許されない罪、救われる心
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58部分:第六話 暴かれた時その二
第六話 暴かれた時その二
「誰なの?ここまでするなんて」
しかしこの場はどうしようもなかった。結果として神無はこの日ジャージで過ごすしかなかった。そして部活の時はだ。
またしてもロッカーが荒らされ誹謗中傷の落書きで覆われていた。誰がやったのかは最早明白だった。おまけに鞄の中にはだ。
「ここまでする人間いるのかしらね」
それを見た皐月がだ。こう言うまでのものがあった。そこにはだ。何と腐った肉があった。しかもヘドロまでぶち込められていたのだ。
「もうこの鞄使えないわよね」
「使えませんか」
「残念だけれどね」
皐月は苦い顔で神無に述べた。
「もう無理よ」
「この鞄は・・・・・・」
その神無がこれ以上はなく項垂れた様子で言った。
「私が子供の頃に」
「子供の頃に?」
「お婆ちゃんに買ってもらったものなんです。お婆ちゃんが死ぬその時に私にって」
「そんな大事なものだったのね」
「はい」
その項垂れた様子での返事である。
「そうなんです」
「じゃあ捨てる訳にはいかないのね」
「はい、何とかしてまた使いたいんですけれど」
「わかったわ。それじゃあね」
それを聞いてだった。皐月はすぐに言うのだった。
「中をじっくり洗ってね。それでまた使いましょう」
「それじゃあすぐに洗って」
「私も一緒に洗うから」
それでだというのだった。
「それでね」
「部長もですか」
「ええ、それでいいかしら」
皐月はにこりと笑って神無に対して話すのだった。
「一人でやるより二人でやる方が確実にできるじゃない」
「けれどこれは私のですから」
こう戸惑いながら話す神無だった。
「それは」
「駄目だっていうの?」
「そんなこと。部長に迷惑がかかります」
だからだというのである。それが神無の言うことだった。
「ですから」
「じゃあ迷惑じゃなかったらいいのね」
「えっ!?」
「迷惑じゃなかったらいいのね」
皐月は微笑んだ。その顔で神無に対して告げてみせたのだ。
「それでいいのね」
「それでって」
「私は迷惑じゃないから」
また言う皐月だった。
「そういうことでね」
「それでって」
「それじゃあすぐにこの鞄洗ってまた使えるようにしましょう」
皐月はにこりと笑ってだ。実際にその鞄を手に取っていた。
「いいわね」
「いいんですか、それで」
「いいわよ。大切な鞄なのよね」
「はい」
そのことは否定できなかった。神無自身が最もよく感じていることだった。
「それじゃあ」
「二人でね」
こうして鞄はすぐに洗われなおされた。皐月のお陰でそれでだった。
神無にとってこのことは非常に有り難かった。しかしだった。
それを見てだ。四人が忌々しげに話していた。グラウンドの隅でだ。そこで顔を顰めさせてそのうえで苦い言葉をそれぞれ出していた。
「何よ、部長」
「ああ、あんなことしてな」
「全く。何考えてるのよ」
「あんな奴の鞄元に戻してね」
こう話すのだった。
「あれだけやった意味ないじゃない」
「そうそう、折角鞄滅茶苦茶にしてやったのにね」
「そうね。腹が立つわね」
如月が文月と霜月の言葉に応えた。
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