DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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儚い命、強固な愛
<エルフの隠れ里付近の森>
「しかし探すとしても何処を探します?10年も前の事ですよ!何処か別の土地に渡ってしまったかもしれませんし…」
ハツキの嘆きにエコナも同調する。
「そやで!もうほっといてロマリアへ戻りましょ。そない義理を尽くす必要ないやん!」
「そんな訳いかないわ!イノックさんと女王様に約束してしまったんだから」
「うん。それに、そんな遠くには行ってないよ。この森を探せば、二人ひっそりと暮らして居るよ」
「リュカさん、この森に居るってどういう事!?何でそんな事言い切れるの?」
ウルフだけでなくアルル、ハツキ、エコナもリュカの言葉に興味を持つ。
「うん。それはね…あのジジイが言ってたじゃん。『1週間たっても戻る気配がなく、心配になり近隣の村や町を探し回った』って…しかも2ヶ月間も探したみたいだし。自分の息子の事だからね…そりゃ真剣に探したんだと思うよ。それなのに足取り一つ見つからないって事はだ…近隣の村には近付いてもいないって事だよ。なんせエルフは人間達におそれられてるからね。何処にも行く事なんて出来ないよ」
リュカの説明に納得する4人。
「ほな、この森全体を探さなあかんやん!何日かかる事やら…」
「人間が生活する以上、住処から一歩も出ないで生きて行く事は出来ない。食料調達等であっちこっち歩き回ってるはずだから、そんなに大変じゃないよ」
そう言うとリュカはサッサと森の奥へと入って行く…
実を言うとアルル達は、この森に入ってから方向感覚を無くしているのだ。
その為、リュカとはぐれると遭難してしまう恐れがある。
みんな慌ててリュカについて行く。
暫く森の中を彷徨うと、湿っぽい雰囲気を醸し出す洞窟が口を開けてるのを発見した。
「さすがにこの中には居ないだろう…」
「甘いなウルフ君。あの二人は誰にも邪魔されない所に行きたいんだ!エルフはもちろん、人間さえも絶対入って来ない洞窟…完璧じゃないか!」
若者4人は不満げだが、リュカがドンドン進んで行く為、ついて行かざるを得ない…
<ノアニール西の洞窟>
此処は有り触れた洞窟だ…
湿気とカビ臭さとモンスターの気配…
テンションの低い4人を励ます為に歌うリュカ。曲目はジュディ・オング『魅せられて』。そして案の定4人は戦闘を強いられる。
一行は幾度も勝利を重ねながら、洞窟内を奥へと突き進む。
目の前に奇妙なモンスターが現れた。
まるでキノコのお化け…『マタンゴ』である。
3匹のマタンゴは一斉に『甘い息』を吐き、それを吸い込んだアルル達は簡単に眠り着いてしまった!リュカ以外…
「あれぇ…みんなお疲れでしたか?これってピンチじゃ~ん!」
危機感など感じていないリュカは、ドラゴンの杖でマタンゴを一掃!
眠れる美少女3人と居眠り少年1人を担いで、更に奥へと進んで行く。
最初に目を覚ましたのはアルルだった…
周囲を見回すと、そこは美しい地底湖の畔…
そして少し離れた所にリュカが佇み、何かを読んでいる。
慌てて他3人を起こすアルル。
それに気付いたリュカがアルルに手紙を手渡した。かなり古い手紙だ…
その手紙には【お母様。先立つ不幸をお許し下さい。私達はエルフと人間。この世で許されぬ愛なら…せめて天国で一緒になります。 アン】と…
「これって…」
「…エルフの女王の娘…アンの最後の言葉だ…そこの宝箱に、ルビーと短剣…それとその手紙が入ってた…」
リュカの頬を涙が伝う…
リュカだけではない…皆、涙がこぼれ出る…
「様子を見守るだけで良かったんだ…誰でもいい、エルフでも人間でも…親が意固地に反対しなければ…そうすれば…死ぬ事なんて…」
「帰りましょ…そして女王様とイノックさんに伝えないと…」
アルル達は洞窟を後にする…沈痛な面持ちで。あのリュカですら…
<エルフの隠れ里>
アルル達は再度エルフの女王の宮殿へ赴いた。
入口にはカリーの姿がある。
「リュ、リュカ…また来たのか…もう、女王様には会わせぬぞ!」
リュカは悲しい表情のまま、懐から古びた短剣を取り出しカリーに見せる。
「これ…君のだろ…君の名前が彫ってあるよ…アンに渡したのかい?」
それは洞窟でアンの手紙と一緒に入ってあった短剣だ。
「こ、これは!?私がアン様にプレゼントした『聖なるナイフ』だ!ど、何処でこれを?」
リュカは事の顛末をカリーに話した…
「そんな!アン様が…(うっ)…アン様が!!」
カリーは短剣を抱き締め、泣き崩れた。
そしてリュカ達は女王の元へと歩み出す。
「また来たのか!?不愉快な人間め!」
不快感を露わにする女王に、アルルは夢見るルビーを差し出す。
「そ、それは!?いったい何処でそれを?」
リュカは黙って手紙を渡した。
女王は手紙を読み始めると、体を震わせて泣き出した…
「私が認めなかったばかりに…私が…(うっうっうっ)…アン…ごめんなさい…アン!!」
ただ黙っていることしか出来なかった…
女王を責める事も、慰める事も出来ず…
リュカ達は目を伏せ、一緒に悲しむ事しか出来なかった…
「世話になったな人間よ…いや、リュカと申したな。カリーから聞いたぞ」
「………ノアニールの件ですが…」
「うむ。これを持って行くが良い」
リュカは女王より、粉末の入った袋を受け取った。
「それは『目覚めの粉』よ。その粉を風に乗せてノアニールに撒けば、呪いの効果は消え去り、皆目覚めるでしょう」
「ありがとうございます」
「それと、今宵はこの村に宿泊してゆきなさい。もう夜も遅い…もてなす事はしませんが、寝床を一晩提供しましょう」
女王の突然の提案に、驚きを隠せないアルル達。
しかしリュカだけは驚いた風もなく、優しく礼を告げる。
「ありがとう。女王様」
そのリュカの一言に、顔を真っ赤に染めて女王が呟く。
「べ、別に…人間を許した訳ではありませんから!こ、今回の事への感謝の気持ちですから!」
これは、もしかしたらツンデレというヤツでしょうか?
今後のエルフ族の未来が心配です。
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