提督はBarにいる。
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鎮守府のバレンタイン事情~オムニバス編・2019~
前書き
バレンタインネタです。ショートなネタを詰め込んでみました。甘いのからゲロ甘いのまで取り揃えてます。辛いものや苦い物をお供にどうぞ(*´∀`)つ旦
~秋雲の場合~
「壁ドンやってみて欲しいだぁ?」
「うん、そうそう」
いきなり秋雲の奴に呼び出されたと思ったら、そんな事をお願いされた。
「いや~、今度のイベントに出す新刊の主人公を『俺様系肉食イケメン』にしようと思っててさぁ、その参考資料にね?」
「あのなぁ、だったら俺じゃなくてもいいだろうが」
「ホラ、そこは提督もかなりのスケコマシだからそういうフェロモン的なリアリティが、ね?」
「スケコマシ言うな」
「それにホラぁ、ちゃ~んと報酬も用意してるんだよ?」
秋雲のその手には綺麗にラッピングされた箱がある。
「〇ディバじゃねぇか!……あぁ、もうすぐバレンタインだもんな。ブランデーのツマミとかに良いんだよな」
「でしょ~?だからホラ、ちょちょいっとさ」
※以下、『』は秋雲さんの心の声です。
ハァ……と溜め息を1つ。ま、減るモンでも無し1回やるだけでゴディ〇1箱なら安いもんだろ。
「秋雲ァ!」
「ひょえっ!?」
大声を出して威嚇一発、それと同時に壁ドンして顔を秋雲の顔に近付ける。
『うえぇ!?近い近い、顔近いってえぇぇ!……あ、結構顔の彫り深いんだ~……ってそうじゃなくてぇぇ』
口を秋雲の耳許に寄せて、囁く。
「秋雲、あんまり男をからかうモンじゃねぇぞ?」
『あ、ヤバイ、耳に吐息が当たって擽ったいけどちょっとキモチイイ……かも』
「男なんざ性欲の塊だ、あんまり思わせぶりな態度取ってると、その内痛い目見るぞ」
『せ、性欲の塊……ゴクリ』
「それとも、俺に喰われたいのかな?」
サービスだ、顎クイもやってやろう。
『あ~これもう完全にキスされる流れの奴じゃん!喰われちゃう奴じゃん!あぁ、もう好きにしてぇ~……』
どんどん近付く2人の顔。唇が触れ合う寸前……
「ま、こんなもんだろ」
「あふぇ?にゃ、にゃにがぁ~……?」
「十分参考になったろ?そんじゃコレは貰っとくぜ、毎度ありぃ♪」
俺は秋雲が持っていた箱をひょいと取り上げると、さっさとその場を離れる。あんな所、誰かに見られてたらヤバイしな。
ーー提督が去った後。
「あ~……腰抜けたぁ」
ズルズルと壁に背中を擦り付けながら、その場にへたりこむ秋雲。
「でも何となく、提督がモテる秘密が解った気がしたよぉ」
あんな事が自然と出来る人がモテないハズがない。しかも、仕事も出来るし見た目は怖いけど紳士だし、ちょっとスケベだけどダーティな雰囲気もあって……あれ?
「こりゃあ……秋雲さんもヤキが回ったかな~?」
その後、秋雲が出した新刊の主人公が、ワイルドな中年オヤジに変わったとか、変わらなかったとか。
~グラーフの場合~※グラーフ視点のお話です。
角砂糖をブランデーに浸す。たっぷりと吸って琥珀色に染まったら取り出し、砂糖に吸わせて残ったブランデーはカップに半分ずつ入れる。『あの人』はお酒が好きだから、私の分よりも多めに。
スプーンに角砂糖を乗せて、火を点ける。火が点いている内にカップにいれて、中のブランデーにも引火させる。1分程かき混ぜながら、砂糖を溶かしながらアルコールを飛ばす。砂糖が熔けてカラメルの香りがしてきたら頃合いだ。
予め淹れておいたコーヒーを注いで火を消し、軽くかき混ぜる。上にホイップクリームを乗せて、仕上げに細かく削ったチョコレートを散らせば完成だ。冷めない内に届けよう。
「アトミラール、コーヒーが入った。休憩にしよう」
そう、私の愛しい『提督』の下へ。
「お?今日のコーヒーはいつもとカップが違うな。それに香りも……」
「ふふ、今日は特別だ」
今日は2月14日、バレンタインデーだ。ドイツでは男性が女性に贈り物をするが、日本では女性が意中の男性にチョコレートを贈る日らしい。私も提督に作って贈る事を考えたのだが、いかんせん私はあまり料理が得意ではない。なので、前に褒められたコーヒーを贈り物の代わりにしよう、と考えた。
「……へぇ、『リューデス・ハイマー・カフェ』か。中々凝った淹れ方をしたんだな?」
「きょ、今日はバレンタインデーだからなっ。だが、私はあまり料理が……」
今日の秘書艦当番だったハツユキに頼み込んで、何とか譲ってもらったのだ。そのせいで秘蔵のワインが1本犠牲になったが、文句は言うまい。
※忘れ去られてるだろうけど、この鎮守府の初雪ちゃんはものっそい飲兵衛なのだ!(by作者)
「成る程、バレンタインのチョコの代わりに美味いコーヒーを淹れてくれたって訳か」
「わ、私だって料理が出来たらチョコレートを渡したいとは……思うの、だが」
「いいさ。あいつは『紅茶党のワタシがコーヒー淹れてあげてるだけ感謝するネー』とか言って、こんなコーヒーは淹れてはくれないからな」
この人は事あるごとに『本妻』であるコンゴウとの話をする。“ノロケバナシ”という奴らしい。それを聞く度に胸の奥に針が刺さったような痛みが走るが、これは嫉妬なのだろう。目の前のこの人が私は堪らなく好きだが、彼の一番は私ではない。
「そうか……なら、気が向いたらまた違う淹れ方でコーヒーを淹れよう」
「本当か?期待しちゃうぜ俺ぁ」
それでもいい。それでいい。だってーー……
「Ich brauche dich, weil ich dich liebe.」
「ん?今何て言ったんだ?ドイツ語はあんまり得意じゃなくてな……」
「……何でもない///」
思わず赤くなった顔をトレーで隠す。顔が熱いのはブランデーを入れすぎた訳ではないだろう。思わず呟いてしまった言葉が恥ずかしくなった訳でもない。本当に私は何番目でもいいんだ。だって、
私にとっての一番は、揺るがないのだから。
~朝潮の場合~
「司令官、いらっしゃいますか!」
「おぉ、どうした朝潮?何か緊急の用事か?」
「いえ、今日はバレンタインデーですので、チョコをプレゼントに来ました!」
午後の演習も終わった頃、朝潮がそんな事を言いながらやって来た。執務室には今、俺一人だ。
「それでですね……あの」
「ん、何だ?」
「し、司令官!私と○ッキーゲームしてください!」
「ファっ!?」
ビックリしすぎて変な声が出た。見れば、朝潮の手には見覚えのある細長い箱。
「朝潮、お前ポッ○ーゲームがどういうもんか解ってるのか?」
「いえ……ただ、司令官は絶対知っているハズだから優しく教えてもらいなさいと言われて」
誰だそんなGJ……いやいや、けしからん事をしたのは。あの朝潮だぞ!?純粋と天然を絵に描いたような朝潮だぞ!?下手すりゃ真実を知ったら泣くまであるぞ!
「……誰に聞いた」
「い、言えませんっ」
「なら、教えることは出来ん」
「司令官……朝潮は、ポッキー○ームはお互いの理解を深め合う事の出来るゲームだと聞きました」
朝潮の大きな瞳に、涙が溜まっていく。
「司令官は……朝潮とは、仲良く、なりたく、無いのですか?」
あっ、コレあかん奴や。断ったら断ったで朝潮の心に疵残しちゃう奴や……えぇい、男は度胸!ケンペイ=サンに捕まったらその時はその時。潔く死んでやらぁ!(錯乱)
「わかった。……朝潮、ポッキーの端を咥えて前に突きだせ」
「んっ……こう、れひゅか?」
「……動くなよ?」
俺は朝潮の顔にそっと両手を添えて、ホールドする。と同時にポッ○ーの端からサクサクと食べ始める。
「! !? ~~~~っ////」
カッ、と目を見開いて驚いた様子の朝潮。みるみる内に赤くなっていき、身体はジタバタと暴れているが、顔は動かせない。段々とお互いの顔が近付き、そして……
「おっふ!?」
朝潮の右拳が、俺の鳩尾に突き刺さった。
「し、し、し、失礼しましたぁ~~~~~~っ!」
ソーラー・プレキサス・ブロー……上手くクリーンヒットさせれば一撃で呼吸困難にさえ出来るボディブロー。み、見事だ……。俺はそこで意識を手放した。
後日、半べその朝潮が謝りに来た。あれは俺も悪ノリが過ぎたし、お互い水に長そうという事になった。ただし、朝潮にいらん事を吹き込んだ荒潮には後日、お仕置きの予定である。
~比叡の場合~※戦艦『比叡』発見おめでとう!の思いを込めて……
「いやぁ、そりゃ災難でしたねぇ司令」
「全くだ。マジで死ぬかと思ったぞ、ったく……」
時刻は午後の10時を回った頃。場所は『Bar Admiral』店内。ただし、今日は店は休み。執務中に俺が倒れたという事で、大事を取って休みにした。そこに比叡の奴が『お願い』に来たんだ。
「しっかし、以外とモテるんだなぁお前」
「あ~!それは失礼じゃないですかねぇ!?司令」
後輩の娘達からチョコをもらったのでお返しを作って渡したい、という何とも乙女なお願いじゃあ断りきれまい。着任当初なら『死人を出す気か』と必死になって止める所だが、ウチの比叡は絶え間ない努力のお陰で変なアレンジさえしなければバイオテロを引き起こす事は無くなった。相当頑張った俺を自分で褒めてやりたいね、ウン。
「何をウンウン頷いてるんですか?司令」
「何でもねぇよ。それより、材料は全部溶けたのか?」
「バッチリです!」
「ならよし」
ちなみに、今比叡が作ってるのはマシュマロを使ったお手軽チョコムースだ。
《材料4つで簡単美味しいチョコムース!》※分量4個分
・板チョコ(市販のでOK):50g
・マシュマロ:80g
・牛乳:200cc
・純ココア:大さじ1~
・苺(トッピング用):お好みで
作り方は簡単だ。チョコを粗く刻んだら、鍋に牛乳を入れて火にかける。弱火で温めながら刻んだチョコ、マシュマロを入れたら茶漉し等でココアをふるって入れる。後は全部の材料を焦がさないように溶かして、容器に入れて冷蔵庫で冷やし固めるだけ。マシュマロにゼラチンが入っているからこそ出来る簡単レシピだな。
「……うっし、後は冷やすだけだ」
「本当に簡単でしたねぇ」
「にしても、お前は女にモテる前に男にモテる努力をしろよ」
「……え、しませんよ?」
きょとん、とした表情でサラリと言ってのける比叡。
「なんでだよ」
「決まってるじゃないですか!私も、お姉さまも、榛名だって!提督がだ~い好きなんですから!」
恥ずかしげもなくそんな事を言ってのける比叡の不意打ちで、思わず顔が赤くなったのがわかる。
「あっれあれ~?もしかして、照れちゃってますぅ?」
「うるせぇバカ!とっとと寝ろ////」
比叡を追い出し、ハァと溜め息を吐く。
「まったく……姉妹揃って美人なんだからよ、自覚しろよな////」
思わずグッと来た、なんてのは口が裂けたって言わねぇけどな。
後書き
いかがでしたでしょうか?本当は3人目の朝潮ちゃんで終わる予定だったのですが、戦艦『比叡』発見の報を聞いて、思わず比叡編を追加致しました。
でも今回はグラーフがMVPでしょうか、破壊力パないです。思わず2隻目のグラーフも育てなきゃ(使命感)と思いました。ドイツ語の意味は是非自分で調べてみて下さい、グラーフの乙女っぷりを再確認して、砂糖を吐くか壁を殴りたくなりますw
さて、バレンタインネタを投稿したという事で毎年恒例の『アレ』も準備しております!アンケートの方にも是非!(^ω^)ノシ
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