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許されない罪、救われる心

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74部分:第七話 地獄のはじまりその一


第七話 地獄のはじまりその一

              第七話  地獄のはじまり
 弥生達に絶交を突きつけられた次の日の朝。如月は暗鬱な顔で朝を過ごした。毎朝見る写真にはその弥生達もいる。しかしであった。
「もう、本当に」
 暗く沈んだ顔でその奇麗に並べて額縁に入れている数々の写真を見ながら呟く。
「絶交なの?」
 鏡の中の弥生に問う。そこには葉月もいれば他のクラスメイト達もいる。寂しがりなところがある彼女はよく写真やプリクラを撮っていた。無論弥生と一緒のプリクラも多い。
 今はプリクラは見ていない。しかし写真を見てだ。そのうえで弥生に問うのだった。
「もう、これで」
 だが写真の中の弥生は答えない。笑っているだけだ。写真の中の彼女はまだ如月と仲がいい。だがそれはだ。もう写真の中だけのことになってしまった。
 そのことに悲しみを感じて仕方がない。その日の午後はクラスの誰もが彼女を、そして長月達から顔を背けていた。このうえなく冷たいものだった。
 その冷たさに辛いものを感じずにはいられなかった。だが彼女は今はどうしてそうなったのかわかっていなかった。ただ弥生に絶交を告げられクラスメイトに冷たい目で見られていることが悲しくて仕方なかった。ただそれだけだった。
 そのまま写真を見ていた。するとだった。
「ねえ如月」
「えっ!?」
「もうそろそろ行かなくていいの?」
 母の声がしてきたのである。
「もうそろそろ」
「あっ、学校よね」
「そうよ、学校よ」
 そのことを言ってきたのである。
「部活の朝練もあるのよね」
「え、ええ」
 リビングから聞こえてくる母の言葉に頷く。
「そうなの」
「じゃあもう行きなさい」
 優しい声であった。母親らしく。
「部活に遅れたら嫌でしょ」
「ええ、それじゃあ」
「行ってらっしゃい」
 最後にこう言って娘を送り出すのだった。そうして学校に行き部室に入る。もう神無のロッカーにも鞄にも何もしていないしできなかった。しかしであった。
 部室に霜月が入って来た。暗く、そして沈んだ顔であった。 
 その顔でだ。如月に言ってきたのである。
「ねえ」
「あのことよね」
「部活にはばれてないわよね」
 こう如月に言ってきたのである。
「それは」
「大丈夫だと思う」
 如月も暗い顔で霜月に対して答える。
「多分だけれど」
「多分なのね」
「うちのクラスでラクロス部って私達しかいないから」
「そうよね、それじゃあ」
「とりあえずは大丈夫だと思う」
 また言う如月だった。この言葉は霜月を安心させるよりもだ。何よりも彼女自身を安心させる為の言葉だった。そうしたものだった。
「今のところは」
「今のところはなのね」
 霜月は如月のその言葉にかえって不安を感じたようであった。その言葉に感情が出てしまっていた。
「そうなの」
「もうクラスはどうしようもないけれど」
 皆に知られてしまった。それではだった。
「とりあえず部活は」
「わかったわ。じゃあ部活頑張ろう」
「そうね。暫くはここが私達の学校の居場所になるから」
 もうクラスでは。そうした意味だった。
「だからね」
「クラスはもう駄目なのね」
「弥生の言葉聞いたよね」
 あの平手打ちと共に思い出す。あの言葉をだ。
「だから」
「そうよね。だからもう」
「暫く我慢しよう」
 それしかない、そう思ったのだ。そうした意味では如月は楽観していた。耐えればそれで終わる、そう思っていたからである。
「そうしないと」
「わかったわ。もうすぐしたら長月と文月も来るから」
「学校に来るのね」
「部活にもね」
 それにもだという。
 
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