とギルガメッシュの戦い(?)は、士郎の勝利で終わった……。
後書き
ギルガメッシュは、筋肉に美と力を見出せる価値観の持ち主っという設定にしました。
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