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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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エルフの里

<エルフの隠れ里付近の森>

「なぁ…俺達…迷ってないか!?」
ウルフが額に流れる汗を拭いながら尋ねる。
「大丈夫、迷ってないよ。僕達は美女の群れに近付いてるよ」
「本当かよ!何だか同じ所をグルグル回ってる気がするけど!?」
「本当本当!だんだん美女の匂いが強くなってるからね!」
「…なんだよ、それ………じゃぁ、その匂いを辿ってみてよ…もう疲れた…」
リュカの言い分に、心身共に疲れ切ったウルフが、やけくそ気味に嫌味を言う。
「ようし!任せなさ~い!!」
だがリュカは、気にしないどころか率先して森の奥へ勝手に進んで行く。
置いてかれる訳にはいかないアルル達も、慌ててリュカの後について行く。



<エルフの隠れ里>

どんどん進むリュカの後を、見失わない様について行くと、急に拓けた場所へと出る事が出来た!
「………本当に着いちゃった…」
「だから言ったろ!美女の匂いがするって!」
「何だよ、美女の匂いって!?どんなんだよ!」
「そりゃアレだよ!美人~って感じの匂いだよ!」
リュカの説明になってない説明で、ウルフはより混乱する…
そんな男二人を無視して、アルル達は村内へと入って行く…そこは…
「ほ、ホンマに美女だらけやん…」
エコナが感嘆の溜息を吐く程、エルフは美人しか存在していない…

近くに居たエルフがアルル達の事に気が付いた。
「キャー!!人間よー!!攫われてしまうわー!!!」
エルフの少女が悲鳴を上げて腰を抜かす。

「攫ったりしないよ。触ったりはするかもしれないけど」
リュカは腰を抜かした少女エルフに近付き、優しく立たせてながら話す。
周囲を見渡すと、他のエルフ達は皆逃げてしまった様で、村内を静寂が包んでいる。
立たせてもらった少女エルフも、慌ててその場から逃げ出してしまった…

「やれやれ…『人間より強大な魔力を有する恐ろしい存在』ね…人間見ただけで、ビビって逃げ出しちゃったけど…どうなの?」
この世界の常識で生きてきたアルル達には、リュカの言い様には反感を憶えてしまう。
しかし、現実を垣間見てしまった為、反論する事も出来ない。
ただ、
「そう…言われ続けてたんだよ!」
と、子供じみた言い訳しか出来ないでいる。
「ま、いいや…そんな事より、女王様を捜しましょうか。一番でっかい建物に居るのがそうだよ。きっと…」


村内の一番大きな建物の前まで辿り着いたアルル達。
門には10人の戦士風エルフが、剣を構えて進入を阻んでいる。
「あ!間違いなく此処にお偉いさんが居るよ!」

リュカは誰が見ても分かる事を言いながら、戦士エルフ達に近付いて行く。
「ちょっと女王様にお話があるから、退いてくれない?」
「人間が何の様だ!?」
戦士エルフのリーダー格の美女が、リュカの喉元に剣を這わせ言い放つ。

「あれ?君が女王様?」
隊長エルフの瞳を真っ直ぐ見つめながら話すリュカ。
「ち、違う!み、見れば分かるだろう…女王様はこの奥にいらっしゃる」
リュカに見つめられ、顔を真っ赤にする隊長エルフ。

「僕達、女王様に大切なお話があって来たんだ。お願いだよ、お目通りをさせてくれないかなぁ?個人的には君ともお話をしたいんだけどね…」
喉元に剣が這ってる事を気にもせず、隊長エルフの腰を抱き寄せ瞳を近付ける。
隊長エルフはどうする事も出来ないでいる…剣で喉を切り裂く事も、押しのけて逃げ出す事も、大声で助けを呼ぶ事も…ただリュカの瞳に心を奪われる…一人の女でしかない。

『人間達よ…入室を許可します…』
何処からともなく声が響く。
「………どうぞ…お通り下さい………ただ、女王様に無礼な事はするでないぞ!!」
女王の声を聞いた隊長エルフは、リュカの喉元に這わせてあった剣を放し、通行を促す。

「ありがとう。君、名前は?」
優しく尋ねるリュカ。
「わ、私は…カリーだ…」
思わず答えるカリー…リュカの瞳から目を離す事が出来ないでいる。
「うん。僕は、リュカ。よろしくね」
そう言うと、カリーの頬へ優しくキスをするリュカ。
最早、ただの恋する乙女であるカリーを尻目に、女王の元へと歩み出すアルル達。
カリーはこの先どうなるのだろうか…


アルル達は謁見の間の様な空間に辿り着く。
間の前には玉座に座る美しきエルフが一人…
「貴女が女王様でしょうか?」
「如何にも…私がエルフの女王です。………して、人間…何用で此処まで参った?私達は、人間なんぞとは関わり合いになりたくない!サッサと出て行ってほしいのだが…」
不機嫌な表情の女王は不機嫌な口調で吐き捨てる。

「此処より東に位置する、ノアニールと言う村の呪いを解いて頂きたく、お願いに参りました。」
アルルは可能な限り恭しく嘆願する。
「ならぬ!その村の男は我が娘を誑かし、エルフの秘宝『夢見るルビー』を盗ませた!断じて許す事は出来ぬ!」
「夢見るルビー!?そんな事は一言も言ってなかったな?あのジジイ…」
「あの…私達はノアニールの村人に…難を逃れた村人に頼まれただけなんです…些か情報不足ですので、何が起きたのかをお教え頂けないでしょうか?」
「主等に教えて何になる?娘を連れ戻せるのか?」
「はい。可能な限り尽力致します。」

「………………」
目を瞑り考えるエルフの女王…
「いいでしょう…」
エルフの女王は静かに目を開くと、10年前に起きた出来事を静かに語り出した。



エルフの女王の娘『アン』は、ある日森に迷い込んだ人間の青年に惚れてしまい、毎日の様に村を抜け出し、人間の青年と逢い引きをする様になる。
その事に気付いた女王はアンに『二度と人間の青年と会う事は許さぬ』と言われ、悲観に暮れてしまった。
しかしアンは、エルフの秘宝を持ち出し、村から出て行ってしまった。

「………質問が一つ」
女王が話し終わるとリュカが手を上げ質問をする。
「何か…?」
「何故、娘の恋路に反対したんですか?」

「人間なんぞ粗野で度し難い生き物!そんな生物との愛など許せる訳がないであろう!」
「それはエルフ族の総意?」
「そうです!エルフ族は人間と違い、同族同士で啀み合い殺し合うなどと言う事はしない!比べものにならぬ程高等な存在です!」

「つまりアンタは、母親であることより、女王である事を選んだ訳だ。見た目美人だが、最低なブスだな!」
リュカは苦々しく言い放ち、唾を吐き捨てた。
「な、何だと…」
エルフの女王は怒りに体を震わせる。

「アンタの娘だって人間という存在については聞いていただろう。それでも人間に恋をしてしまったんだ!だがアンタは、その人間がどういう人物か知ろうともしてない。もし娘の幸せを願うのなら、娘の恋の手助けをしても良かった!『人間』という全てではなく、その『人間の青年』個人の事を調べ、娘を幸せにする事が出来るか確認すれば良かったんだ。反対するのはその後でも間に合う。」
「そ、それは…しかし、人間は多くの残虐行為を行ってきた歴史がある!」

「それは全人類が行った行為ではない!過去の…極めて少数の人々が犯した過ちだ!じゃぁ聞くが…今まさに産まれたばかりの赤ん坊が居るとする。その子は極悪人か!?」
「………いや…違う……だが、何れ悪事を働くかもしれない!」
「じゃぁ、その赤ん坊がこの村に迷い込んだらどうする?殺すか?言っておくが、赤ん坊を村から追い出したらすぐに死ぬぞ。殺したと同じ事だぞ!」
「産まれたばかりの赤子ならば、我らの手で育てる。赤子に罪はない!」

「では、その子が成長しアンタの娘と恋に落ちたらどうする?人間だから反対するか?何れ大悪人になるかもしれないから拒絶するか?」
「我らが育てなのだ!悪事を起こす訳がない!反対などせん!!」
エルフの女王は立ち上がり、リュカをきつく睨み付ける。

「その通りだ!育ってきた環境によって人間は変わる。優しい人に他人には優しくするようにと言われ育ったのなら、他者を傷つける様な事はしない人物になる。その青年だってそうかもしれないだろう!それを調べもしないで決めつけた!エルフの女王という立場だから、娘が人間と仲良くする事を許す訳にいかなかったんだ!アンタは娘より、自分が大切だったんだ!」
リュカの言葉に力無く腰を下ろす女王…

「……貴様に…何が…分かる…」
「分かるさ!僕にも娘が居る。もう嫁いでしまったけど…初めて僕の前に彼氏を連れてきた時は、ぶん殴ってやろうかと思ったけど、娘が…ポピーが悲しむからやめた。でも、やっぱり腹立つからね、ちょっと嫌がらせをしてやったんだ。そしたら、その男真に受けちゃってね…本当に危険な地域に赴いて、魔族を倒して来ちゃったんだ。そして娘との仲を認めて貰う為ならって、僕にまで攻撃してきた…これ程ポピーの事愛してるなら、これ以上反対できないでしょう…結婚式では凄く幸せそうだったよ」
リュカは嬉しそうに娘の事を語る。
それを見た女王に言葉は無い…
ただ俯き、出て行くようにと手で合図する

エルフの宮殿を後にしたアルル達は、エルフの隠れ里の出口を目指し歩き出す。
「リュカさんの娘さんて、もう結婚してたんだ」
「何だウルフ?僕の娘を狙ってるのか?まだ居るぞ!」
「別にそんなんじゃないよ!ただ、どんな人なのかなと思って…」
「うん。外見は母親似でものっそい美人だよ。性格は僕に似てるってよく言われる。あそこまではっちゃけてはいないつもりだけどなぁ…」
アルル達は想像をして震え上がった…
リュカの様な性格の女が居る事に…
そんな女の存在に…



 
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