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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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ノアニール

<ノアニール>

「ここがノアニール…」
溜息を吐き周囲を見渡すアルル。
人々の生活が途絶え、草木が鬱そうと生い茂る村…
その村の各所に横たわり眠り続ける人々…

「何故…こんな事に…?」
「なぁ…ここにいたら俺達も目覚めなくならないのか?」
「それは大丈夫じゃ!」
ウルフの疑問に答えたのは、一人の年老いた男性だった。

「儂は皆が眠りについてから10年間、この村で生活をしておるが、呪いの影響を受けた事はない」
「あ、貴方は?…どうして貴方は呪いにかからなかったのです?」
「うむ。儂はイノック。生まれも育ちもこの村じゃ…儂が呪いにかからなかったのは、村に呪いがかかった時にちょうど居なかったんじゃ…家出した息子を捜す為、村の外に出ておった…」

イノック老人は切々と語る。
エルフの姫と恋に落ちてしまった息子ノイル。
エルフの娘は、エルフの里を捨てノアニールに…ノイルの元にやって来た。
しかし村人はエルフの魔力を恐れ、迫害をした…
一緒に住んでいたイノック老人にも被害が及び、居たたまれず息子にエルフと別れる様説得。
しかしノイルは受け入れず、エルフの娘と共に村を出て行ってしまった…
当初は行く当てなど何処にもない息子の事だから、すぐに帰って来ると思っていたが、1週間たっても戻る気配がなく、心配になり近隣の村や町を探し回ったイノック老人。
2ヶ月探し回ったが消息すら掴めず、ひとまず村へ帰ると、この有様だった…

「どうか旅の方…エルフの隠れ里に行って、エルフの女王を説得してはくれませぬか…」
アルルに縋り付く老人。
「勝手な事言うな!!」
静かな村内にリュカの怒号が響き渡る!

「アンタ親だろ!息子が連れてきた彼女を認めないなんて…アンタが息子達を認め…応援してやれば、こんな事にはならなかったんじゃないのか!?」
「し、しかし…エルフですぞ!」
「それがどうした!エルフが何だ!種族の違いがどうした!!アンタは自分の事しか考えてない!他の村人に白い目で見られるのがイヤで、別れる様に言ったんだろ!息子の幸せなんて考えもせず、愛し合う二人を引き裂こうとしたんだ!」

「エ、エルフと人間で…し、幸せになど…」
「やってみなければ分からないだろ!アンタ、二人の馴れ初めを聞いた事あんのか?」
「…………」
答えようとしないイノック老人…

「ふん!やっぱり…二人がどれくらい愛し合っているか、どうして惹かれ合ったか知りもしないで…どうしてそれで、幸せになれないって言い切れるんだ!?」
「リュカさん…それくらいで…」
堪らずアルルが止めに入った。

「…確かに…不幸になるかもしれない…でも、自分たちで選んだ道だ!他人の言いなりで幸せになるよりも、自分で決断して不幸になった方が…」
「アンタに何が分かる…」
イノック老人が絞り出す様に呟く。

「分かるね!僕にも息子が居る!とても真面目な良い子だが、どこか抜けてる感がある息子だ。いつか、どっかのバカ女に騙される様な気がして、ワクワクしてるさ!でも絶対、『別れろ』なんて言わない…僕は息子を…ティミーを信じてる!アイツはきっと良い女を連れてくるって…」
リュカは嬉しそうに、自分の息子の事を語っている。
それをイノック老人は見る事が出来ない…自分の息子を信じる事が出来なかったから…



アルル達は村の宿屋を勝手に借りて、今後の事を話し合っている。
「取り敢えず…エルフの里に行ってみましょうか…」
「でも、会ってくれますかね?いきなり攻撃されませんかね?」
「それは分からないけど…でもこのまま、ほっとく訳にもいかないし…」
アルルの溜息混じりの提案に、リュカは何も言わない…
視線を向けても優しく微笑むだけ…

「あの…リュカさんは…この村を救うのに反対じゃないの?」
恐る恐るウルフが訪ねる。
「(クス)反対なんかしないよ。さっき怒ったのは、息子の幸せを考えていないジジイに対してだよ。まぁ…エルフを迫害した村人達にも、少しは腹が立つけど…誰しも自分たちと違う存在は怖いんだよ………でも、こっちの世界じゃエルフって怖い存在なの?」
「リュカさんの世界じゃ違うの?」
リュカとの価値観の違いに、少し戸惑うアルル。

「そうだよ!エルフだよ!人間より遙かに長生きで、とてつもない魔力を持っているんだよ!人間なんて一瞬で滅ぼしちゃうよ!」
ウルフは興奮気味にエルフについての風聞を披露する。
それは、この世界の人々が古くから言い伝えてきた事であり、何ら確証に基づくものではない。

「…でもウルフ……まだ滅ぼされてないよ。この村も…人間全ても…」
「それは…その…」
リュカは優しく微笑みながらウルフの頭を撫でる。

「そんな思いこみだけで敵対しないでさ、仲良くなる努力をしようよ。………エルフの里かぁ……楽しみだなぁ」
「?…リュカはん…何が楽しみなんや?ウチ、少しばかりビビッとるで!」
よく見るとアルルとハツキも、エルフへの恐怖で表情が若干引きつっている。
しかしリュカは気にすることなく語る。

「エルフってさぁ…美人が多いんだよねぇ。しかもエルフは男の子の出産率が低いんだって!まぁその分長寿でカバーしてるみたいだけど…」
「それの何が楽しみなの?」
「つまりだ、ウルフ君!そのエルフの里は美女だらけって事だよ!僕の知り合いのエルフも、頭は緩いけどすごい美人だもん!」

常人とは異なる思考回路でものを語るリュカ…
下手に手を出したが為に、物事が厄介にならないか、不安になる4人…
トラブルの予感は尽きません。




<ノアニールより西の森>

一行は翌早朝にノアニールを出発し、一路西へ…エルフの隠れ里を目指す。
大勢の美女に出会える事を期待するリュカは、一人ウキウキ気分で『恋のバカンス』を歌い、いつもの様に敵を呼び寄せる。

現れたのは『バリイドドック』と呼ばれる、犬のアンデットが4匹。
「あ!ワンコだ!…でも腐ってる。臭いがきついなぁ…」
素早く臨戦態勢に入るリュカ以外の4人。

しかし先制したのはバイリイドックだ!
バイリイドックが遠吠え!
アルル達の体が淡く光る…
「『ルカナン』だ!気を付けろ!」
何故だか動物の言葉が分かるリュカが、アルル達に注意を促す。
それを聞き、ウルフが『スクルト』を唱え、守備力を上昇させた。

「ナイス、ウルフ!じゃぁ私も、バギ!!」
しかしハツキのバギは効果が薄く、バイリイドックにダメージを与えられない。
「ギラ」
続いてアルルがギラを唱える。
真っ赤な炎がバイリイドック達を赤く包む。
1匹のバイリイドックが炎の中から飛び出し、アルルに襲いかかる!
「甘い!」
だが、アルルの遙か手前でエコナに鉄の槍で突かれ絶命した。


ひとまず戦闘も終わり、再度エルフの隠れ里へと足を進める一行。
ハツキが落ち込んでいるのに気付いたリュカは、彼女に近付き声をかける。
「どうしたのハツキ?何か落ち込んでる?さっきバギが効かなかったから、落ち込んでる?」
「私…全然みんなの役に立ってない…」

「そんな事無いと思うよ。アルルが怪我したらホイミで治してるじゃん!」
「でも、私じゃなくても…アルルだってホイミ使えるし、リュカさんなんかはベホイミを使えるじゃないですか!本職の僧侶の私はホイミしか使えないのに…」
「でも回復役は多いに越した事はないよ!それに僕を当てにしないで…常に逃げる準備で忙しいから」
リュカは戯けて見せるが、ハツキは俯き表情は暗いまま…

「アルルのギラ、見ました!?本職のウルフと同じくらいの威力ですよ!それなのに…私のバギは…」
「あのねハツキ…アルルは勇者様なんだよ。何でも出来る…それが勇者様なんだよ」
「何でも…やっぱり私…いらないですよ…」
リュカの言葉に一層落ち込むハツキ…

「何でも出来る人間っていうのはね、一人じゃ何にも出来ない人の事なんだ。」
「え!?何でも出来るのに?」
ハツキは顔を上げリュカの瞳を見つめる。

「うん。腕力はあるが戦士程じゃない。素早く動けるが武闘家程じゃない。攻撃魔法を使えるが魔法使い程じゃない。もちろん回復系の魔法も使えるが僧侶程じゃない。いいかいハツキ…落ち込むなとは言わない…でも『自分は役立たずだ』って落ち込んでも、何も解決はしないよ。それより『どうすれば役に立てるのか』って悩んだ方が有益だ!」

「…………私に、何が出来ますかね?」
リュカの言葉を聞いて、ハツキの瞳に輝きが戻る。
「さぁ…僕には分からない…色々試してみるんだね…何か答えが出てくるよ」
人に聞く事では無い…自分の未来は自分で見つける!
リュカの答えは優しくも厳しい。
ハツキなりに答えを見つける事が出来る様、祈るのみである。


 
 

 
後書き
何か偶に格好いい事言うのがズルイですよね! 
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