『魔術? そんなことより筋肉だ!』
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
SS14 アーチャーの離反
前書き
タイトル通りです。
グチャグチャになった家の中を片付けながら、士郎と桜とライダーは、これからのことを話し合った。
凛は、凛で、アーチャーと共にキャスター討伐を考え、一旦家に帰っていった。
「間桐の魔術書を解読すれば…、もしかしたら令呪を剥がす方法が見つかるかもしれません。」
「その間に、セイバーが消えたら意味はないけどな…。それに解読たって、俺は魔術書の読み方を知らないし…。」
「あ…、ごめんなさい…。」
「謝るなよ。それも良い考えだと思うから、頭の隅に置いとくよ。」
「気がかりですね…。」
「なにが?」
「アーチャーのことです。」
「アーチャーが?」
「彼…何か嫌なことを考えていなければ良いのですが…。」
「それは、同じサーヴァントとしての直感か?」
「ええ。」
「ライダー。おまえがキャスターに勝てる確率ってどれくらいだ?」
「正直…セイバーが向こうにいる以上、かなり厳しいですね。」
「じゃあ、先輩が戦いに加わったら?」
「100%勝てます。」
「なんでさ。」
キッパリと言うライダーに、思わずそう言ってしまった士郎だった。
「キャスターは、筋肉マッチョが嫌いみたいなので、うまく筋肉を見せびらかせば、消耗を誘えるかと…。」
「ですが、相手は魔術師のクラスよ? とんでもない大きな魔術を使われたら……。」
「その分隙も大きくなるでしょう。その瞬間を狙えば、私が……。」
「いや、俺もやる。」
「先輩、でも…。」
「あの時、逃がさなければ、令呪を奪い返せたかもしれないんだ。それに…、あの武器が気になる。」
「セイバーさんを刺して、令呪を取った、あの変なナイフですか?」
「そうだ。確かルールブレイカーとか言ってたな。あれを……奪えば、もしかしたら…。」
「ですが、アレは、おそらく宝具である可能性が高いですよ。」
「つまり?」
「宝具は、使い手にしか使えませんから。」
「ダメか……。」
良い考えだと思ったんだが…っと士郎は頭を捻った。
「……あー、もうここで考えてても仕方ない!」
「どうするんですか?」
「先手必勝だ! キャスターのねぐらに殴り込むぞ!」
「柳洞寺ですね!」
「分かりました。」
そして、士郎達は、柳洞寺へ向かった。
***
柳洞寺に向かうと、何やら様子がおかしいことに気づいた。
「これは…?」
「もしかして…姉さんがもう?」
「急ぐぞ!」
「はい!」
士郎達は、柳洞寺の石階段を駆け上がった。
「止まれ。」
「アサシン!」
「……このまま行くつもりか?」
「ああ。セイバーを取り戻す。」
「そうか…。ならば、行け。」
「おまえ…。」
「私は、お前に負けた。ならば道を空けるのが通り。さあ、早く行け。遠坂の魔術師がすでに行っている。」
「遠坂が…。分かった、サンキュ。」
「ご武運を。」
士郎達は、アサシンの横を通り過ぎ、柳洞寺の境内に入った。
寺は恐ろしく静まりかえっており、境内の一部が壊れていた。
「この匂い…、バーサーカーか?」
「もしかして、バーサーカーが攻めてきたんでしょうか?」
「なるほど、だからセイバーを奪ったのか…。バーサーカーをぶっ倒すための戦力を手に入れるために…。」
「どうします?」
その時、山の中で、ドカンッ!っという音が聞こえた。
「あっちだ!」
士郎達は急いだ。
***
士郎達が駆けつけた現場では、キャスターがセイバーを使って凛とアーチャーと戦っていた。
「キャスター!!」
「チッ! 小次郎め…何をしていたのですか…。」
「アイツを責めないでやってくれよ。悪いの勝った俺なんだからな。」
「来るんじゃないわよ!」
士郎が近づこうとするとキャスターが威嚇してきた。
「よっぽど士郎がイヤなのね? ならこっちのものよ。」
「……。」
「…アーチャー?」
「キャスター。物は相談だ。」
「なにかしら?」
するとアーチャーが双剣を下ろして、凛の傍から前へ踏み出した。
「アーチャー!? なにをしてるの!?」
「魔力の空きはまだあるか?」
「あら? もしかして私の下に来たいのかしら?」
「ああ。おまえに従うのはしゃくだが、私には私の目的を達せするために確実な方を選ぶ。」
「アーチャー!?」
「……すまないな。凛。」
キャスターの前に来たアーチャーを、キャスターがルールブレイカーで、刺した。
「っ…!」
凛の腕に痛みが走り、令呪が奪われた。
そして、アーチャーは、剣の先を士郎に向けた。
「目的は、俺か。」
「そうだ。初めからな。」
「俺は別にあんたに怨みを買うようなことはしてないけどな?」
「恨むのなら、エミヤシロウとして生まれたことを恨め。」
「そんな、無茶な…。」
「姉さん、下がって! ライダー!」
「はい。桜。」
「この…、馬鹿サーヴァント!」
凛は、アーチャーを睨んで叫んだ。
「ホホホ…。この布陣を、ライダーひとりで突破できると?」
「俺を忘れてないか? セイバーのみならず、アーチャーまで…!」
「ひっ! セイバー、アーチャー! アイツを殺しなさい!!」
「承知した。」
「っ…し、ろう…。」
リミッター解除をして筋肉を膨張させた士郎に恐れをなしたキャスターが、アーチャーとセイバーに命じた。
二人が襲いかかってくる。
「ふんっ!」
二人の武器が筋肉で弾かれる。
「くっ、なんという強度だ! デタラメ筋肉め!!」
「シロウ…逃げて……。」
「歯ぁ…、食いしばれよ?」
「ハッ!?」
次の瞬間、アーチャーの横っ面に、士郎の拳がめり込み、アーチャーの身体が遙か彼方へ吹っ飛んでいった。
「ひぃ! ひぃ! ひぃぃぃいい!!」
キャスターは、アーチャーがいなくなったことで、ひきつけを起こしながら悲鳴を上げた。
「セイバー…。」
「シロウ…。」
「セイバー! 宝具を!」
「隙がでけぇんだよ!!」
「す、ストライク・エア!!」
「っ!!」
突風の一撃が士郎の胴体を襲い、数メートル後ろへと飛ばされた。
しかし士郎はすぐに体勢を整え、立ち直る。しかし無傷。
その直後、アーチャーの剣が、数本、矢のような速度で飛んできた。
『ブロークン・ファンタズム』
そういう詠唱がどこからか聞こえた直後、士郎の目の前でその数本の剣が大爆発した。
「せんぱーーーーい!!」
「シローーーウ!!」
桜とセイバーが叫んだ。
「ほ…ホホホ…、まさかこんな手をアイツ…持ってたなんて…。勝った…勝ったわ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「えっ?」
爆発による煙の中を、士郎が飛び出してきた。
あちこち焦げ、頭から血を僅かに垂らしていて、無傷とは言いがたいが、ほとんど怪我をしていない。
一瞬ぼう然としたキャスターに向け、士郎が拳を振りかぶろうとした。
しかし、キャスターの身体を、庇い、一緒に転がって士郎の拳から逃れた人物がいた。
「葛木!」
「宗一郎様!」
「逃げるぞ、キャスター。」
「は、はい!」
葛木が冷静な声でそういうと、キャスターが杖を振って、凄まじい光を放ち、セイバーと共に消えた。おそらく遠くに吹っ飛ばされたアーチャーもいないだろう。
「くっそおおおおおおおおおおおおお!!」
「先輩…。」
悔しさに地面を殴る士郎。
アーチャーの離反による、士郎達の敗北だった。
後書き
無敵に見える士郎も、無敵では無いことを示すため、怪我させました。
『魔法?そんなことより筋肉だ!』のユーリも、死神という殺人鬼相手に怪我してますので…。
ページ上へ戻る