『魔術? そんなことより筋肉だ!』
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SS23 未来のため
前書き
決戦、少し前。
「…い。おい。」
「……むっ…。」
ギルガメッシュは、目を覚ました。
まず目に映ったのは、赤土色の短髪。
士郎だった。
「我は…。」
「お前の負けだ。ギルガメッシュ。」
「……そうか。我は貴様に負けたのだな。ふっ…、こうも清々しいのはどれぐらいぶりだろうな…。」
「浸ってるところ悪いが、言峰は、どこだ?」
「綺礼は……。っ!?」
「ギルガメッシュ?」
「き…綺礼め…!! この我を…!!」
次の瞬間、黄金の鎧を纏ったギルガメッシュ。そして空間が歪み、凄まじい数の武器が出現した。
ギルガメッシュは、耐えるように歯を食いしばる。
武器の矛先は全てギルガメッシュに向けられていた。
「ふ…、フハハハハ、これが我の最後となるか…。セイバー、笑うがいい…。」
「英雄王!」
「貴様の純血を味わえなかったことがせめてもと心残りよ……。綺礼は、柳洞寺なる、霊脈の集まる場所にいる。…さらばだ。」
「ギルガメッシュ!!」
そして幾多の武器が、ギルガメッシュの全身を貫いた。
幾多の逸話を持つ伝説の武器に心臓を貫かれ、ガクンッと地面に縫い付けられたギルガメッシュの身体が、武器と共にやがて光となって消えた。
そして…。
「空が!」
「まさか…、ギルガメッシュの魂を受け止めて、聖杯が完成したの!?」
空が不気味に歪み、黒い孔が開いたのを見て、士郎達は愕然とした。
「なるほど…。奴も腐っても英霊。綺礼にしてみれば、我々を討とうが、ギルガメッシュが倒れようがどちらでもよかったのだ。」
ようやく復帰したアーチャーがそう言った。
「もしかして…、監督役の権限である、予備令呪を使って重ねがけしてギルガメッシュを自害させたのかしら?」
「おそらく、そうだろうな。あれほど我が強い英霊だ。それだけしないと言うことを聞かせられんだろう。」
「予備令呪?」
「監督役の教会には、戦いを放棄したりして自分から脱落したとかで回収された令呪が伝わっているのよ。つまり、三回以上の令呪を常に持ち歩いていると考えていいわ。そういう令呪を、何かあった時とかにその時の聖杯戦争で他のマスターに配布したりもするの。」
「それ結構反則じゃないか?」
「それを言っちゃ、監督役じゃないわよ。そういう権限があるから、教会は偉かったの。」
「けど、今、その教会の奴が悪いことをしようとしてるんだぜ?」
「……このことは、生きて帰ったら、正式に魔術教会と、聖堂教会に通達するわ。」
凛は、そう言うと、空に空いた孔を睨んだ。
「きっと、あの孔の真下ね。」
「たしか、柳洞寺って……。」
「前にキャスターと戦ったところね。」
「行くんですか?」
桜が立ち上がって言った。
「ああ。」
「……必ず…、帰ってきてください。」
「もちろんだ。」
「先輩…。」
「桜…。」
「……。」
「…止めないのか?」
いつもこういう時には止めに入ってくる凛が動かないので、思わず士郎が聞いてしまった。
「バカね。こんな時に止めるほど人でなしじゃないわよ。で? 後悔の無いようにしないの?」
「いや…今更ながら人目があると気になるもんだな…。」
「今まで人目を気にしなかったバカップルが言う台詞?」
「……すまん。」
「今更謝るな。」
「時間も無いのだ。さっさとしろ。」
アーチャーが急かした。
「えっ…あ、…う…、さ、桜!」
「は、はひぃ!」
緊張のあまり噛んだ桜。
「……この戦いが終わったら…、いや、高校を卒業したら…、結婚しよう。」
「…………………………はい!」
桜はたっぷり間を置いて、涙ぐみつつ、これ以上ない笑顔で返事をした。
「……いいのか? 凛。」
「……………………誰が…。」
凛の背後にゴゴゴゴッ…っという音と共に黒いオーラが出始めているように見えた。
「誰が、プロポーズしろって言ったのよおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「なんだよ! やっぱり、怒るんじゃねぇかよ!」
「それとこれとは話が別うううううう!!」
「やはりこうなりますか…。」
「いや、この方がいつも通りでいいかもな。」
セイバーがため息を吐き、アーチャーが腕組みして頷いていた。
怒った凛に追いかけ回される士郎。桜は、そんな二人を見ていても、士郎からのプロポーズに酔いしれてほわ~っとなっていた。
***
空に空いた、黒い孔。
その真下にあるのは、柳洞寺。
冬木の霊脈が集まる場所のひとつであるこの場所は、今や神聖な空気などどこへやら。
山は不気味に胎動しているように見え、まるで山そのものが生き物のような空気をはらんでいた。
「これは…。」
「完全にヤバいわね。」
「しかし、行くしかありません。」
「分かってるわよ、セイバー。今更引き返すことなんてしないわ。」
凛がキリッと表情を引き締め、そう力強く言った。
「! セイバー!」
「えっ?」
次の瞬間、アーチャーが反応し、セイバーの前に腕を伸ばした。
その瞬間、ズバッとアーチャーの腕の一部が抉れた。
「アーチャー!」
「チッ……、よくぞ気づいた。」
「誰だ! 姿を見せろ!」
「我は…、アサシン。」
「アサシン!? けど、声が…。」
「我は、…真なるアサシンなり。」
木の上に、長く伸びた腕をヒラヒラと揺らしている白い仮面を付けた黒い人物がいた。
「ハサン・サッバーハね!」
凛がその正体を看破した。
「その心臓…もらい受ける。妄想心音。」
その瞬間、長く伸びた右腕が見えない速度で伸びてきた。
「ふっ!」
アーチャーが、双剣を手にそれを弾いた。
「アーチャー!」
「行け! こいつは私が相手をする!」
「ほう…、我が宝具の速度に適応するとは…。なかなかの使い手とみた。」
「不本意だが、俊敏性が大幅に上がっているのでな。」
「頼んだぞ、アーチャー!」
士郎達は、アーチャーを残し石階段を駆け上がっていった。
***
石階段を登った先で、待ち受けていたモノは……。信じがたいモノだった。
「嘘でしょ…?」
「ライダー…、ランサー…。」
しかし待ち構えていた二人は答えない。
その身体には、黒い筋のような赤っぽい光も纏っており、血管を思わせる筋が全身に走っていた。そしてその目には正気の色がない。
「これが……聖杯の力?」
『これは、オマケだよ、凛。』
「綺礼!? どこにいるの!」
『彼らは、聖杯からこぼれ落ちた膨大な魔力から再構成し直しただけの存在に過ぎん。だが…、魔力の供給元は聖杯だ。ゆえに魔力は無限…。どうかね? 君も仲間入りする気はないかね、セイバー。』
「彼らにこのような仕打ちをして…!! 許しません!」
『ふふふ…。だが君だけで、彼らを倒せるかね?』
「ふざけるなよ!!」
『そうか、君がいたね。衛宮士郎。だが相手は聖杯の魔力の塊。何度でも蘇らせられる。つまり…。』
「聖杯さえ破壊すれば、消せるってことよね!」
「遠坂、セイバー! 行け!」
「いいえ! 行くのは、あんたよ、士郎!」
「でも…。」
「綺礼ほどの使い手には、あんたが相手をするのが一番よ!」
「彼らの足止めにとどめ、聖杯を破壊するだけの力を残しておきます! 行ってください!」
「……分かった! 死ぬなよ!」
「誰に向かって言ってるのよ?」
士郎の言葉に、凛は不敵に笑った。
そして士郎が走って行くのを、黒化したライダーとランサーが止めようと襲いかかろうとしたが、それをセイバーが剣で、凛が魔力の弾を飛ばして止めた。
「邪魔はさせないわ!」
「行きます!」
それぞれの戦いが始まった。
後書き
真アサシンと、黒化キャラ登場。
でも登場はここだけ。
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